大阪プライム法律事務所

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新型コロナウイルスと社員総会・理事会の開催

20.03.31 | 非営利・公益

新型コロナウイルス感染の拡大で、公益法人や一般法人などから、社員総会や理事会等の開催をどうしたらよいかといった相談が多くあります。これら会議を中止や延期などにした法人が多数あるものと思われますが、開催をする場合には、実際に集まる以外にどのような代替措置があるでしょうか。公益法人に関しては、内閣府から3月19日付で、「新型コロナウィルス感染症の拡大に伴う公益法人の運営に関するお知らせ」を発していますが、これが参考になるかと思われます。
以下、一般法人・公益法人の場合について説明をいたします。

 

■内閣府の対応について
内閣府は、上記3月19日付の「お知らせ」において、社員総会・評議員会・理事会の開催に関して、「今般の新型コロナウイルス感染症に伴う影響のように、やむをえない事由により、当初予定していた時期に開催できない場合、その状況が解消された後合理的な期間内に開催していただければ、行政庁としては、その状況を斟酌して対応いたします。」と表明しています。したがって、新コロナウィルスの状況が落ち着くまで開催を遅らせるという方法も一定程度許容されるものと言えます。

公益認定を受けた法人は、理事会等を開催した上で、法定の期限内に各種書類を行政庁に提出する義務があり、それを怠ると認定法違反となる恐れがありましたが、少し安心ができるものと思います。

また、公益法人に求められている収支相償に関しても、今般の事態のため事業を中止・延期して予定どおり支出できず、今年度は収入が支出を上回りかねないとの懸念に対しても、「もとより「収支相償」とは、単年度の収支が必ず均衡するよう杓子定規に求めるものではなく、翌年度以降の計画的な解消などによって中長期的に収支が均衡すれば、これを満たすものとして運用しています。まして、今般の事態のようにやむをえない事由により収入が支出を上回る場合には、行政庁としては、その状況を斟酌して対応いたします。」とも表明しています。

 ■理事会・評議員会対策について
一か所に集まって理事会をするのを避ける方法としては、WEB会議やテレビ会議による方法と、決議の省略による理事会等を行う方法があります。
(1)WEB会議・テレビ会議
この方法で行えることについては、従前から同様でしたが、今回の件でかなり多用されるようになったかと思われます。公益法人に関しては、令和2年02月28日に、内閣府のFAQ問2-6-2(Web会議・テレビ会議)が修正され、以下のように公益法人informationで公表されました。

 修正版:内閣府FAQ:問2-6-2(Web会議・テレビ会議)
問Ⅱー6ー②(Web会議・テレビ会議)
理事会、評議員会のWeb会議、テレビ会議での開催は認められますか。

答1 遠方に所在する等の理由により現に理事会の開催場所に赴くことができない理事が当該理事会決議に参加するための方策として、Web会議、テレビ会議、電話会議などの方法による会議をすることも可能です。

2 Web会議、テレビ会議、電話会議などのように、出席者間の協議と意見交換が自由にでき、相手方の反応がよく分かるようになっている場合、すなわち、各出席者の音声や映像が即時に他の出席者に伝わり、適時的確な意見表明が互いにできる仕組みになっており、出席者が一堂に会するのと同等の相互に充分な議論を行うことができるという環境であれば、Web会議、テレビ会議、電話会議などの方法で理事会や評議員会を開催することも許容されると考えられています。

3 なお、理事会又は評議員会を行った場合は、議事録を作成することとされています(一般社団・財団法人法第95条第3項、第193条第1項)。例えば、Web会議で理事会又は評議員会を開催し法定の議事録を作成する場合には、Web会議システムを用いて理事会(評議員会)を開催した旨の記述や、Web会議システムにより、出席者の音声と映像が即時に他の出席者に伝わり、適時的確な意見表明が互いにできる仕組みとなっていることが確認されて、議案の審議に入った旨の記述をすることが考えられます(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律施行規則第15条第3項第1号かっこ書き、第60条第3項第1号かっこ書き参照)。

 (2)決議の省略による方法
「決議の省略」とは、関係者全員が書面で同意の意思表示をすれば、可決する旨の決議があったものとみなされるという制度です。「みなし決議」とも呼ばれます。この方法は、理事会、評議員会、社員総会において認められていますが、それぞれ若干の違いがあります。詳細については、以下の内閣府のFAQを参照。

