公認会計士・税理士高木淳事務所

退職予備軍の増加にストップをかける『心理的安全性』の担保とは

21.01.12 | ビジネス【トピックス】

近年、人材管理の現場では『心理的安全性』という言葉が注目を集めています。
これは業務を進めるチームの一人ひとりが“恐怖心や不安を感じることなく、安心して発言・行動できる状態”になることを指し、人間性を重視する企業においては、必ず意識しなくてはならないものです。
そこで今回は、従業員が主体的に行動でき、自らの能力や強みを発揮できる職場にするために、心理的安全性を担保することの重要性について説明します。

リーダーへの信頼感が心理的安全性に直結する

生産性が高く、離職率も低い会社というのは、従業員が自由に意見を述べることができ、お互いに助け合いながら自己の目標を目指していけるような会社ではないでしょうか。

逆に、従業員の提案よりも会社の伝統や習慣が優先されてしまい、常に成績や結果ばかりを求められ、上司の顔色を伺いながら働かなければならない会社も、まだまだたくさん存在します。
旧態依然としたこのような会社は、得てして上司と部下の関係性もよいとはいえず、従業員が仕事へのモチベーションを上げられないことが多いようです。

アメリカで行われた調査によれば、チームのメンバーがリーダーを尊敬しているかどうかで、チームのエンゲージメントは最大で12倍も変わってくることがわかっています。
エンゲージメントとは、会社と従業員の信頼感や愛着を意味します。
エンゲージメントの高い企業は、個人と組織が一体となって双方の成長に貢献し合う関係づくりがなされているのです。

従業員のエンゲージメントを高めるのと同様、リーダーとチームのメンバーの信頼を築くにはそれなりの時間を要するため、リーダーがすぐに尊敬されるようになる秘訣などはありません。
しかし、少なくとも、部下と上司がなんでも相談しあえる環境づくりや、信頼関係を築けるようなコミュニケーションを心がけることによって、従業員の仕事へのモチベーションも上がり、チーム全体の意欲も高まっていきます。
このような職場が、いわゆる『心理的安全性』が担保された職場なのです。

もし、新入社員から会社の将来や自分の未来に不安を感じているような素振りが見えた時は、入社したものの誰にどのように相談してよいのかわからず、『心理的安全性』が担保されていない状態に陥っている可能性があります。
上司やリーダーは、まず該当の新入社員にヒアリングを行い、現実と理想の差異を分析し、サポートすることが急務といえるでしょう。


退職予備軍を増やさないために

新入社員以外にも、心理的安全性が担保されていないせいで、転職を考えてしまうような従業員は存在します。
では、どんな人が、いわゆる“退職予備軍”なのでしょうか。

多くの場合、従業員が不安感を持つようになるのは、上司やリーダーに評価されず、またパフォーマンスも発揮できていない時です。
誰にも認められずに、仕事でも実力を出せていないのであれば、誰でもその職場を去りたくなってしまうでしょう。

一方で、パフォーマンスを発揮できていないにもかかわらず、転職を選ばない人たちもいます。
そのような人たちは、社内の人間関係を苦痛に感じておらず、「会社が大きくて安泰」や「給料が高い」などの理由から、組織にぶら下がるように残り続けます。
人事部は、このような人たちがパフォーマンスを発揮できるような仕組みや、モチベーションが上がるような施策を考えなくてはいけません。

また、社内で成果を上げるなど、パフォーマンスを最大限に発揮しているが、リーダーや会社との絆を重視していない、いわゆる個人成果主義の従業員もいます。
このような人たちは会社のためというよりも自身のキャリアのために働いており、常に転職を考えている傾向があります。
そういった人たちは管理職に向いているとは言い難いため、間違って役職を与えてしまうと、辞める際に顧客を持っていかれたり、優秀な従業員を引き抜かれたりしてしまいます。

理想的なのは、リーダーや上司と信頼関係で結ばれており、また、仕事に対してパフォーマンスを発揮できる従業員を管理職に据えることです。
ただ、残念ながら会社にはそのような完璧な人ばかりがいるわけではありません。

人事部は、会社が従業員に提供すべき心理的安全性を意識しながら、人材の問題点を発見し、その都度対応していく必要があります。
一見、社内の人間関係は安定しているように見えても、よくよく調べれば「上司と部下の関係性がうまくいっていない」「このまま放っておくと、辞めそうな従業員がいる」「今いる従業員の中からリーダーを選ばなければならない」など、さまざまな問題点が露見してくるかもしれません。

これらの問題に対応していくためにも、人事部には経営陣と同レベルの権限を与え、フレキシブルに問題解決を図ってもらうことが重要です。
組織として、従業員の心理的安全性を守るためにできることを、いま一度考えてみるのもよいでしょう。


※本記事は、ダイヤモンド社から出版された『エンゲージメントカンパニー』(広瀬元義 著)から引用して作成しております。また、抽選で本書をプレゼントしております。数に限りがございますので、ご希望の方はお早めにお問い合わせください。

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