宮田総合法務事務所

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地銀のアパート融資が上向きに!

21.09.06 | 暮らし・人生にお役に立つ情報

2021年9月2日付日本経済新聞の朝刊記事によると、2018年以降の不適切融資問題を受けて減少が続いていた投資用不動産ローン(アパート融資)に、上向きの兆しが見えてきている、という。

2021年4~6月期の銀行による新規貸出額は4年ぶりに前年同期比で増加に転じた。
個人の資産形成への関心が高まり、一部の地方銀行を中心に投資用不動産関連の融資を拡大する動きが広がっている。


投資用不動産ローンは、2012年頃から増え始め、日銀が強力な金融緩和に踏み込んだことで、低金利下でも比較的高い利回りが見込め、節税効果も期待される不動産投資への関心が一気に高まった。
その一方で、2016~2017年頃から、日銀や金融庁の意向を受け、地銀各行は不動産融資の融資審査を厳しくし始めたという。
そして、2018年にスルガ銀が「かぼちゃの馬車」事件としてシェアハウス物件に関する不適切融資で業務改善命令を受けたのを契機に、各行が一斉に融資を絞り、新規貸出額は減少が続いていた。

それが、新型コロナ感染拡大をきっかけに個人の資産運用への関心が高まったことにより、転機が起きた。
テレワーク(在宅勤務)により通勤時間が無くなり、時間的に余裕ができたこと、先の見えない将来への不安が増したことも重なり、不労所得たる不動産投資を検討する人が増えてきたという。

不動産会社主催の投資・資産活用セミナーにおいては、実際にセミナー会場に行かなければ情報を得られなかったコロナ前と比べ、逆にのオンラインセミナー参加の心理的ハードルが下がったこともプラス要因のようだ。


地方銀行が投資用不動産関連の融資に再び前向きになってきたのは、新型コロナウイルス下で、不動産に代わる収益源の開拓が難しくなっているという金融機関側の事情もあるようだ。
不動産ローンでは担保をとれるうえ、1件あたりの融資額も大きい。
オフィスビルや商業施設は新型コロナで空室が増えたものの、投資用として一般的な住宅の需要は底堅く、価格は上昇が続いている。

とはいえ、貸出額が増えたのは、不動産の購入検討者が増えた影響が大きく、今のところ融資基準を緩める動きは限定的のようだ。
一部の銀行が融資を拡大し始めた半面、投資用不動産ローンから撤退する金融機関もあり今後は銀行における融資姿勢の二極化が進むかもしれない。



新規の不動産投資とは別に、既に収益物件を保有しているオーナーにとっては、老朽化した賃貸物件の建替とそれに伴うアパートローン等の問題がある。
特に、20年以上前にアパートローンを組んで購入した収益物件のオーナーは、物件もオーナーも共に高齢化していることに加え、ローンの返済が進み、更なる相続税対策の実行も検討が必要になる。

もし建て替えるとなると、現在の賃借人に立退きをお願いしなければならず、建替え時期は立退き交渉に大きく左右されかねない。
定期借家契約を交わすなど、建替えスケジュールの見通しを付けて行く工夫は必要だが、いずれにせよ、高齢のオーナーにとっては、今から数年以上先となる建替えに備え、家族信託という選択肢の検討は欠かせなくなる。
もちろん、数年~数十年以上先の不動産経営を想定すれば、収益物件の買換えや売却も視野に入れる必要があるかもしれない。

やはり、「家族信託」という選択肢も、投資用不動産関連の融資の広がりと共に広まっていくことが望ましいと言える。




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