ACCS社会保険労務士法人

医師免許剥奪もあり! 税金の申告漏れが発覚した際のペナルティ

20.10.06 | 業種別【医業】

毎日、診察室にいる医師にとって、クリニックの税務事情を完璧に把握するのはかなり手間がかかることです。
しかし、もしも申告漏れがあった場合、免許剥奪につながる可能性があります。
できることなら申告漏れをなくし、クリーンな病院経営をしていきたいものです。
そこで今回は、クリニックにおける申告漏れによくあるケースと、発覚した際のペナルティについて説明します。

意図的かどうかを追及される申告漏れ

国税庁が公表する『1件あたりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種』では、病院は、2008年頃まで常に5位以内にランクインしていました。
そのような過去のデータや、納める税金が高額な業種であるという認識から、世の中的に、現在でも税金にまつわるトラブルが多い業種というイメージがあるかもしれません。
実際、ここ数年は同調査のランキングからは外れているものの、脱税や申告漏れを指摘されている医師は存在しており、医療法人だけではなく、個人経営の医院・歯科医院に対しても税務調査が行われています。

一般的な税金関係のトラブルは、大きく3つのパターンに分けられます。

(1)申告漏れ
計算ミスや経費計上の誤りが原因で、納税額を少なく申告した場合。
意図的な工作がなければ『申告漏れ』とされます。
(2)所得隠し
売上の隠蔽や架空経費の計上、関係書類の改ざんなどが行われ、その結果、納税額を少なく申告した場合。
『所得隠し』または『課税逃れ』とみなされ、当然ながら、申告漏れよりも重いペナルティが待ち受けます。
(3)脱税
『所得隠し』のなかで金額も大きく、さらに悪質性が高い場合。
『脱税』として検察庁に告発され、刑事罰の対象になります。

ただし、『申告漏れ』『所得隠し』『脱税』について、法律では明確に定義されていません。
発覚した申告漏れの悪質度によって科されるペナルティに違いがあるだけで、そのペナルティの重さから、報道するメディアなどが『申告漏れ』『所得隠し』『脱税』のいずれかを判断しているのです。

整理すると、申告漏れと所得隠しの違いは『意図的かどうか』。
所得隠しと脱税については、『悪質性の高さ』で判断されるということになります。
たとえば税理士との連携が不十分ななかで、意図せずに申告漏れが起きてしまうこともあるかもしれません。
しかし、それが悪質だとみなされ、脱税で有罪ということになれば、クリニックの経営そのものがゆらいでしまう危険性もあるのです。
最悪な事態を招いてしまわないよう、まずは申告漏れを起こさないことが大切です。


行政処分の種類は主に3つ

申告漏れや所得隠しが発覚した場合、支払うべき税金の不足分を追加で支払い、加えてペナルティとして『加算税』および『延滞税』を支払います。
さらに、行政上のペナルティである行政処分が科される場合があります。

医師に科される行政処分としては、以下の3種類があげられます。

(1)戒告
反省を求め戒める処分
(2)医業停止
一定期間、医業の禁止処分
(3)免許取り消し
医師免許の取り消し処分
※再免許の取得が認められる場合もあります。

行政処分は厚生労働省の決定によりますが、決定前に、厚生労働省下の『医道審議会』にて審議されることになっています。
医道審議会は医師の脱税行為には厳しい態度で臨んでおり、医師免許の取り消し処分に至ったケースは後を絶ちません。
一時の気の迷いが最悪の事態につながることを肝に銘じておきたいものです。

医療行為の収入は額が大きいだけに、申告漏れが発覚した際の扱われ方も大きくなりがちなので、一般社会に与えるインパクトも大きなものになってしまいます。
ひいては、クリニックの信用性にも影響します。
専門家ときちんと連携を図り、正しい税務対策を実践していきましょう。


※本記事の記載内容は、2020年10月現在の法令・情報等に基づいています。

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