大阪プライム法律事務所

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アミメニシキヘビ騒動と動物管理

21.06.01 | ニュース六法

横浜市のアパートから体長約3・5メート​ル、体重約13キロのアミメニシキヘビが逃げ出し大騒ぎになっていましたが、ようやくそのアパートの屋根
裏で発見され、無事に捕獲されました。このニュースを受け、「私が逃亡しているのではないかと言われて、最初は何のことか分からなかった」と苦笑いしていた大相撲の元”安美錦”の安治川親方はホッとしていたという笑い話まで出て、終息を迎えました。しかし、このような大型のアミメニシキヘビに襲われて死亡する事故もあるということで、心配なことでした。このような動物管理上の法的問題を整理してみました。

■過去の事故
今回のニュースをネットで見ていると、BBCで、インドネシア・スラウェシ島では2017年に行方不明になっていた25歳男性がアミメニシキヘビの腹部から遺体で発見されたことが報じられていました。このヘビは長さ7メートルで腹部を大きく膨らませていたので、人間を飲み込んだのではないかと疑い、ヘビを切り開くと男性の遺体が中から出てきたということです。また、2018年にも同国スラウェシ島南端にあるムナ島で、長さ7メートルのアミメニシキヘビから54歳の女性の遺体が見つかったとも。本当に怖い話です。
日本国内でも、千葉日報の記事で、2012年6月に茨城県牛久市のペット飼育場でペットショップ経営者の父親(66歳男性)が亡くなっていた件では、警察は外に出ていた全長約6.5メートルのアミメニシキヘビに頭や腕にかまれて亡くなった可能性が高いとみていたということです。

 ■動物愛護法上の問題
アミメニシキヘビのような危険な動物は、「特定動物」として定められていて、動物愛護法で詳細な飼育方法が定められています。また、飼育施設を変更する際は都道府県知事の許可が必要です。飼育施設が安全基準を満たさないとされれば、飼育許可の取り消しとなります。報道からは、今回の飼い主は木製ケージで飼っていたものの、それへの変更許可を得ていなかったようでもあり、違反の可能性が指摘されています。許可を受けずに変更していた場合は、6か月以下の懲役又は100万円以下の罰金(動物愛護法45条3項)に問われる可能性があります。 

■刑法上の責任
今回は何もなくてよかったですが、もし飼っていたへびが逃げ出して人を死傷させた場合、どんな刑事責任が問題になるかというと、犬の事件での過去の判例からは、重過失致死傷罪に問われたケースが散見されるところです。単なる過失で人をけがさせたりしたときは過失致傷罪という罪になりますが、その過失があまりに思い場合は、重過失ということになってしまいます。重過失致死傷罪は「5年以下の懲役か禁固、または50万円以下の罰金」となっています。 

■賠償責任
ペットが第三者に怪我を負わせたような場合は、飼い主は、民法718条1項に基づき、「動物の占有者」として、第三者に生じた損害(けがや死亡、財産侵害)を与えたら、その損害を賠償する義務を負うこととなります。その場合、飼い主が「相当の注意」をもってペットの管理をしていたならば、賠償義務を免れることとなりますが、そのことは飼い主側がきちんと証明をしなければなりません。 

■犬の飼育では要注意
今回はアミメニシキヘビという極めてまれな事案でしたが、飼い犬が人を噛むなどといった事案は日常生活のなかではあることで、その場合の法律関係は、まったく同じです。飼い主は気をつけなければなりません。

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