宮田総合法務事務所

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『家族信託』だけじゃない⁉ 老親の“預金凍結対策”のまとめ

21.04.12 | 暮らし・人生にお役に立つ情報

老親の認知症や大病により、老親名義の預貯金口座から、生活費・介護費用や入院・入所費用が下ろせなくなる事態、いわゆる“預金凍結”する事態を回避するための方策としては、
『家族信託』が最も効果的であることが多いです。

しかし、実務上、『家族信託』だけが事前の対策の選択肢になるとは限りません。

個々の家族のご希望・実状に沿った対策を取ることこそ最も重要な考え方となります。

そこで今回は、家族会議でご検討頂きやすいように、老親が元気なうちに取り得る対策5つをまとめてみました。

① 家族信託に基づく「信託口口座」又は「信託専用口座」に預金を移動させ、受託者たる子に管理を任せる。

家族信託についての詳細な解説は、ここでは割愛します。
詳細は、弊所ホームページをご参照下さいませ!


② 敢えて生前贈与で子の財産にした上で、“凍結”を防ぎつつ、その財産で老親の生活・介護費用を賄ってもらう。

生前贈与については、贈与税の課税の問題が生じるので、受取人一人につき1年間で金110万円まで非課税枠がある「暦年贈与」の制度を使うか、受取人一人につき金2,500万円までは非課税だが、相続発生時に課税対象財産に算入して精算が必要な「相続時精算課税制度」を使うか、という選択肢が考えられます。
税負担を抑えつつ、どのように贈与制度を有効活用するかは、専門家に相談をしながら検討すべきです。

③ 金融機関ごとの「代理人制度」を利用する。

金融機関(銀行・信用金庫だけではなく証券会社も含む)によっては、口座名義人たる老親が元気なうちに「代理人」を届け出ておくことで、預金者が銀行窓口で預金の払戻しができなくなる事態や証券会社に有価証券類の売買発注ができなくなる事態が生じても、代理人(主として子)が堂々と払戻しを受けたり売買発注をできるような仕組みを設けているところがあります。
ただし、このような制度を設けていない金融機関も多いので、まずは各金融機関が「代理人制度」を設けているかどうかを確認しましょう。
なお、この代理人制度も、届出をすれば老親が元気なうちから代理人も権限を持つことができる「即効型」と、届出をしてもすぐには使えず、将来老親の判断能力が低下したことを証明する診断書を提出することで初めて代理人の権限が与えられる「予約型」に分けられるので、この点も確認しましょう。

④ 老親のキャッシュカードやインターネット口座を便宜上そのまま利用する。

あまりお勧めできるものではありませんが、老親が持っているキャッシュカードを預かり、教えてもらった暗証番号をもとに子がATMで親の生活・介護費用を下ろすという便宜上の対応をする方策です(親の預金を子が下ろすことに後ろめたさを感じる方も多いですが、親の預金をきちんと親の生活・介護のために使う限りにおいては、法的にも税務的にも特に問題は生じません)。
多くの方がこのやり方で管理を行っていますが、2つの点で注意が必要です。
一つ目は、キャッシュカードに磁気不良が起きてしまうと、原則として預金名義人である老親の本人確認を経た上でのカードの再発行手続きが必要なので、もし老親の判断能力が著しく低下してしまうと、カードの再発行をしてもらえず、預金が下ろせなくなる事態が起こりえるということです。
二つ目は、家族内の事前の了解が無いと、後日家族内で使途不明金等の問題・紛争を巻き起こしかねないリスクをはらむということです。
家族会議の中で、誰がキャッシュカードを預かり、どのように対応するか(帳簿作成の要否や領収書の管理方法も含め)をきちんと話し合うことが重要です。
なお、老親名義の預金口座をインターネットバンク化して、ID・パスワードを子世代でシェアすることで、キャッシュカードよりも安定性・永続性のある管理が実現できると言えます。

⑤ 親の年金受取口座を施設利用料の引落口座に設定する。

2ヶ月に1回受け取る年金を“凍結”することなく有効活用する手段として、最もアナログですがとても効果的な方法です。
老親の年金受取口座を高齢者施設の利用料の引落口座に設定することができれば、任意のタイミングで任意の額を下ろしたり、送金したりすることはできませんが、既に高齢者施設に入所されている方やこれから入所する予定だけれども入所一時金の支払いに支障がない方は、この方策で十分なケースも多いと言えるでしょう。


★まとめ★

老親の財産管理、特に金融資産の財産管理・凍結対策のご相談ニーズが非常に高まっている中で、上記のように取り得る選択肢が『家族信託』だけではないことをご理解頂けましたでしょうか?
(とはいえ、老親が保有する預貯金等の金融資産を“凍結”させずに、今後の10年、15年、20年超…と老親を支える仕組みを作ることを考えたときには、『家族信託』という選択肢が引き続き最有力になることは間違いないでしょう。)

もちろん、老親の保有資産に金融資産だけではなく、自宅や収益物件、別荘などの不動産が含まれる場合は、また別の方策も検討する必要がございますので、その点は、ご留意くださいませ。

コロナ禍で、ますます早めの対策を取ることが重要となっている中で、これらの選択肢の検討は、やはりこの分野に精通した専門家を交えた家族会議で行うことが最善の進め方だと考えます。
家族会議の進め方も含め、まずはお気軽にご相談下さいませ!

 

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