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実現も近い? 全国民が歯科健診を受ける『国民皆歯科検診』

23.01.31 | 業種別【歯科医業】

2022年6月に、政府が『国民皆歯科検診』の導入を検討していることが発表され、注目を集めました。
現在、歯科健診が義務づけられているのは、1歳半と3歳の幼児と、学校検診を受ける小中高生、塩酸や硝酸などの歯に有害な化学物質を取り扱う業務の従事者に限られています。
国民皆歯科健診が導入されれば、これまで歯科健診を受けてこなかった人の受診機会が増えることになります。
国民皆歯科健診導入の背景と、歯科検診の現状について解説します。

国民皆歯科健診の実現と医療費の抑制効果

2022年6月7日に、政府は政策の基本的な骨格を示す『経済財政運営と改革の基本方針2022』を閣議決定しました。
このなかで話題になったのが、国民皆歯科健診制度の導入についてです。
基本方針として提示された『持続可能な社会保障制度の構築』のなかで、歯科医療について、歯科領域におけるICT活用の推進や、歯科保健医療提供体制の構築・強化などに加えて、『生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)の具体的な検討』が盛り込まれました。

これは、全国民に毎年歯科検診を受けてもらうもので、歯の健康を維持して他の病気の誘発を抑え、健康寿命を延ばすことを目的としています。
では、なぜ今、国民皆歯科健診が検討されているのでしょうか。
背景には、国民皆歯科健診を導入することによって、国の医療費を抑制するという政府の狙いがあります。

厚生労働省が公表した2020年度の『国民医療費の概要』では、医療費の総額は42兆9,665億円で、そのうち歯科診療医療費は3兆22億円と、全体の7%を占めています。
国民皆歯科健診制度の導入によって、虫歯や歯周病などの早期発見・早期治療ができれば、患者の重症化の予防になり、歯科診療医療費の抑制につながります。

また、歯周病の早期発見と早期治療は、歯周病を起因とする疾病の予防にもなります。
歯周病は、心血管疾患や糖尿病、誤嚥性肺炎など、さまざまな病気との関連性が報告されています。
口腔内の健康を維持することは、全身の健康を維持することにもなり、結果として医療費全体の抑制が期待できるのです。


まずは現行の歯科健診制度の周知と啓発を

プラーク(歯垢)の細菌が貯まる歯周ポケット保有者の割合は、年齢を重ねるごとに増えていき、45歳以上では過半数を占めます。
厚生労働省が公表した『令和2年患者調査』によると、歯肉炎や歯周病の患者数は全国で約505万4,000人にのぼります。
この数字はあくまで診察を受けている数であり、潜在的な患者はさらに多いと見られています。

しかし、現時点で歯科健診を受けている患者数は決して多くありません。
日本では、生涯にわたって定期的に歯科検診を受けるといった習慣が根づいていないため、すべての国民が歯科健診を受ける国民皆歯科健診制度の実現には、多くの歯科医師から期待が寄せられています。
同時に、歯科医師には、各自治体や歯科医師会が行っている歯科健診事業に対しての理解を深め、患者に歯科健診の重要性を啓発していくことが求められるでしょう。

たとえば現在、日本では、1歳半と3歳の幼児には歯科検診が義務づけられています。
乳歯が生えそろう3歳児の虫歯が増加していることを受け、約70%の市町村では1歳半と3歳の歯科健診に加え、2歳児歯科健診を実施しています。
また、20~60歳までの成人を対象とした歯周病検診を行っている自治体や、被保険者や扶養者を対象に無料で歯科健診を実施している健康保険組合もあります。

しかし、制度が利用されていなかったり、そもそも制度の周知が図られていなかったりするケースも少なくありません。
歯科医師としては、自身の患者に対して現在受診することが可能な歯科検診の受診を促していくことが大切です。
まずは厚生労働省や日本歯科医師会が配布しているリーフレットやポスターなどを活用しながら、口腔内の健康管理が健康寿命を伸ばすことにつながることを説明しましょう。
そのうえで、自治体や健康保険組合などが行っている健診事業を案内するなどし、引き続き歯科検診の重要性を伝えることが大切です。


※本記事の記載内容は、2023年2月現在の法令・情報等に基づいています。

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