マクシブ総合会計事務所

オペレーティングリース商品による節税について

21.04.12 | 事務所通信

こんにちは、マクシブ総合会計事務所です。

今回は「オペレーティングリース」と呼ばれる金融商品(以下、「オペレーティングリース商品」といいます。)
を使った節税手法についてご紹介致します。

決算で大きな利益の計上が見込まれる場合に、節税対策として使えるかもしれません。
また、事業承継時において自社株式の評価額を引き下げたい時にも利用できる可能性があります。
仕組みやメリット・デメリットをしっかり理解した上で活用していきましょう。

オペレーティングリース商品の仕組み

まず、オペレーティングリース商品の仕組みについてご説明致します。
以下でA~Eの5者が登場しますが、節税の恩恵を受けるのはAの出資者となりますので、Aの立場になって読み進めて下さい。

※なお、より深く理解するためには「匿名組合」という商法第535条に規程される契約形態の知識が必要ですが、ここでは説明を割愛致します。

A:出資者・・・匿名組合の組合員であり匿名組合の出資者
B:営業者・・・匿名組合の営業者であり匿名組合の事業を自己名義で運営
C:レンダー・・・銀行等の金融機関
D:メーカー・・・船舶や航空機等を製造
E:賃借人・・・海運会社や航空会社等

オペレーティングリース商品の仕組み完成までの流れ

オペレーティングリース商品は、以下の流れで取引が行われ、仕組みが完成します。

①AとBが匿名組合契約を締結し、AがBに出資を行います。

②BはCから借入を行います。

③Bは①及び②で調達した資金を元手に、Dから船舶や航空機等を購入します。

④BはEとの間でリース契約(オペレーティングリース契約)を締結し、船舶や航空機等を貸し出します。

リース期間中の運用の流れ

一旦この仕組みが完成すると、以下の流れでリース期間中の運用が行われます。

①BはEからリース料を受け取ります。

②BはCに借入金の利息と元金の返済を行います。

③Bは匿名組合の決算を行い、Aに対して利益又は損失の額を分配します。

④Aは分配された利益又は損失の額を自己の決算に取り込みます。

リース期間終了時においては、BはEにリース物件である船舶や航空機等を売却し、Aに出資金及び分配金を支払います。

オペレーティングリース商品の節税のカラクリ



B(営業者)が行う匿名組合の決算では、通常、船舶や航空機等を定率法により減価償却します。匿名組合が資産を購入してから数年間、リース料よりも減価償却費のほうが大きくなるため、匿名組合の決算で損失が発生します。

この損失の額は出資者に分配され、出資者は自己の利益を減らすことができ、結果的に出資当初の節税が可能となるわけです。

「法人税法基本通達14-1-3」によれば、「法人が匿名組合員である場合におけるその匿名組合営業について生じた利益の額又は損失の額については、現実に利益の分配を受け、又は損失の負担をしていない場合であっても、匿名組合契約によりその分配を受け又は負担をすべき部分の金額をその計算期間の末日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入」するとされています。国税庁HP:(匿名組合契約に係る損益)

オペレーティングリース商品:税務上の留意点

出資者は、匿名組合で発生した損失額を、無制限に自己の決算に取り込めるわけではありません。平成17年度の税制改正により、出資した金額を超える損失額については損金算入ができなくなっています。

また、リース期間の経過に伴い、減価償却費よりもリース料の方が大きくなると、出資者に対して利益の分配が行われます。
特に最終年度には、物件の売却により利益が多く発生しますので、注意が必要です。

つまり、出資当初は確かに節税になりますが、最終的には利益が計上され納税が発生しますので、トータルで見れば課税の繰り延べ」ということになります。

オペレーティングリース商品の会計処理について

出資者がオペレーティングリース商品に投資をした際に、どのような仕訳を行うかご紹介します。(2)~(4)では直接法と間接法という2つの処理方法がありますが、どちらを選択しても計上する利益と損失の額は同じです。

(1)出資金を営業者(匿名組合)に支払った際の仕訳

(借方)匿名組合出資 XXX (貸方)現金預金 XXX

(2)匿名組合から損失分配があった際の仕訳

①直接法による仕訳
(借方)匿名組合投資損失 XXX (貸方)匿名組合出資金 XXX

②間接法による仕訳
(借方)匿名組合投資損失 XXX (貸方)未払金 XXX

(3)匿名組合から利益分配があった際の仕訳

①直接法による仕訳
(借方)匿名組合出資金 XXX (貸方)匿名組合投資利益 XXX

②間接法による仕訳
(借方)匿名組合未収入金 XXX (貸方)匿名組合投資利益 XXX

(4)リース契約が終了し、匿名組合から出資金等が返還された際の仕訳

①直接法による仕訳
(借方)現金預金 XXX (貸方)匿名組合出資金  XXX
匿名組合投資利益 XXX

②間接法による仕訳
(借方)現金預金    XXX (貸方)匿名組合出資金  XXX
匿名組合未払金 XXX     匿名組合未収入金 XXX
匿名組合投資利益 XXX

オペレーティングリース商品の、法人税申告書の記載方法について

オペレーティングリース商品に関して、法人税申告書の記載方法についてご説明します。

まず、オペレーティングリース商品に投資したことにより添付が必要となるのが、別表9(2)【組合事業等による組合等損失額の損金不算入又は組合等損失超過合計額の損金算入に関する明細書】です。
この別表には、どこにいくら出資したのか、今期の損失額、今期計上できる損金の金額を記載します。また、課税所得について加算又は減算調整が必要な場合には別表4と別表5(1)に記載します。

オペレーティングリース商品と生命保険との節税対策の比較



節税対策としてよく利用される生命保険と、オペレーティングリース商品の節税効果を比較してみましょう。

生命保険もオペレーティングリース商品も、「課税の繰り延べ」である点は類似しています。相違点としては、生命保険では解約返戻金がピークに達するまで毎年継続して保険料を支払わなければならないのに対し、オペレーティングリース商品は当初1回の出資で済むという点が挙げられます。
また、オペレーティングリース商品では出資の最低金額が1,000万円以上で設定されていることが多いため、節税対策の規模が生命保険に比べて大きいと言えます。

オペレーティングリース商品で上手に節税を!



オペレーティングリース商品のメリットは、出資当初に多額の損失を計上できるため、節税効果が高いという点です。
デメリットとしては途中解約ができないため資金が固定化してしまうリスク、円建てでない場合の為替リスク、リース資産を売却した際の元本割れリスクなどがあります。

またオペレーティングリース商品の本質は利益の繰延ですから、利益分配を受けるタイミングやリース資産を売却するタイミングでは利益が計上されます。特にリース資産売却の際は利益が大きく計上されるため、改めて節税等の対策が必要となります。

以上、メリットとデメリットの両方をご理解頂いた上で、購入をご検討されることをおすすめ致します。

マクシブ総合会計事務所ではオペレーティングリース商品を取り扱う金融商品取引業者のご紹介も可能です。初回の面談は無料となっておりますので、ぜひ一度ご相談ください。



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