社会保険労務士 吉田事務所

広告展開の重要ポイント! 日本と海外ではどう違う?

24.02.13 | ビジネス【マーケティング】

グローバル化により、海外市場を視野に入れる企業が増えてきました。
海外に向けて自社の商品やサービスをアピールするには、日本国内と同様に、広告展開が欠かせません。
しかし、日本と海外とでは文化や習慣などが異なるため、対象国によっては広告に対するユーザーの感覚にも大きな隔たりがあります。
その違いを理解せずに広告を出稿しても、大きな成果を得ることはできません。
日本との広告の違いを理解したうえで、海外に向けた広告展開を考えていきましょう。

海外進出するなら広告にもローカライズを

ネット販売市場の世界的な拡大によって、日本でも海外のマーケットに意欲的な企業が増加しています。
国内での需要の減少や市場の縮小なども相まって、海外に活路を見出す中小企業も増えており、今後もその傾向は続いていくと見られています。
また、インバウンドの回復によって世界中から日本の商品やサービスに熱視線が注がれるなか、海外向けのプロモーションに力を入れる企業も出てきました。

しかし、日本と海外では広告の手法や捉え方に大きな違いがあり、それぞれの国の法律や規制に準拠する必要があります。
海外に自社商品やサービスを売り込むのであれば、その国に合わせた広告展開を行わなければいけません。
たとえば、トヨタや任天堂といった世界的な活躍を見せる日本企業は、同じ商品をアピールする場合にも、日本国内と海外とではまったく異なる広告を制作しています。
日本向けの広告を翻訳しただけの広告では、ターゲットとしているその国のユーザーに共感されにくい可能性があります。

自社の商品やサービスを別の国や地域でも受け入れられるように最適化することを「ローカライズ(地域化)」といいます。
現地に受け入れられるよう、広告も同様にローカライズが必要なのです。

アメリカでは多い競合他社同士の比較広告

広告のローカライズを行うには、その国でどのような広告が反響を得られるか、好まれる広告の特徴を知ることが大切です。
国によって広告の特徴はさまざまあり、特に日本とアメリカにおいて顕著なのが、「比較広告」の存在です。

ライバル社の商品やサービスと比較して、自社の優位性をアピールする比較広告は、コカ・コーラ(コカ・コーラ社)対ペプシコーラ(ペプシコ社)、Mac(アップル社)対Windows(マイクロソフト社)などに代表されるように、アメリカで多く見られる宣伝手法です。
日本でも、事実を表現しており誤認を招くものでなければ、比較広告は受け入れられています。
しかし、広告で主張している内容が、客観的な事実であり数値が正確、かつ比較の方法が公正であるといった要件を満たしていないと消費者庁から「不当表示」と見なされ、広告や販売行為の差し止め、課徴金の納付などが命じられることもあります。
また、比較広告も市場競争の一環として捉えられているアメリカとは異なり、センセーショナルな内容の広告になじみがないこともあって、日本ではあまり好まれません。

その事例として最近話題となったのが、大手ホテルチェーンのヒルトン・ホテルズ&リゾーツ(以下「ヒルトン」)が2023年11月に公開した日本向けのWeb動画です。
複数ある作品のうちの一つが、日本の旅館のサービスを揶揄している内容であるとして物議を醸しました。
ホテルの競合となる旅館のウィークポイントをあげつらうような内容(主に、旅館は融通が利かない、といったもの)は、SNSを中心に多くの批判を集めました。
その結果、ヒルトン側は謝罪コメントを発表し、問題となった動画を非公開にしました。
  
ヒルトンのWeb動画は、国民性に合わないメッセージがどのような反響につながるのか体現した事例といえます。
ちなみに、ヨーロッパ諸国も日本と同様、比較広告にあまり寛容ではありません。

もし、この動画がアメリカ国内に向けての広告展開であれば、ここまでネガティブな反応は起きなかったでしょう。
このように国ごとの消費者心理を理解しておくことが重要であり、自社商品の優位性を示す際に各国の文化や歴史、背景、関連する法律や規制に配慮する必要があるということです。

欧米では物語性やアイデア重視のCMを制作

日本と海外とではテレビCMの方向性も異なります。
日本のテレビCMの多くは1本15秒または30秒で、タレントなどの著名人が端的に商品やサービスの魅力を伝えます。
誰もが知る話題の著名人をテレビCMに起用することで、商品イメージの向上や、短い時間でも視聴者の注意を引くことができるというメリットがあります。
一方で、CMの出演者の不祥事によっては、大きなダメージを負ってしまうというリスクもあります。

そのような日本のテレビCMに対し、アメリカやヨーロッパでは、30~60秒ほどの比較的長い時間を割いて、物語性やアイデアで商品をアピールする手法が一般的です。
もちろん、タレントなどの著名人を起用して商品をアピールするテレビCMもありますが、どちらかといえば、商品の特長を強調することに力を注ぐCMが多い印象です。
これは、人種や民族が多様な欧米諸国では、特定の著名人を商品と紐付けてイメージを固定させるよりも、物語性やアイデアでその商品の持つ魅力を伝えるほうが、より視聴者に受け入れられやすいと捉えられるからです。

海外のテレビCMなどは企業がWeb上で配信しているケースもあり、有名なものであれば日本国内からでも簡単に視聴することが可能です。
もし、自社が海外進出を考えているのであれば、事前にターゲットとなる国のCM動画を参考にして傾向をつかみ、商品の広告展開に役立ててはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2024年2月現在の法令・情報等に基づいています。

社会保険労務士 吉田事務所
TOPへ