弁護士法人青森リーガルサービス

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飲食店の新需要を開拓する、代替肉について解説

21.06.01 | 業種別【飲食業】

日本に先駆けて、海外では外食産業で『代替肉』の需要が高まっています。
代替肉とは、豚肉や牛肉、鶏肉といった動物の肉を使わず、大豆などの植物性素材を使って肉の味や食感を再現したもの。
ここ数年、日本でも、菜食主義の拡大や環境面の配慮などから、代替肉を使ったメニューを考案する飲食店も増えてきました。
環境問題や健康志向に対応し、新たな客層開拓のきっかけにもなりうる、代替肉について解説します。

『代替肉』が求められる理由

これまで大豆ミートに代表される代替肉は、「おいしくない」と評価されることが多く、日本の飲食業界では積極的にメニューに取り入れようとする店はあまりありませんでした。
しかし最近では、人々の環境保護意識の高まりや、肉より野菜を摂ろうという健康志向などの影響で、代替肉への注目度が高まってきています。
飲食業界でも、代替肉を求める新たな客層を開拓するチャンスとして、挑戦する店が増えてきました。

私たちが普段食べている『食肉』は、市場に並ぶまでにさまざまな過程を経ています。
その第一歩となる畜産の現場において世界各地で懸念されているのが、環境負荷の問題です。

年々、豚や牛、鳥など、食用の動物を育てるために行われる熱帯雨林の伐採、排泄物による大気・水質汚染などが深刻化しています。
2013年に発表された国連食糧農業機関(FAO)の調査によると、人為的に排出される温室効果ガスのうち、14.5%が畜産業からの排出であることがわかりました。
飼料の製造・加工の過程で出る二酸化炭素、牛や羊などの反芻(はんすう)動物が消化の過程で出すメタンガスなどが、環境に大きな影響を与えているそうです。
加えて、世界的な人口増加と途上国の生活改善により肉の消費量は増え続けると予想されるため、先進各国では今、肉や乳製品の消費量を減らすよう働きかけているのです。

そのアイデアの一つが、『代替肉』です。
日本でも健康志向ブームにより、ひき肉の代わりに豆腐やおからを使ったハンバーグなど、家庭内での代替レシピは増えていますが、アメリカでは代替肉を、家畜の肉のかわりとなるものとして定着させる動きが出ています。

一方で、市場に出回るにあたり、加工される植物性原材料の遺伝子組み換え技術も国によって異なり、導入における規定も異なります。
たとえば、アメリカでは、栽培されている90%が遺伝子組み換え大豆であり、本物の肉と同じ味、食感、風味を出すため着色料として添加される『レグヘモグロビン』も安全とされています。
遺伝子組み換え製品の規制当局である農務省と環境保護庁、食品医薬品局は、遺伝子組み換え製品は人間、植物、動物いずれにとっても安全と結論付けており、アメリカでは広く普及しています。
しかし、日本で安全性が確保され、流通させることが認められている遺伝子組み換え食品は、2018年2月時点では、じゃがいも、大豆、てんさい、とうもろこし、なたね、わた、アルファルファ、パパイヤの8品目です。
アメリカに比べると、遺伝子組み換え食品の認知度や理解度はまだ十分とはいえません。

日本では遺伝子組み換え食品を避けたい人も多いため、代替肉の導入を検討する際には、遺伝子組み換え大豆を使用したものかどうか、使用した原料にも注意し、素材の安全性について確認することが大切です。


海外のみならず日本にもある代替のアイデア

代替肉が注目されている背景には、近い将来やってくるといわれている『タンパク質危機』の問題があります。
タンパク質は、筋肉や血液、臓器など人の身体を構成する最も重要な栄養素です。
成長期の子供や若者のみならず、高齢者であってもフレイル(加齢による心身の活力低下)を予防して健康寿命を伸ばすために、タンパク質を十分に摂取することがますます必要とされています。

世界人口が2050年には現在の77億人から97億人へ増加すると予想されていることからも、“肉”だけでは必要なタンパク質を供給できないとまでいわれているのです。

そこでアメリカでは、開発をリードする『ビヨンド・ミート社』の設立を機に、2009年頃から代替肉への関心が急速に高まりました。
ベジタリアン(菜食主義)の増加にともない、代替肉を使ったメニューを取り入れているレストランも増え続けています。

ビヨンド・ミート社はエンドウ豆などの植物性タンパク質を主原料にした代替肉によるハンバーガーのビーフパティーやソーセージ、フライドチキンなどが大ヒット。
徹底的に研究し、食感や風味、見た目を本物の肉そのものまで近づけたことが、健康志向の高い消費者の心をつかみました
さらに、“肉をジューシーに焼くような”パフォーマンスで、牛肉や豚肉に劣らない“おいしそうなイメージ”を確立したといいます。
また、同じく人口肉製造会社の『インポッシブル・フーズ社』は、大豆やジャガイモ、小麦由来の“代替肉”を1,000店以上のレストランに供給し、人々の食に大いに貢献しています。

たとえば日本で提供されている、油揚げの一種であり、肉の代用として使われていた『がんもどき(雁擬き)』や、大和芋と豆腐を混ぜて油で揚げて、うなぎの代わりとした『精進ウナギ』も、代替のアイデアからきたものです。
日本の飲食店で“代替肉”をメニューとして扱う際には、こうした昔からの料理をヒントにするのもよいでしょう。

代替肉は、将来の地球環境に大きな影響を与えるといわれています。
環境問題や人々の健康のためにも、お店のメニューにどのように生かせるか考えてみてもよいかもしれません。


※本記事の記載内容は、2021年6月現在の法令・情報等に基づいています。

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