コーディアル人事労務オフィス

コーディアル人事労務オフィス

会社を次世代につなげるために、今やっておくべき相続対策

22.08.02 | 業種別【不動産業(相続)】

会社経営者にとって、次の世代に会社をどうバトンタッチするかは重要な課題です。
特に複数の相続人がいる場合、たとえば創業社長に配偶者がいて、子供が複数人いる場合には、社長が保有している株式をどのように承継するか、さらに継承の際にトラブルを生じさせないための配慮が必要です。
今回は相続の側面から、トラブルを防止するためのポイントを解説します。

相続の対象となる財産と相続人

被相続人が死亡すると、相続が発生します。
相続の対象となるのは、死亡時に被相続人に属していた一切の権利義務です。
つまりプラスの財産だけでなく、債務もこれに含まれます。
たとえば自宅不動産が代表者名義となっていれば自宅は相続の対象となりますし、自動車なども同様です。
そして今回のポイントに関連する『株式』も、相続対象に含まれることになります。
株式は死亡した社長が保有していた自社株だけではなく、証券会社で購入した上場株や、非上場株を保有していた場合にはそれらも含まれます。
また、会社の関連で銀行などからの借入れを保証していた場合には、その保証債務も相続されます。
このようにプラスの財産とマイナスの財産いずれもが相続の対象となります。

次に、相続人について確認しましょう。
相続人は以下のバリエーションがあり、法定相続分(相続をするときに受け取る割合)にもそれぞれ違いがあります。
【1】 配偶者(2分の1)+子、孫(2分の1を頭割り)
【2】 配偶者(3分の2)+親、祖父母(3分の1を頭割り)
【3】 配偶者(4分の3)+兄弟姉妹(4分の1)


特定の相続人に会社を継がせる方法と注意点

特定の相続人に会社を継がせようとする場合、被相続人である社長の持ち株すべてをその人物に相続させればよいのですが、実際はそれほど簡単ではありません。
特定の相続人への相続を実現するための、有効なステップについて解説します。

1.遺言書の作成
特定の財産を特定の人物に相続させるためには、遺言書の作成が必要です。
遺言書がない場合には、被相続人の死亡後の遺産分割手続きによって遺産が分けられることになり、どの財産を誰に相続させるかが不明確になってしまいます。
そのような事態を避けるため、あらかじめ被相続人自身が、財産の配分について指定しておくのが遺言書です。

遺言書は法律の要件に沿って作成する必要があります。
これは当たり前のようですが、非常に重要なポイントです。
なぜなら、法律上の要件を欠く遺言書は裁判所に無効と判断されてしまうため、遺言書を残したとしても、被相続人の意思を実現することができないからです。
法律上の要件はいろいろあります。
絶対に失敗したくないという場合には、公正証書遺言(公証役場で作成する遺言書)を活用しましょう。
公正証書遺言は公証役場で作成します。
公証役場が法律上の要件の確認もしてくれるため、要件を満たした遺言書作成が期待できます。

2.遺留分への配慮
法律の要件を満たして遺言書を作成すれば、被相続人の意思を実現できるかというと、必ずしもそうではありません。
気をつけなくてはならないのは、『遺留分』についてです。
これは配偶者や子といった相続人に対して、たとえ遺言があったとしても、一定の割合でその相続人の取り分を認める制度です。
この制度があるため、一部の相続人にすべての遺産を相続させるような遺言書や、1人に多額の遺産を相続させるような場合には、他の相続人から「遺留分の侵害額を支払え」と請求されることがあります。

遺留分の侵害額の請求はあくまで金銭的な請求であるため、特定の財産、たとえば「会社の株を渡せ」などと要求されることはありませんが、遺留分侵害額請求がなされると相続開始後のトラブルが続くことになります。
金額次第では財産を処分して費用に充当する必要も生ずるため注意が必要です。

3.どのような対応が考えられるか
遺留分に関するトラブルを防ぐためには、遺言書を作成する段階で、遺留分権利者に一定の財産を相続させ、遺留分の侵害状態が生じないようにすることが考えられます。
たとえば、配偶者と長男、二男がいる場合に、会社を長男に継がせたいと考えたとしましょう。
配偶者と二男に会社の株以外の財産で、全体の財産に遺留分割合を掛けた金額に相当する財産を相続させるように分配をしておくのです。

このような対応をとっておけば、遺留分侵害の問題を回避できる可能性が高まります。
また、遺言書にそのような分け方をする理由を、相続人が納得できるように記載することで、死後のトラブル防止を図ることもできるでしょう。
今回解説した点などに配慮し、スムーズな世代交代ができるよう準備を進めましょう。


※本記事の記載内容は、2022年8月現在の法令・情報等に基づいています。

TOPへ