内閣府FAQ:問Ⅱ‐7‐①(決議の省略)(注:ここでは便宜上理事会・評議員会のみを抽出して記載し、社員総会については後述します。)

評議員会については、理事が評議員会の目的である事項について提案をした場合において、議決に加わることのできる評議員全員の書面または電磁的記録による同意の意思表示があった場合は、その提案を可決する旨の評議員会の決議があったものとみなされます(一般社団・財団法人法第 194 条第1 項)。

なお、評議員会の決議の省略の場合は、定款の規定がなくとも可能です。しかし、理事会については、あらかじめ定款に定めを設けておかないとできません。定款に定めがあれば、理事会の決議の目的である事項につき、議決に加わることのできる理事全員の書面又は電磁的記録による同意の意思表示がなされ、かつ、監事が異議を述べないときに限り、その提案を可決する旨の理事会の決議があったものとみなされます(一般社団・財団法人法第 96 条、第 197 条)。

評議員会又は理事会の決議を省略する場合には、利害関係のある評議員又は理事については同意の対象から除かれます。

 ■社員総会対策について
(1)委任状・書面決議の活用
社員総会で大勢の方が集まるのを避けるためには、必要最小限の社員だけが出席し、他の社員の協力を得て、書面による議決権行使方式(一般社団・財団法人法第51・52条)や、出席者への委任状を出してもらう代理権方式(同50条)によって開催及び決議を図ることも現実的な処理と言えます。

(2)決議の省略による方法
これは、実際に一か所に集まることをせずに、理事(主には理事長など)または社員が、社員総会の目的である事項について提案をした場合において、社員の全員が書面または電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、その提案を可決する旨の社員総会の決議があったものとみなされます(一般社団・財団法人法第 58 条第1項)。

社員総会においては、通常は人数が多い場合が一般的ですから、この方法が取られるケースは少ないかとも思われますが、私が相談に乗った一般社団法人では、実際に採用して実施をいたしました(そこは代議員制を引き、社員たる者の人数は約60名ほどでした。)。
なお社員総会の決議の省略は、定款の規定がなくとも可能です。

社員総会での決議を省略は、定款の規定がなくとも可能です。また、社員総会の決議の省略の場合は、社員の同意のみで足り、監事の異議の有無は問いません。

■国税庁からの案内
新型コロナウイルスに関連して、国税庁では、個人事業者の所得税・消費税、個人の贈与税の申告納税は4月16日まで一括延長されていますが、そのほかに、当面の申告や納税などに関して寄せられた質問等をFAQとして取りまとめて公表しています。そこでは、新型コロナウイルスの影響で総会開催が遅れた場合の対応や、売り上げが下がって納税資金が用意できない場合の税金の分割納付(最大1年間)と延滞税の低減措置なども書かれています。

■総会開催の遅延に関しての国税からの案内
国税庁では、上記のFAQにおいて、「株主総会の開催が遅れる場合の消費税の申告等の期限延長」というタイトルのもとで、以下のように記載をしています。これらは他の法人にも適用されます。

〇 法人税については、確定した決算に基づいて申告を行うものとされていますので、 新型コロナウイルス感染症に関連して、定時株主総会の開催が延期され、申告期限まで に決算が確定しないという理由があれば、申告期限の延長が認められます。
〇 消費税及び地方消費税については、法人税の場合と異なり、確定した決算に基づいて 申告を行うものではありませんので、定時株主総会の開催延期により決算が確定しない という理由だけでは、その期限を延長することはできません。
〇しかしながら、定時株主総会の開催延期という理由以外にも、例えば、社員の休暇勧 奨などで通常の業務体制が維持できない状況となり、決算書類や申告書等の作成が遅れ、期限までに消費税及び地方消費税の申告・納付等が困難な理由がある場合には、期限の延長が認められます。

 ■参考「定時株主総会の開催について」(法務省ホームページ)
法務省によると、今般の新型コロナウイルス感染症に関連して、定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合は、その状況が解消された後合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りるものとされています。これも他の法人にも同様に解されます。http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00021.html 

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