桂川会計(桂川淳税理士事務所) 

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労災保険給付の対象! 業務上での新型コロナウイルスの感染

20.08.03 | 業種別【介護業】

新型コロナウイルスの1日当たりの新規感染者は増え続けており、感染拡大に歯止めがかからない状態が続いています。
終息については見通しが立っておらず、現場ではまだまだ予断を許さない状況です。
そこで今回は、業務の性質上、感染リスクが高いといわれる介護事業従事者が、少しでも安心して働けるための労災認定や休業補償についてご説明します。

『業務上の理由』かつ、感染経路が特定できれば対象に

新型コロナウイルスは感染力が非常に強いため、特に介護施設などの集団生活が営まれている場所では集団感染(クラスター)のリスクが高く、複数の施設でクラスター発生が報告されています。

介護施設等の場合は、休業することが困難であるため、介護従事者の感染リスクが非常に高い状況でも運営を続ける必要がありました。
そのため4月28日に厚生労働省より、『新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて』の通達が発令され、介護の業務等に従事する者が勤務中に新型コロナウイルスに感染した場合、原則として労災保険給付の対象とするということになりました。
労災補償の取り扱いは以下の通りです。

【新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて(一部抜粋)】
具体的な取扱いについて 
(1)国内の場合
ア:医療従事者等
患者の診療若しくは看護の業務又は介護の業務等に従事する医師、看護師、介護従事者等が新型コロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となること。
イ:医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されたもの
感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合には、労災保険給付の対象となること。
ウ:医療従事者等以外の労働者であって上記イ以外のもの
調査により感染経路が特定されない場合であっても、感染リスクが相対的に高いと考えられる次のような労働環境下での業務に従事していた労働者が感染したときには、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められるか否かを、個々の事案に即して適切に判断すること。
この際、新型コロナウイルスの潜伏期間内の業務従事状況、一般生活状況等を調査した上で、医学専門家の意見も踏まえて判断すること。
(ア)複数(請求人を含む)の感染者が確認された労働環境下での業務
(イ)顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務


医師の診断があれば休業補償給付もある

この通達により、業務上の理由で新型コロナウイルスの感染が確認された場合は、労災に認定されることになりました。
治療費は、全額労災保険負担となります。
また、休業を余儀なくされますので、医師の診断があれば休業4日目から1日あたり平均賃金の80%が休業補償給付として支給されることになります。
そのほかにも、重症化した場合は一時金の対象になります。

厚生労働省が発表した『新型コロナウイルス感染症に関する労災請求件数等』(2020年7月27日時点)によると、医療業従事者の563件に次いで社会保険・社会福祉・介護事業従事者から86件の労災給付申請があり、医療・介護従事者だけで全体の80%以上を占めていることから、介護事業は感染リスクが非常に高い職種であることがあらためて認識されました。

各介護施設では、感染予防のためにフェイスガードの着用や除菌、入室制限などさまざまな策を講じていますが、それだけで感染を100%防止できるわけではありません。

今回、新型コロナウイルスが労災認定の対象となったことは、「自分も新型コロナウイルスに感染するかもしれない」という不安を常に持ち続けながら業務に従事する介護職の方々にとっては、一つのセーフティーネットになるのではないでしょうか。


※本記事の記載内容は、2020年8月現在の法令・情報等に基づいています。

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