大阪プライム法律事務所

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同性婚と民法・戸籍法問題

21.03.28 | ニュース六法

同性同士の法律婚を認めていないのは「婚姻の自由」などを保障した憲法に反するとして、北海道内のカップル3組6人が、国に慰謝料の支払いを求めた訴訟の判決で、札幌地裁は3月17日に、現行制度は法の下の平等を定めた憲法14条に違反すると述べた上で請求は棄却しました。大阪地裁を含めて全国5地裁で争われている同種の訴訟で初めての司法判断です。
同性同士の婚姻届出を認めていない民法や戸籍が憲法違反というある意味で衝撃的な内容となったこの判決は、どういう理由で違憲としたのでしょうか。また、この判決の今後の影響などを考えてみました。

■原告の主張と判決
原告の方々が、同性同士の法律婚を認めない民法や戸籍法などの現行制度が憲法違反と主張した際の憲法上の根拠は、結婚の自由を定めた憲法24条、個人の尊厳を定めた憲法13条、差別禁止を定めた憲法14条でした。今回の判決では、憲法24条と憲法13条の違反は認めず、憲法14条1項に違反すると判断しました。

 ■憲法24条について
判決では、憲法24条1項での「婚姻」は「両性」や「夫婦」という異性を前提とする文言を用いていることともあって、異性婚のことを定めるもので、異性婚をする自由を基本的人権として保障しているとしつつ、ここでは同性婚のことについては触れていないことから、同性婚をする自由を認めているわけでも禁止しているわけでもない判断しています。憲法が制定された当時の民法はが同性婚を認められておらず、憲法が同性婚を想定していたとは言えないからです。 

■憲法13条について
判決では、憲法13条の自己決定権についても、この規定は、個人のプライベートなことに国家は口出しをするなという権利にすぎないことを指摘して、同性婚を認める制度を国家が作るよう求める権利はここからは出てこないことを述べています。 

■憲法14条について
判決は、このように、同性婚を認めていないことが憲法24条や13条に反しているわけではないとしつつ、憲法14条に反すると判断しました。

憲法14条は、「すべて国民は法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と定めています。これに関して、裁判所は「性的指向」と「結婚がもたらす身分関係(夫婦関係や親族関係など)や法的利益」について分析しました。つまり、性的指向について、「人種や性別と同じように、自分の意思では変えられない性的指向」という表現を用いて、結婚が認められる人と認められない人がいることの区別に合理的な根拠はあるのかを検討しています。そして、結婚がもたらす重要な利益として、夫婦関係や親族関係などの身分関係が生まれ、その身分に応じて相続権や税制上の優遇などの様々な法律上の効果が使えるようになるとしたうえで、異性カップルはそうした利益が受けられるのに対して、同性カップルは全く受けられないことに合理的な根拠はないとして、「同性カップルの結婚が認められていないのは憲法14条に違反する」をいう結論を導き出しました。つまり、異性カップルが使える結婚制度を、同性カップルでは一切使えないようにしている現在の民法や戸籍法などの現行制度は、合理的な根拠がないため、差別を禁じた憲法14条1項に違反するとしたわけです。 

■国家賠償は棄却
判決では、憲法14条違反が示される一方で、同性婚を認める制度を作っていないことへの国家賠償請求は棄却されています。これは、諸外国において同性婚制度等を導入する国が広がりをみせ始めたのは最近のことであること、日本で登録パートナーシップ制度の広がりはそれよりもさらに遅く平成27年10月以降であることや、国民意識の多数が同性婚等に肯定的になったのは比較的近時のことと推認できることといった事情に加え、これまで合憲性についての司法判断がなかったことにも照らせば、異性婚のみを認めている民法を改廃していないことが違法の評価を受けるものではないとしたからでした。 

■今後について
今回の判決で、日本国憲法は同性婚をどう見ているのかという議論が大きくクローズアップされました。これについては、憲法制定時の時代背景をもとに同性婚は許されないものとの理解で作られていたという議論も根強く、そうした立場から同性婚を認めようとする場合は憲法の改正が必要という主張もあります。今回の判決は、憲法24条は同性婚について触れるところがなく、「保障する」とも「禁止」とも述べていないとしてフラットな立場で立論されていて、今後、これをもとに議論の深化が進むものと思います。

いずれにしても、LGBTの権利の尊重と、性的指向・性自認に基づく差別やインターセックスであることに基づく差別を禁止するなど、幅広くこうした少数者の権利を認める法律の制定は必要であろうと思われます。

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