宮田総合法務事務所

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民事信託の受託者は信託報酬を受領して良いか?

15.12.14 | 暮らし・人生にお役に立つ情報

結論から言いますと、家族・親族などが個人的な縁故に基づき受託者となる民事信託・家族信託の場合は、信託報酬をもらうことは問題ありません。


では、どのような点について、注意すべきでしょうか?

信託における「信託報酬」受領の可否の判断については、財産を預かる受託者が「営業目的をもって、不特定多数の人から反復継続して信託業務を引き受けるかどうか」ということがポイントになります。

「営業目的をもって、不特定多数の人から反復継続して信託業務を引き受ける」ということは、言い換えますと、一般の方からの依頼に基づき信託の引受けを業(なりわい)として行う場合ということです。

この場合には、当該受託者は信託業法の適用を受けることになりますので、金融庁から信託業の免許を取得しないと「信託報酬」を合法的に受領できません。
つまり、信託業の免許を持つ「信託銀行」又は「信託会社」だけが、受託者として信託報酬を受領できることになります(但し、信託報酬は一般的に高額です)。


信託法上は、受託者の適格性について、「未成年者」「成年被後見人」「被保佐人」を排除している(信託法第7条)だけで、それ以外の制限はありません。
つまり、株式会社やNPO等の各種法人、弁護士、司法書士、税理士等の専門職などが受託者に就任すること自体は全く問題はありませんが、信託業の免許を持たずして受託者として信託報酬をもらうことは、前述のように信託業法違反になりますので、注意が必要です。


一方、「民事信託」「家族信託」とは、前述の営利を目的とする受託者に預ける信託(=「商事信託」「営利信託」と言います)ではない形、つまり営利目的でない(非営利の)信託の形を言います。
民事信託・家族信託の受託者は、家族や親族などという特別な繋がりにより財産管理を託される訳であり、営業目的をもって、不特定多数の人から反復継続して信託業務を引き受けている訳ではありません。
従いまして、信託業法の適用を受けませんので、財産管理を受託する対価として「信託報酬」を受領することができます。


民事信託の受託者は、契約自由の原則に則り、委託者と受託者との合意に基づき、信託業務の対価としての報酬をもらうことが可能です。

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