日高税務会計事務所

目的を持って数値を比較しよう!

22.02.16 | 所長メルマガ

普段は不摂生である人が健康診断の直前に調整を行い、検査結果でかろうじて可と判定され安心すると言う話しがある。会社の業績の善し悪しを見る場合、決算や月次等の財務諸表を用いて行う。もちろん数字に表れない部分も多少はあるはずだが大抵は問題無い。決算で赤字が二期続くと金融機関等の評価が下がると言われているので、減価償却費を計上しなかったり、在庫を増やしたり、買掛金や未払費用の計上を減らしたりして利益を出すことがある。いわゆる粉飾決算である。中小零細企業は株主と経営者は大抵同じ(同族会社)だから問題とならないことが多い。

税務署が利益隠しや過度な節税に敏感なように、融資を行う金融機関等は粉飾等に鼻が利く。過去三期分程度の決算書があれば、調整があるかどうか分かるだろう。気づいている上で限度の範囲内ならば融資は行ってもらえる。場合により担保や保証協会の保証などを付けて。さらに、公的融資や助成金の申請等を手伝ってくれる場合も会社のためでは無く、金融機関側のリスク回避のためと考えて良いだろう。
 毎月の状況は月次損益計算書等で見ることが出来る。多くの会社では売上が多い月少ない月などの季節変動がある。だから、数年の同月比較が使われる。単月だけを見ていても、状況が良くなっているのか悪くなっているのか分からないもの。季節変動を考慮に入れて景気動向の影響や自社の努力の結果などを総合的に見ていく。注目すべき数値は、売上粗利益(卸・小売業は売上総利益、製造・建設業は材料費+外注費)と経常利益です。一般に売上が注目されるが、利益率の高い商品等を扱った場合、粗利益が増え黒字が増える場合もある。また、経費節減のため売上・粗利益が共に減っても黒字の場合もあるからだ。これら三つの数字の変化の傾向を早く知るためには年計グラフを用いる。数値が3か月続けて減少の場合は対策を検討する必要があると言われる。その場合、売上と粗利益については、主要な商品別、得意先別(店舗個別)、担当者別などのより詳細な年計グラフを作成することが望ましい。主な経費については金額の多いものの動向だけ気に掛けていれば良い。貸借対照表項目は現金預金残高自己資本比率の確認だけでも十分なはず。ところで、月次損益の正確性を増すためには、売上と原価は発生基準で計上しないといけない。入金や支払い基準では一、二か月ズレてしまう。月々の在庫額(仕掛)に変動がある場合は概算等の棚卸が必要となる。賞与が生活給となっている会社では予定分の月割り当て計上が望ましい。また、月末の社会保険料などが多額の会社では、預金引落が無い場合は未払計上すべきだろう。
 ところで、予算(計画)がある場合は、実績と比べて欲しい。過去の状況との比較だけでは対応が遅れがちとなる。予定通りに行かないから、計画や対応を素早く変更し行動を変えることが必要に迫られる。目標の結果を出すために変化対応することとなる。実績が悪くて対策を行い挽回するのとでは差が大きい。
 同業者等との比較は参考程度だろう。新規参入で利益が上がってない場合は必要かも知れないが、ある程度成長してくると、平均より上であることを確認して安心するから。むしろ、モデルとなる優良企業と比較するのが良い。ただ、規模が違う場合が多いので、1人当たりとか、比率を比較の対象にすると良い。
 実態が個人と変わらず、節税等のための利益を低めにしている会社では、社長の報酬と親族の過大報酬(専従者給与を上回る分)は経費から除外して個人と比較する方法もあります。
目的が曖昧だとデータも不正確でも良しとなり、比較しても役に立たなかったり、自己満足で終わる。

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