人材不足問題の解決に一役買う! 嘱託社員を雇用するメリット
19.11.26 | ビジネス【労働法】
人材不足の問題が顕著化するなかで、今、嘱託社員という雇用形態に注目が集まっています。
嘱託社員とは一般的に、定年を迎えた社員を、そのまま期間を空けることなく、労働条件等の契約だけを変更して再雇用する形態のことをいいます。
今後、雇用する機会が増えていくであろう、嘱託社員との雇用契約などについて、労働法の観点から解説していきます。
労働条件は定年前と同じでなくてもOK
嘱託社員は非正規の雇用形態の一つです。
雇用契約の期間の定めのある契約社員のように法的な決まりがあるわけではないですが、その会社の就業規則や雇用契約によって、定義されます。
多くの場合は1年ごとに雇用契約を結んでいく有期雇用になり、給与などの待遇も正社員時代と変わる場合がほとんどです。
事業主は『高齢者雇用安定法』によって、原則的に希望者を65歳まで雇用することが義務づけられています。
そのため、定年を65歳にまで上げて全社員に雇用の機会を与える会社や、定年制を撤廃してこれに対応する会社もありますが、一般的なのは60歳定年制の会社が社員の希望に沿って嘱託社員として65歳まで雇用するケースです。
いわゆる再雇用制度です。
ただし、嘱託社員として再雇用する場合は、必ずしも定年を迎える前と同じ労働条件でなくてもかまいません。
たとえば定年前は週5日のフルタイムだったとします。
しかし、嘱託社員として再雇用し、週3日勤務になったとしても『高齢者雇用安定法』に違反したことにはならないのです。
当然、給与や業務内容も、定年前と同じでなくてもかまいません。
ただし、『労働契約法第20条』では、『有期の雇用契約の場合の労働条件について、正社員の労働条件と比較して不合理に低いものであってはならない』と定められているため、労働条件を決める際には注意する必要があります。
過去には再雇用した嘱託社員から『正社員時代と比べると、労働条件が不合理だ』と裁判を起こされたケースも存在します。
あくまでも、事業主側が合理的な裁量の範囲の条件を提示する必要があるというわけです。
年収ベースで給与2割減なら許容範囲
では、正社員との給料の差がどのくらいであれば合理的とされるのでしょうか。
これについては、正解はありません。
ただし、たとえば労働条件の合意があるという前提で給与を見てみると、『正社員と同じ業務内容で、同じくらいの責任を負っていたとしても、正社員より年収が2割程度低い分には違法ではない』という判決を最高裁判所が下したケースがありました。
嘱託社員ではない通常の有期雇用契約の場合に、正社員と比べて業務内容や責任の程度が同じで異動もなければ、賃金格差は合理的ではないと判断される可能性は高いのですが、定年後再雇用の有期契約の嘱託社員の場合は、有期雇用者よりはハードルは低くなります。
また、事業主側が合理的な理由で賃金の減額を提示しているにもかかわらず、嘱託社員の希望者が合意せずに雇用まで至らなかったとしても、『高齢者雇用安定法』に違反したことにはなりません。
いずれにせよ、会社と希望者との労働条件の合意は不可欠で、合意なくして雇用することはできません。
雇用契約の再締結や社会保険の手続きなど、嘱託社員の再雇用は手間がかかります。
しかし、それでも嘱託社員を雇用することには、大きなメリットがあるといわれています。
たとえば定年前までその会社の正社員だったのであれば、一から仕事を教える必要がなく、安心して任せることができます。
さらに、若手社員への指導も期待できます。
なにより数十年にわたって積み重ねてきた経験は、会社の財産です。
さまざまな面で会社を助けてくれることでしょう。
会社の活性化を促すという意味でも、嘱託社員は必要不可欠な存在なのかもしれません。
労働条件にさえ注意して雇用すれば、即戦力として活躍してくれ、人材不足解消にも一役買ってくれるはずです。
積極的に嘱託社員を活用することを考えてみてはいかがでしょうか。
※本記事の記載内容は、2019年11月現在の法令・情報等に基づいています。
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