税理士法人SKC

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経営再建は可能? 知っておきたい民事再生手続

20.10.27 | ビジネス【企業法務】

会社の経営が苦しくなり、いよいよ立ち行かなくなってきたとき、まず思い浮かぶのは『破産手続』かもしれません。
破産は会社を清算する手続です。
しかし、できることなら会社を続けたいと思う経営者も多いでしょう。
そんなときに検討するのが『民事再生手続』です。
今回は、経営再建を図るためにある民事再生手続の概要をご紹介します。

民事再生手続とは

『民事再生手続』は、再建型倒産手続の中心的な手続の一つです。
基本的には中小企業や個人事業者を主な適用対象としていますが、大企業や個人(個人再生手続)も利用することができます。

民事再生法の目的は『経済的に窮境にある債務者について、その債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の許可を受けた再生計画を定めること等により、当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、もって当該債務者の事業または経済生活の再生を図ること』(民事再生法1条)にあり、破産せざるを得なくなる前に、債権者の同意を得ながら、事業を継続し、会社を再建することを目指します。


民事再生手続の流れ

民事再生手続を申し立てることができるのは、債務者と債権者ですが、今回は債務者自身が申し立てることを前提に手続きを説明します。

申立の要件については、(1)破産手続開始の原因となる事実が生じる恐れがあること、または、(2)事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済できないことと定められています。

このような規定からしても破産に至る事態が現実に発生する前、すなわち傷が少しでも浅いうちに再生手続を開始して、破産を防ぎ、再建の目的を達成することを目指していることが分かります。
再生手続が開始されても、再生債務者は原則として業務を続けることができますし、財産の管理処分権も失いません。
しかしながら、再生債務者には公平誠実義務が課されますから、その点に配慮して行動する必要はあります。

再生手続が進むと、再生債権の届出・調査・確定の手続きを経て、これに基づく再生計画案を裁判所に提出します。
再生計画にはさまざまな条項を盛り込むことができますが、たとえば、『再生債権の元本の7割を免除して残った3割を10年で弁済する』というような一般条項を定め、これを各再生債権に当てはめて、「元本2,000万円のうち1,400万円を免除し、残りの600万円について、毎年60万円ずつ弁済をする」などと具体的な権利変更を定めることが中心となります。
なお、再生計画によって債務の弁済期限が猶予される場合、原則として、計画認可確定から10年が上限となっています。

再生計画案が提出されると、再生債権者の決議に付されます。
再生計画が債権者集会または書面等の投票によって可決された場合には、裁判所は再生計画の認否の決定をします。
裁判所による再生計画認可決定が確定すると再生計画は効力を生じることになります。

このように民事再生手続は、債権者が平等に債権の免除を受け入れることにより、初めて成り立つものであり、債権者に一定の犠牲を強いたうえで、債務者の事業継続と再生を実現させる手続きですから、完全に会社を清算してしまう破産手続よりも、そのハードルは相当高くなります。

会社の経営が立ち行かなくなってきたとき、できることなら事業を継続したいと考えるならば、必要に応じて専門家の力も借りながら、その方法を模索していかなくてはなりません。
民事再生手続をとることができる可能性はあるのか、手続きをとったとして、再生計画を遂行できる見込みはあるのか、慎重に検討する必要があります。


※本記事の記載内容は、2020年10月現在の法令・情報等に基づいています。

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