有限会社 サステイナブル・デザイン

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歯科難民は、なぜ生まれる?

20.01.30 | マーケティング

歯科難民というのは、聞きなれないかもしれません。
しかし、世の中には、実は相当数の歯科難民が存在している可能性があります。

歯科難民とは?

とくに世の中にこれだ!という明確な定義があるわけではないですが、
歯科難民とは、

・かかりつけの歯科医院がなく
・虫歯や歯周病などがあって口腔の状態はよくないが
・我慢できないほど痛くなったり詰め物がとれて
・仕方なくなるまではだましだまし過ごし
・もう無理、となって歯科医院に駆け込んで治してもらうものの
・どうも納得・安心・満足できず
・かかりつけの歯科医院がなく
・・・

を繰り返してる人、としてみましょう。

これに当てはまるのが、たとえば私自身です。
正確にいうと、3年前までの私自身、でした。

子供のころは、親の言うがまま、地元の歯科医院に通っていましたが、
大人になり、就職して社会人1年目、
それまで地縁のない地域に引っ越して
1人暮らしを始めてみると、
どの歯科医院にいったらよいのか、
さっぱり見当がつきませんでした。

親知らずが痛くなったり、
詰め物がとれたりするたびに、
違う歯科医院に行きました。

ときには、出張先で急に我慢できないほどの
痛みに襲われ、(まだスマホがない時代だったので)
大きな通りを看板を見ながら歩いて、
最初に見つけた歯科医院に飛び込んだこともありました。

1人暮らしでは誰も注意してくれませんから、
歯磨きはだんだんずぼらになり、
ついには、リンゴをかじらなくても、
歯ぐきから血が滲み、口の中はいつも血の味がする、
というぐらいまで歯周病が進んでしまいました。

結婚し、少しはマシになったものの、
結局、若いころの手入れ不足で、
本来抜く必要のない歯を抜くことになり、
そこで、これではいけないと肝に銘じたのが45歳。

それから3年、やっと、この先生なら、
という歯科医院と出会えて以降、
半年に1度、定期的なチェックと
メンテナンスをしてもらっています。

当然のことながら、住んでいるエリアや
勤務先の近くに歯科医院がなかったわけではありません。
日々、何軒もの歯科医院の前を通ってもいました。
それでも、「今は、まだいいか」が何年も続いてしまったわけです。

これは、一患者としての私の体験談にすぎませんが、
もし少なからずの人々が、似たような経過をたどった経験が
あるとするならば、そこには、共通の背景や構造的問題が
横たわっているはずです。

歯科難民が生まれる3つの理由

歯科医院の経営という観点から考えてみると、
3つの問題が考えられます。

1つ目は、マーケティングの問題です。
歯科難民化している見込客(患者)の側では、
「どの歯科医院を選べばいいかわからない」
ために、予防や治療の機会を逃がし続けています。

これを院の経営側からみると、
「選ばれる理由を潜在顧客に伝えられていない」
ために、本来、来院してしかるべき見込客(患者)を
逃し続けている、という機会損失ととらえられます。

2つ目は、マネジメントの問題です。
何かの理由で「歯医者さん、いかなきゃ」と思い立って、
何年かぶりに、かつて通った歯科医院に行ってみたら、
「なかった!」

患者の立場ではせっかくの意欲が空振りで、
振り出しに戻ってしまうわけですが、
なくなってしまった院では、事業継続、事業承継の
マネジメントが失敗してしまった、ということになります。

マーケティングにおいて機会損失が続いていれば、
事業継続は難しくなります。
マーケティングはうまくいっていても、後継者の
確保育成ができなければ、事業承継できず
自分一代限りとなってしまいます。

困るのは、行き場を失う患者様です。

※言葉が似ていますが、ざっくり、以下のように理解してください。
・事業継続:つぶれずに事業として存続していくこと
・事業承継:次の世代に経営をバトンタッチすること

そして3つ目は、診療力の問題です。
いよいよ歯科医院で診察・治療を受けることになった患者様、
チェアの上、心の中では、
「とりあえず来たものの・・・ ここでよかったのかな・・・? 」
という疑問が去来しています。
けして口には出せませんが。

そして、「よかった」の結論にならなかった場合、
やはり、何も言わずに「来なくなる」という行動として現れます。

このとき、「診療内容に納得・安心してもらえていない」という
顧客不満足から、リコール率が低い、キャンセル率が高い、
などの問題が生じているわけです。

個々の院の経営力が向上すれば歯科難民は生まれない

マーケティング、マネジメント、診療力。
これらは歯科医院の事業体としての実力に大きくかかわる経営課題ですね。

実は診療力を、技術力や商品力、サービス力と置き換えれば、
この3つの経営課題はどの企業にも共通するものです。

最近の中小企業庁の支援施策の基本は、
「経営力向上」ですが、歯科難民の問題は、
まさに個々の歯科医院の経営力向上によって
解決・解消できます。

たとえば前回記事のMEO対策は、マーケティングという面からの
経営力向上施策の一例として位置づけられます。

ぜひ、様々な視点から、自院の経営力、どこに強みがあり、
どこに弱みがあるか、分析してみてください。

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