大阪プライム法律事務所

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作成するだけではNG! 就業規則の周知義務違反とは?

20.03.24 | ビジネス【労働法】

社内でのマナーやルールなどをまとめた就業規則。
実は作成するだけでなく、所轄の労働基準監督署へ届け出を行い、従業員への周知・明示することが義務づけられています。
この周知をきちんと行っていないと、たとえば従業員との間でトラブルが発生して裁判などに発展した際に、自社の就業規則が無効になってしまうこともあります。
そこで今回は、就業規則を作成してから周知する方法や、周知しなかった場合の罰則などを説明します。

全従業員に周知したと認められるには?

就業規則は、勤務形態や労働時間、賃金や休暇制度などのほかに、社内でのマナーやルールなどをまとめた、会社の根幹となるべきものです。
労働基準法第89条の規定により、就業規則の作成が義務づけられているのは、パートタイマーやアルバイトなどを含めた10人以上の従業員がいる会社とされていますが、もちろんそれ以外の会社でも、就業規則を定めておくに越したことはありません。

就業規則を定めたからには、使用者も従業員もこれを守らなければいけませんが、実際に就業規則に効力を持たせるには、労働基準監督署への届け出と、もう一つ、従業員への周知を行わなければいけません。
この二つを行って、就業規則は効力を持ちます。

従業員への周知とは、“すべての従業員”が“いつでも見られる状態”にしておくことで、従業員の代表の一人に伝えればいいというものではありませんし、口頭のみでの共有も認められていません。

また、社長室や倉庫など、従業員が立ち寄りづらいところに掲示するだけでは周知したとは認められないのです。
もちろん、社長の机の中に入れてあったり、ファイリングして棚にしまっていたりする場合も同様です。

法的には、書面にしたものを事業所内の見やすい場所(ロッカールームや休憩スペース、廊下など、すべての従業員が使用する場所)に張り出したり、コピーして従業員一人ひとりに交付したりすれば、すべての従業員に周知したと認められます。
また、近年では、就業規則をデジタルデータとして記録し、共有フォルダなどを使用し、いつでも従業員が自身のパソコンから閲覧できるようにしておくのも、法的に周知だと認められています。
コンプライアンスなどが叫ばれている昨今は、書面にして交付したり、共有フォルダにデータを置いたりすることに抵抗を感じる経営者もいると思います。
しかし、共有フォルダにパスワードをかけたりしてしまうと、『いつでも見られる状態』にはなりませんので、周知しているとは認められない可能性があります。

ちなみに、厚生労働省令では周知の方法について、次の3つをあげています。

1.常時作業場の見やすい場所に掲示し、または備え付けること
2.書面を労働者に交付すること
3.磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること

もし、就業規則の流出に不安を覚えるのであれば、このなかでは、『1.常時作業場の見やすい場所に掲示し、または備え付けること』がベストかもしれません。

また、この3つ以外の何らかの方法で就業規則を周知していたとします。
何事もなければよいのですが、たとえば従業員とのトラブルで裁判になった場合、裁判では実質的な周知の方法が行われていたかどうかが争点となります。
裁判で就業規則の効力が発生していたとみなされるケースも少なくありませんが、万が一の場合に備えて、3つの方法のなかから周知しておいたほうがよいでしょう。


周知義務違反の罰則とは?

一方で、就業規則の作成・届け出は会社の義務であり、たとえば、作成しなかったり、届け出を行わなかったりした場合には、それぞれ『作成義務違反』や『届出義務違反』となり、30万円以下の罰金に処されてしまいます(労働基準法第89条、120条)。

また、周知を怠った場合には、『周知義務違反』となり、労働基準監督署から是正勧告や指導などの処分を受けることになってしまいます。
それでもなお是正に応じなかったりした場合には、『作成義務違反』や『届出義務違反』と同じく、30万円以下の罰金を科せられます。

『周知義務違反』に陥りやすいのは就業規則の変更時です。
就業規則は時代の変化や会社の成長と共に定期的に中身を変えていくものですが、その際にも、届け出や周知義務が発生します。
過去に一度周知させたからといって、変更後の就業規則を周知させないと、『周知義務違反』になってしまいます。

そうならないためにも、就業規則は常時、従業員の目の届くところに掲示しておきましょう。


※本記事の記載内容は、2020年3月現在の法令・情報等に基づいています。

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