宮田総合法務事務所

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家族信託が効果的に利用できる事例のご紹介 ≪不動産の共有対策≫

15.12.13 | 暮らし・人生にお役に立つ情報

近年話題の『家族信託』を円満円滑な資産承継に
活用する動きが盛んです。

しかし、どのような場面で『家族信託』が活用できるのか、
まだまだ認知されていないのが実状です。
そこで今回は、『家族信託』の一つの典型的活用モデル
≪不動産の共有回避≫の事例をご紹介します。


不動産オーナーである親が、複数いる子供達に対して、
将来の相続時に平等に財産をあげたいと考えている場合に、
つい不動産を共同相続させてしまうケースを数多く見かけます。

子供はみんな平等に取り扱い親の“想い”は、よく分かりますが、
専門職から見ると、一つの不動産を兄弟で共同相続(共有)させるのは、あまりお勧めできません。


それぞれの兄弟には、配偶者がいて子がいて、長期的にみると共有持分が時と共にどんどん細分化されていく可能性が高いからです。
そうなると共有者間の意見調整に手間がかかったり、最悪の場合、その不動産が有効活用できず“塩漬け”になるリスクが出てくるからです。


下記の具体的な事例を通して、その対策をご紹介いたします。

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≪事 例≫
X(75)は、東京 23 区内に大型のアパート(収益物件)を所有しています。
将来の相続時には、土地を分筆して3等分することなく、子供3人(ABC)に
均等に相続をさせたいと考えていますが、子供のうち誰か一人に
当該不動産を単独で相続させるには、それに見合うだけの他の資産がありません。
また、Xは、しばらくの間はアパートの売却処分や不動産の分割(土地の
分筆や建物の区分所有権化)をすることについても望んでいません。
なお、そのアパートの管理は、長男Aの家族に任せるつもりです。
また、あと10年もすれば、老朽化に伴う建替え等の問題が出てきますので、
将来の当該不動産の管理・処分の方針につきABCの家族間で揉めないか
心配でもあります。


≪解決策≫

Xは、現時点で長男Aとの間の契約において、当該アパート(土地・建物)を
信託財産とする信託を設定します。
その内容は、受託者をA、受益者をXとし、Xの死後、第二次受益者を
ABCの3人(受益権は各3分の1)にします。
Xは、信託契約において、将来的には受託者Aの独自の判断で
当該アパートを建替え又は換価処分できるように規定しておきます。



≪ポイント≫

Xが考える相続のポイントは、次のとおりです。
 1. 兄弟3人に平等に相続させたい。
 2. しばらくの間は、アパートの所有を継続してほしい。
 3. 子供のうち誰か一人に単独相続させるには、
      それに見合うだけの他の代償資産がない。
 4. アパートの管理は、長男A家族に任せるが、
      二男Bと三男Cの家族にも、賃料収入の利益を
      きちんと配当してあげたい。
 5. 将来的にアパートが老朽化したら、兄弟間で揉めることなく
      建替え又は売却してその代金を3等分するなりしてほしい。


このようなXの“親心”をきちんと反映させるには、
上記のような民事信託の仕組みが活用できます。
信託契約の発効により、Xの生前は、認知症対策として、
あるいは準備期間として、長男Aに財産管理を任せ、
その働き具合を見て長男Aに受託者として財産管理の将来を
託せるかを見極めます。

なお、Xの存命中は、受益者がX自身ですので、不動産の名義は
Aになりますが、贈与税や不動産取得税等の課税は発生しません。
Xが亡くなった後は、所有権で共有にさせるのではなく、
第2受益者として子供3人に受益権を準共有させる
ことで、
資産承継においては、所有権の共有と同様の効果(平等相続)を実現
できます。
子供ABCのうち、二男Bと三男Cは、賃料収入の配当を得ることが
できますが、長男Aの管理方針や修繕・建替え・売却処分等の判断については
口を出すことができません。
長男Aは、適切なアパート管理によって収益を得て
、二男B及び三男Cに対し、利益配当をきちんと行いさえすれば、
アパートの管理・処分方針をめぐる無用な揉め事に巻き込まれたり、
不動産が塩漬けで動かせなくなることを防げます。

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