弁護士法人青森リーガルサービス

弁護士法人青森リーガルサービス

再確認!新商品の商品名を決める際の注意点

20.07.28 | ビジネス【企業法務】

新商品や新サービスを完成させた後は、その商品やサービスの特徴や魅力をわかりやすく伝えるような名称を考えることがとても重要です。
しかし、仮に他社の商品やサービスと同じ名称で売り出してしまった場合は、どのようなことが起きるのでしょうか。
商品名を決める際の注意点とリスクについて、ご説明します。

実はさまざまな機能を持つ『商標権』

まず、『商標権』についてご説明します。
商標とは、商品やサービスが誰のものかを示す識別標識、いわゆるブランドを指します。

A社が商標Aを登録すると、以下のような機能が発揮されます。
●商標Aが使われた商品やサービス(以下、商品A)が、その会社のものであることを示す『出所表示機能』
●他社の商品・サービスと区別する『自他商品識別機能』
●商品Aの品質を保証する『品質保証機能』
●商品Aが人気商品になれば、商標Aが宣伝力を有する『宣伝機能』

したがって、A社以外の会社が、商標Aを無断で使用した際に、一般消費者は商標Aが使われた商品をA社の商品だと誤認して購入することになり、A社の潜在的な顧客を奪うことになります。
また、仮にA社以外が商標Aを使った商品を発売し、その商品に問題が発生したとすると、A社のブランドが毀損されることになります。

それを防ぐため、法は、商標権侵害行為があった場合、商標権者に当該商標の利用により生じた損害について賠償請求する権利を認めるとともに、当該商標の利用自体を差し止める権利も認めています
当該商標の利用の差し止めは、その商標を今後利用できなくなるだけでなく、現在利用しているものを処分することにもなります。
自社にて新商品や新サービスを売り出す際には、まず他社の商標を誤って使用していないか、きちんとチェックすることが重要です。

ちなみに他社の商標権の調査は、『独立行政法人 工業所有権情報・研修館』運営の特許情報プラットフォーム(通称『J-PlatPat』)にて検索する方法が主流です。
ただし、商標が出願されてから特許情報プラットフォームに掲載されるまで、2カ月程度の時間を要しますので、一度調査した後、2カ月程時間を空けて再調査したほうが無難といえます。

次に、『商標的使用』に当たらないケースについてもご説明します。
先にお伝えしたとおり、商標には、自他商品識別機能、出所表示機能、品質保証機能、宣伝機能があり、第三者が勝手に商標を利用した場合にはこれらの機能を害されることになります。
一方で、上記機能を害さない形で利用する場合、商標権侵害になりません。
このような「商標的使用に当たらない」旨の反論は、実務上もしばしば行われます。

たとえば、メーカー純正品ではないプリンター用インクにおいて、『(企業名)用』としてその企業のプリンターで利用できることを示すような表示の場合、これは、その企業の製品であることを誤認させるような表示ではなく、むしろ消費者が他社製品に利用する目的で誤って購入しないように注意喚起するためのものと考えられ、出所表示機能を害するような使用ではなく、商標的使用に当たらないことになります。


注意すべき、不正競争防止法違反のリスク

商標は登録制なので、登録されていなければ商標権を侵害することはありません

しかし、商標登録されていなければ他人の商品名を真似してよいということにはなりません。
他人の商品・営業として消費者のなかに広く認識されているものと同一または類似の商品等表示を使用することは、不正競争防止法上の商品等主体混同行為に当たります。

その立証には商標登録の代わりに周知性が求められており、立証のハードルは一般的には高いといわれています。
周知性は、その表示の特異性、営業の規模、宣伝広告の態様規模、認知度といった種々の事情から総合判断されるもので、その判断は極めて困難です。
とはいえ、自社は認識していなくても、実は世間に周知されていたということもあり得ますので、他人から差し止め請求や損害賠償請求をされるリスクについては、留意すべきです。

商品やサービスの名称を考える際には、類似商標の有無や周知された類似他社商品名の有無に関して、インターネット等で検索するなど一定の情報収集を行うことが必須といえます。


※本記事の記載内容は、2020年7月現在の法令・情報等に基づいています。

TOPへ