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「氏名で呼ばないで」と患者から頼まれたらどう対応すればいい?

23.01.31 | 業種別【医業】

個人情報保護法では、医療機関に対し、患者の個人情報保護について適正に取り扱うことを求めています。
たとえば、待合室にいる患者を氏名で呼び出す際には、個人情報の第三者提供に該当するため、本人の同意が必要です。
今回は、名前で呼ばれることを避けたい患者への対処方法を検討していきます。

医療分野で対象となる個人情報とは

『個人情報』は、生存する個人に関する情報であり、氏名や生年月日、そのほかの記述などによって特定の個人を識別することができるものをいいます。
この『個人に関する情報』は、氏名や住所、性別、生年月日、顔画像など個人を識別する情報だけでなく、個人の身体、財産、職種、肩書などの属性に関して、事実や判断、評価を表すすべての情報が該当します。
医療機関における個人情報は、診療録だけでなく処方箋や手術記録、助産録、看護記録、検査初見記録、エックス線写真、紹介状、退院した患者にかかわる入院期間中の診療経過の要約、調剤録など多岐にわたります。

2017年に個人情報保護法が改正されて以降、すべての医療機関が『個人情報保護法』の順守義務を負うこととなりました。
万が一、個人情報の目的外利用や漏えいなどがあれば、行政機関から指導・勧告がなされる可能性があり、改善命令にまで違反する場合には刑事罰が科される可能性があります。


氏名以外で呼んでほしい場合どう対処する?

個人情報保護に対する意識が一般にも浸透したことにより、医療機関において、「氏名で呼ばないでほしい」といった要望が、一定数出てくるようになりました。
患者の氏名は個人情報に該当するため、医療機関には配慮が必要とされます。

では、そのような患者には、どのように対処すればよいのでしょうか。
厚生労働省の公表した『医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス』に関するQ&A(事例集)では、ほかの患者に聞こえるような氏名による呼び出しをやめてほしいといった要望があった場合には、「医療機関は、誠実に対応する必要がある」と記されています。
同時に、氏名や生年月日による本人確認は、患者の取り違え防止などに有効であると、氏名の呼び出しを一定範囲で許容しています。

医療機関によってはこのような背景から、以下のような対応を取っているようです。
(1) 患者の取り違え防止の目的で患者を氏名で呼び出すことの説明と、氏名で呼び出しを希望しない場合には申し出てほしい旨をあらかじめ院内やWebサイトに掲示する。
(2)「氏名で呼ばれたくない」という患者には、受付で受付番号を手渡しておき、申し送りを徹底したうえで、受付番号で診察室へ呼び出すなどの対応を取る。
(3)診察前には氏名および生年月日で本人確認を行うなどの対応で、取り違えを防止する。

また最近では、氏名ではなく、番号やアルファベットでの呼び出しや、番号をモニターで掲示して診察室へ案内する医療機関も増えました。
氏名での呼び出し時だけでなく、入院患者の名前なども第三者に特定されないよう配慮を行っている医療機関も多くあります。
適切な医療を提供すると同時に、個人情報にも配慮するため、可能な限り対処することが必要です。


※本記事の記載内容は、2023年2月現在の法令・情報等に基づいています。

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