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心に留めたい3要素! 契約書作成前に押さえておくべきポイント

23.09.12 | ビジネス【企業法務】

企業経営にあたっては、一般的に、「ヒト、モノ、カネ」が重要であるといわれています。
契約書の作成時にも同様で、この点をふまえて行う必要があります
特に、会社の決算書類については、可能であれば内容を契約前に把握しておきたいところです。
今回は、契約書を作成する際に、押さえておくべき重要なポイントについて説明します。

現状のヒト、モノ、カネを把握する

契約書を作成する際に注意するべきポイントはいくつかありますが、どのような条項にするか以前に、会社のヒト、モノ、カネの現状を把握することで、方向性を明らかにする必要があります。

たとえば、雇用契約を交わしていざ雇用をしていても、貸借対照表上の流動資産のうち預金や現金が極端に少なかった場合、たとえば労使紛争が生じて従業員を解雇したことにより、長期間の未払賃金支払請求をされてしまうと、それだけで資金ショートしてしまう可能性があります。

そうなると、契約書のうち従業員の地位(退職や休職)に関する部分については、後々争いにならないか、仮に争いになったとしてもダメージを最小限にするような内容を記した契約書が必要です。
具体的には、労基法の水準を下回らない範囲で、なるべく解雇以外の方法で従業員を退職させられるように作成する必要があります。

一方、ある程度預金や現金に余裕がある企業であれば、いわば返り血を浴びる覚悟で解雇を選択し、労使紛争が生じた場合に未払賃金や解決金を支払うことが可能です。
この場合、契約書の内容を労基法スレスレの水準にするのではなく、従業員が読んだときに失望しない、メリットを感じられるものにすることが有効といえます。

労働法の世界では、就業規則で定められた労働条件が最低ラインとなり、雇用契約の内容がその最低ラインを下回った場合には下回った部分が無効となります。
逆に、雇用契約の内容が就業規則よりも労働者にとって有利な場合には、その有利な内容が優先されます。

一般的に、企業が従業員を大切にしようとする場合、労基法より有利な契約内容が多くなります。
契約しようとする人材がある程度優秀な場合、雇用契約の内容を読んだ時点でその会社の本音を読み取ることができるため、雇う側に資金(カネ)的な余裕があるぶん、採用する従業員(ヒト)の質を上げることを優先する会社であると判断されることになるのです。

じつは見落としがちなモノとカネの関係

では、契約書を作成する際に重要になる「モノ」とは、何を指すのでしょうか。

たとえば飲食店が大型スーパーの一画でテナント契約する場合、賃貸借契約の内容や、それが定期借家契約であるかどうかによっても、受けられる銀行融資の額が変わってきます。

具体的には、売上が一定水準を下回ると賃貸借契約が解除されることになっている場合、その一定水準がどの程度かを明確にしつつ、なるべくその水準を下げる(賃貸借契約を解除されにくくする)ことで銀行融資が受けやすくなります。

一方で、定期借家契約である場合には、賃借期間が満了すると再契約できる保証がないため、銀行融資に頼ることが難しくなります。
そのようなときには、あらかじめ再契約の条件を設定しておくなど、リスクを明確化することで対処します。
たとえば再契約承諾料などを設けて再契約条件とする旨の条項を入れることで、再契約しようと思えばできる、という状況を作れば融資を受けられる可能性が高くなります。
事業資金が潤沢にある場合は別として、もしも事業資金が借りられなくて困る可能性があるのであれば、「モノ」の現状を把握し、これを見直すことによって事業資金(カネ)を増やすこともできるというわけです。

つまり、契約書というのは、一つ一つの条項も大事ですが、その前提として企業の実態や現状を把握して検討しなければ効果を発揮しづらいといえます。

このように、契約書の作成はそもそも会社の「ヒト、モノ、カネ」の現状がどうであるかによって、内容の方向性が変わってきます。
今ある会社の状況や将来的な展望を踏まえたうえで、どのような契約を結びたいのかを明らかにし、そこから逆算して契約書を作ることが肝要といえます。


※本記事の記載内容は、2023年9月現在の法令・情報等に基づいています。

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