J-MACS税理士法人

じつはクレーム対応の要! クレームの適切な初動対応

22.06.07 | ビジネス【企業法務】

事業を営む以上、消費者からの苦情やクレームは避けて通れません。
クレームには、単なる当てつけのような悪質なものもありますが、企業側に落ち度がある場合もゼロとはいえません。
また、お客様窓口等に通報する消費者が必ずしも怒りに満ち、文句をいうことだけを目的にしているとも限りません。
クレームは、対応を誤ればさらなる風評被害を招きかねず、後に会社全体を揺るがす大きな問題に繋がる可能性があります。
今回は、クレーム対応のなかでもっとも肝心な、初動対応について説明します。

事実調査をし、相手の求めることを読み取る

もしクレームが発生したら、何を、どの手順で、どのように行うべきか、事前に社内体制を構築しておくことが重要です。
インターネット通販等を行う事業者等では、『お客様からの問い合わせ窓口はコチラ』などと、窓口の統一を図りやすいことから、クレーム対応に精通している社員による対応が期待できる場合もあるでしょう。

一方で、店舗を構え、直に消費者と接する機会がある企業等では、店舗スタッフが直接クレームをいわれるという危険性を抱えています。
スタッフの個別判断が功を奏する場合もあれば、裏目に出る場合もあるという状況では、スタッフも安心して働くことができません。
企業としては、クレーム対応の基本的手順をまとめたマニュアルを作成したり、社内研修での周知を図ったりして、統一的な手順に従って対応できる状況を作りましょう

クレーム対応には、(1)傾聴(受け止め)、(2)事実調査、(3)謝罪、(4)解決策の提示、の4ステップが重要です。
順を追って説明していきます。

まず、ステップ(1)傾聴と(2)事実調査についてです。
ここでは、先方の言い分を聞き取り、クレーム内容を精査します。
クレーム内容は、じつにさまざまです。
先方の訴えていることが、自社が法的に対応する義務を負っている内容なのかを冷静に判断し、必要に応じて事実調査を行ってから、然るべき対応を選択しましょう。

クレームの原因が、製造物の不具合やサービスの不備に関わるものの場合には、クレームを申し出た一消費者への対応にとどまらず、企業として全消費者に向けた謝罪や、消費者に発生した損害の回復を図る必要が生じることもあります。
企業側に落ち度がある場合のクレームは、事実調査を適切に行い、会社として誠実な対応が必要です。

また、クレームの目的、つまりクレームを主張している側が求めていることも常に同じとは限らないため、冷静に受け止める必要があります。
たとえば、「同じ出来事がないように会社にきちんとした事業運営をしてほしい」といった、いわばありがたいお叱り程度にとどまるのか、『金銭の支払い』や『謝罪』、『製品の交換』などクレームを申し出た人に対しての個別具体的な対応を求めているのかにより、企業がとる対応は違ってきます。
なかには、企業としてマスコミ等を通じて公表することを求められる場合もあるかもしれません。

クレームの目的には過剰な要求が含まれていることもあるため、企業側としてその対応を全面的に受け入れる必要があるのか、その対応は妥当なのか(たとえば、一定程度の金銭を支払う場合には、その金額は過度になっていないか)など、別途検討する必要があります。


謝罪に大切なのは“いつ”“何に”謝るのか

続いて、ステップ(3)謝罪です。
ここで大切なのは、『適切な謝罪のタイミング』だといえます。

クレームのなかには、「とにかく直ちに謝ること」を求めてくる場合もあります。
とはいえ、拙速に謝罪を急ぐことが適切な対応とは限りません。
事実関係調査に取り掛かることができていない段階で、非を認めた場合、そのことを逆手にとってクレームの要求がどんどんエスカレートしてくることも考えられるからです。

また、もしも後の調査結果により、企業に非がないことが明らかになったとしても、企業側に何らかの落ち度があったとの印象を回復するためには、時間や労力がかかります。
そのようなリスクを考えると、まずはクレームの内容を受け止めたうえで、社内で適切な調査を行い、結果を踏まえて然るべき対応をすることが大切です。
その場を収めるためだけの、安易な謝罪は避けたほうがよいでしょう。
とはいえ、クレームを主張する側の人は感情的になっている方も多いでしょうから、不快な気持ちにさせてしまったことそのものや、クレームをわざわざ申し出なければいけない状況にさせてしまったこと自体にまで謝罪を控える必要はありません。

そして最後に、ステップ(4)解決策の提示です。
事実調査の結果、企業に非があることが明らかになり、きちんと謝罪を済ませた後は、クレームを申し出た人以外にも同じような事態が生じる可能性があることを考えなければなりません。
製品やサービスの品質、接客やアフターフォローなどの内容を再度確認し、具体的な再発防止策に繋げていきましょう。

クレームは、見方を変えれば、企業にとって大きなチャンスでもあります。
最近でも、某製菓企業が、寄せられたクレームに対して詳細な事実調査を行い、その結果を具体的に開示したことで、とても丁寧な対応だとSNSで大きな評判を集めました。

適切なクレーム対応を行い、そこで得た情報や経験を自社の強みに変えていきましょう。


※本記事の記載内容は、2022年6月現在の法令・情報等に基づいています。

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