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自分さえよければいい?~囚人のジレンマ~

21.05.22 | ビジネス

自分さえよければ周りのことなんてどうでもいい。

そんな風に考えてしまう人がいて、まさに、コロナが流行し始めた当初のマスクの買い占めなんかがその典型なのかなと思います。

今回はそんな自分さえよければいいという考え方にも関係がある囚人のジレンマというものをご紹介したいと思います。

 囚人のジレンマとは?

囚人のジレンマとは個人ごとに自分にとって一番有利な選択肢を選んだ場合、全員で協力した場合より悪い結果が生じるというゲーム理論におけるモデルの1つです。

(ちなみにゲーム理論とは「利害関係を持つ相手がいる状況で、自分と相手の利益を考え、最適な行動を決める」ための思考法のことを言います。)

囚人のジレンマというちょっと怖い名前が付けられているのは、このジレンマが囚人(容疑者)の次のような状態に置かれたときの心理状態をよく表しているからです。

ある犯罪に関する容疑で捕まった2人の容疑者が、意思疎通の出来ない別々の部屋で尋問を受けています。

この2人が取る選択肢は「黙秘する」「自白する」のいずれかですが、自白の状況によって受ける刑罰の重さが異なります。

 ・1人が自白し、もう一方が黙秘した場合、自白した方は無罪、黙秘した方は懲役10年

・2人共黙秘した場合は懲役2年

・2人共自白した場合は懲役5年

この場合、それぞれの容疑者がどの選択肢を取るでしょうか。

 お互いに「相手が黙秘して、自分が自白する」という選択肢が一番魅力的であることは間違いないと思います。
しかし、相手も自白した場合は懲役5年になるというリスクもあります。お互いが「黙秘する」という選択肢をとった場合、懲役年数は最も短い2年となります。

 容疑者の2人がお互いの利益を考えて協力したら「黙秘する」という選択肢をとり、懲役が2年と最も軽くなります。しかし、お互いが自分自身の利益だけを追求して「自白する」ことを選択したら、「黙秘する」を選択したよりも長い懲役5年の刑が科せられます。

 このように、それぞれが自分にとって一番魅力的な選択肢をとった結果、協力した時よりも悪い結果を招いてしまうことを囚人のジレンマと呼びます。

囚人のジレンマの構造を理解するにも必要な、ゲーム理論の代表的な考え方にパレート最適とナッシュ均衡というものがあります。

 パレート最適

パレート最適とは誰も不利益を被ることなく、全員にとっての利益が最大化される状況のことを言います。

囚人のジレンマにおいてのパレート最適は2人とも黙秘をして、懲役2年で済むことです。しかし、相手が自分だけの利益を追求して自白した場合、黙秘した自分だけが懲役10年という最も重い罰を受けることになります。

そのため、パレート最適は理想的ではあるのですが、誰かが利己的な選択をした場合に他の人が大きな不利益を被るというリスクがあります。

 ナッシュ均衡

ナッシュ均衡とは相手の選択が変わらない場合に、自分が選択を変えても利益が増えない状況のことを言います。

ナッシュ均衡では、相手の選択は変わらないので、容疑者Bが自白する場合と黙秘する場合に対し、容疑者Aが取るべき選択を考えていきます。

 ①容疑者Bが自白する場合

容疑者Aは自白すると懲役5年、黙秘すると懲役10年となります。

⇒Aは自白すると罪が軽くて済む

 ②容疑者Bが黙秘する場合

容疑者Aは自白すると無罪、黙秘すると懲役2年となります。

⇒Aは自白すると罪が軽くて済む

 以上のことから、容疑者Aは容疑者Bがどちらの選択をしたとしても、自白した方が罪は軽くなるため、自白するという選択を取ります。容疑者Bも同様に考えると自白するという選択を取るので、囚人のジレンマにおけるナッシュ均衡は両方ともが自白をして、懲役5年の罰を受けることです。

 パレート最適とナッシュ均衡の矛盾

囚人のジレンマの場合はお互い黙秘して懲役2年の刑罰を受けることがパレート最適と言えます。しかし、相手が裏切って自白した場合、自分は懲役10年になってしまいます。

そのリスクを回避するためには自白するしかありません。この状態では2人とも「自白する」という選択しかできず、そこから変える必要性はありません。

つまり囚人のジレンマにおけるナッシュ均衡は「お互いが自白する」こととなりますが、それは「パレート最適」な状態ではありません。

それぞれの人にとっての合理的な判断である「ナッシュ均衡」と、全体の利益が最大化される「パレート最適」は必ずしも一致しません。この矛盾を表現しているのが「囚人のジレンマ」です。

 まとめ

自分だけの利益を追求してしまうと、悪い結果を招くことを、ゲーム理論は証明しています。なにか物事を決断する場合、自分だけでなく、関係する人の利益も考えた上で行った決断は、結果的に自分にとっても良い結果を招くことになるでしょう。

 冒頭で書いたマスクの買い占めも、確かにコロナの蔓延によりマスク需要が高まったことで、生産が追い付かず不足していたことは間違いないですが、個々人が全体最適のことを考えて、必要最低限の数量だけを都度買っていれば当時のような急激なマスク不足には陥っていなかったのではないかと思います。

つい自分のことを考えてしまいがちですが、こういった理論をみんなが広く知って合理的な判断ができる世界になればいいなと思います。

 最後までお読みいただきありがとうございます。

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