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応募者を集めるための『入社祝い金』のメリット・デメリット

22.02.22 | ビジネス【人的資源】

企業が『入社祝い金』や『就職祝い金』などの名目で、入社が決まった応募者に臨時の報酬を支払うことがあります。
入社祝い金は、企業が広く求職者を募るために設定するもので、場合によっては、求人サイトなどの職業紹介事業者が採用された求職者に支払うケースもありました。
しかし、職業安定法に基づく指針が一部改正されたことで、2021年4月1日からは、職業紹介事業者が入社祝い金などの金銭を提供し、求職者を募る行為が禁止されました。
この改正による一般企業への影響と、入社祝い金のメリット・デメリットを説明します。

職業紹介事業者による入社祝い金が禁止に

これまで職業紹介事業者のなかには、募集実績を増やすために、入社祝い金などの名目で求職の申し込みの勧奨を行う事業者も存在しました。
求職者にとっては、就職活動や転職活動の費用をそれで補填していたという側面もあります。

しかし、職業安定法48条に基づく指針の一部改正により、2021年4月1日からは、これらの行為が禁止になりました。
厚生労働省の資料に「求職の申し込みの勧奨は、金銭の提供ではなく、職業紹介事業の質を向上させ、それをPRすることで行ってください」と記されている通り、職業紹介事業者に対しては、金銭ではなく求人内容の充実により、企業に求職者を斡旋することが求められています。

また、過去には職業紹介事業者が、自社の紹介で就職した人に、「入社祝い金を提供する」などと持ちかけて転職を勧め、求人者から紹介手数料を得ようとしたケースもありました。
今回の指針の改正により、このような行為も禁止され、求人市場の健全化が進んだと見る向きもあります。

ただし、禁止されているのは、あくまで職業紹介事業者による金銭を伴う斡旋です。
一般企業が自らのホームページなどで人材を募集する際に、入社祝い金を設定することは禁止されていません。


入社祝い金を支給するメリットとデメリット

入社祝い金は、求職者にとって、就職にともなう交通費や引っ越し代などに使えるというメリットがあります。
入社直後、すぐに給与が支払われるわけではないので、当面の生活費に充てることもできます。
そして企業にとっては、多くの求職者を募ることができるのが、最大のメリットです。
特に、早急に人材が必要な場合や、できるだけ多くの人材が必要な場合、入社祝い金を設定することで、人材を確保しやすくなる可能性もあります。

一方で、「お金で人材を集めている」という見え方になることもあり、対外的な企業イメージとしては、あまりよくはありません。
また、入社祝い金が先に立ってしまい、求職者に企業の強みや魅力を訴求しづらくなることも考えられます。
入社祝い金を目当てに入社してきた人材が、思うように事業に貢献してくれないという問題もあるでしょう。

求人の基本は自社の強みを打ち出して、求職者に魅力を伝えることです。
そうした基本的な考え方を知ったうえで、社内で話し合い、慎重に導入を検討しましょう。

ちなみに、入社祝い金に対する税法上の定めはありませんが、将来的に自社に入社することを約束する見返りとしての意味合いが強ければ、『契約金』とみなし、源泉徴収を行なう必要があります。
入社した後、一定期間を経てから支払う場合には『給与所得』となり、額に応じた源泉徴収を行います。
入社祝い金の定義によって区分が異なるため、導入するのであれば、どのような勘定科目に適応するのか確認しましょう。


※本記事の記載内容は、2022年2月現在の法令・情報等に基づいています。

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