桂川会計(桂川淳税理士事務所) 

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優れているかのように偽って宣伝する『優良誤認』に注意!

23.06.27 | ビジネス【企業法務】

外国産であるにも関わらず国産だと偽って商品を販売したり、「成分が他社の2倍」と謳っていながら、実際にはその成分が含まれていない商品を販売したりする行為は、『優良誤認表示』に該当することがあります。
景品表示法では優良誤認表示を禁止しており、もし違反した場合は、販売の停止や課徴金の支払いなどが命じられる可能性もあります。
知らずに景品表示法違反となってしまわないよう、優良誤認表示について理解を深めておきましょう。

優良誤認表示となってしまう表示の具体例

消費者庁は2023年4月11日、大幸薬品に対し、6億744万円の課徴金を支払うよう命じました。
これは、大幸薬品が製造・販売する除菌用品『クレベリン』の「空間に浮遊するウイルス・菌・ニオイを除去」などと謳った表示や広告には合理的な根拠がなく、優良誤認表示に該当すると判断されたことによるものです。

優良誤認表示とは、商品やサービスの品質や規格などの内容について、実際の物よりも著しく優良だと消費者に誤解させたり、他社の製品よりも著しく優れていると消費者に思わせたりする『表示』のことをいいます。
表示とは、パッケージやラベル、チラシやポスターなどを含む、商品やサービスの内容を消費者に知らせるもの全般を指します。

具体的には、「大学合格実績No.1」と謳いながら、実際には他校とは異なる方法で集計しているだけに過ぎず、適正な比較を行っていない予備校のポスターや、国産有名ブランド牛肉であるかのように表示して販売していたものの、じつはブランド牛ではなかった国産牛肉などが優良誤認表示に該当します。

優良誤認表示は、消費者が正しく商品やサービスを選べなくなり、不利益をこうむる可能性があることから、不当表示として景品表示法第5条第1号により規制されています。
もし、優良誤認表示に該当した場合は景品表示法違反となり、消費者庁や都道府県知事から該当する表示の排除や、消費者に与えた誤解の解消、再発防止策の実施などを行うよう『措置命令』が発令されます。
また、優良誤認表示によって得た売上額により、景品表示法第8条1項に基づき、課徴金納付命令が下されます。
ちなみにクレベリンの大幸薬品に科せられた6億円以上の課徴金は、景品表示法違反によるものとしては過去最高額でした。

優良誤認表示かどうかは提出資料で判断される

優良誤認表示は故意に偽って表示した場合だけではなく、知らずに誤って表示してしまったケースであっても、景品表示法違反になります。
ただし、優良誤認表示を行ったからといって、すぐに違反となるわけではなく、事業者には弁明の機会が与えられます。

消費者庁は、優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めます。
事業者側が該当する表示についての合理的な根拠を示す資料を提出できれば、優良誤認表示とはならず、景品表示法違反にもなりません。
この優良誤認表示かどうかを判断することを『不実証広告規制』といいます。

事業者は、消費者庁から資料の提出を求められた後、15日以内に根拠となる資料を提出しなければいけません。
提出する資料は、「試験や調査によって得られた結果」か、もしくは「専門家や専門機関の見解、学術文献などに基づくもの」である必要があります。

さらに、提出された資料が、表示された効果や性能と適切に対応していなければなりません。
たとえば、大幸薬品はクレベリンに関する表示の根拠として、自社実験によるステンレスで囲まれた約6畳の密閉空間での効果を示す論文を資料として提出しました。
しかし、消費者庁は「実生活における空間は密閉空間とは異なる」との見解を示し、根拠にはならないと判断しました。
大幸薬品が提出した資料は、特定の条件下のものであり、実生活での使用を想定した商品の表示とは対応していないと判断されたことになります。
大幸薬品は消費者庁の是正措置命令を不服として、東京地方裁判所に措置の差し止めを求めて訴訟を起こしました。
結果、大幸薬品の主張は一部認められたものの、同社は最終的に消費者庁の是正措置命令を踏まえてパッケージの変更等を行いました。

事業者は、このように試験や調査を行っていても、優良誤認表示と判断される可能性があるということに重々注意しなければなりません。

優良誤認表示を避けるためには、自社以外の第三者機関に試験や調査を依頼して、合理的な根拠となる資料を用意しておくことが大切です。
また、その結果と表示が適切に対応しているかどうかについても、弁護士などの外部機関や社内の法務部門に確認してもらう仕組みを構築しておくとよいでしょう。
知らぬ間に景品表示法違反になっていたなどということのないよう、製品やサービスの販売前に確認し、課題をクリアしてくことが重要です。


※本記事の記載内容は、2023年6月現在の法令・情報等に基づいています。

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