TFSコンサルティンググループ/TFS国際税理士法人 理事長 山崎 泰

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『スカブラ』という職業?? ~新年、少しだけ力を抜いてみませんか~

16.01.14 | 人事・育成・組織

新年明けまして、おめでとうございます。

さあ、今年も張り切って!とも思ったのですが、たまには少し肩の力を抜いたスタートの年があっても・・・と思い直して、新春号では“スカブラ”を取り上げてみることにしました。


■ “あさが来た”にも出てくる、九州炭鉱事業

今、NHK朝の連続テレビ小説“あさが来た”が、高視聴率で大きな話題となっています。
かくいう我が家も、娘が毎週録画予約した番組を、なんと?!受験生の息子も含めて、一家そろって、毎日欠かさず、楽しみに見続けています。

大同生命や日本女子大学の創設にもかかわった、明治初期の女性実業家・広岡浅子女史の生涯を描いたドラマで、福沢諭吉、大久保利通、五代友厚など歴史上の人物も次々と登場して・・・
おもしろくて目が離せません。

その広岡浅子女史が、最初に手掛けた事業が、九州での炭鉱事業です。

(つづく)

■ “スカブラ”ってご存じですか?

「仕事はスカ(好か)ん、いつもブラブラしている」ので“スカブラ”。

筑豊地方の方言でもあり「怠け者」の意味ですが、どこか憎めない愛着のある響きがあるから不思議です。

それこそ九州で炭鉱が盛んだった頃、まさに“あさが来た”の時代ですが、
多くの炭鉱夫が昼夜問わず、3交代・24時間体制で、石炭を掘っていました。

炭鉱から10人の炭鉱夫がトロッコに乗って出てくると、
9人は疲れきってドロドロで汗だくになって出てくるのに・・・
1人だけは、服も顔も汚れていないし、汗もかいていない。
そのくせ、ニコニコしながらトロッコに乗って出てくる。

炭鉱に入っても、石炭は掘らない。
仕事といえば、現場と詰め所を往復して仲間に時間を知らせるだけ。
仕事もせず暇さえあれば仲間と与太話。
休憩時間になると、お笑い芸人ならぬ、バカ話でみんなを笑わせて、
やることといえばときにお茶を出すくらい・・・


明治版「フーテンの寅さん」のような、自由奔放の典型のような男が、
まさに「仕事はスカん、いつもブラブラ」の“スカブラ”なのです。

でも実は“スカブラ”は、決して単なる怠け者ではなく、
なくてはならない存だったのです。

しんどくて厳しい石炭掘りをする炭鉱夫たちの「潤滑油」という、立派な職業?でもありました。


■ “スカブラ”の意外な役割

その証拠に、石炭から石油にエネルギー資源が変わっていき、炭鉱事業が縮小してくなかで・・・
経済合理性のみから、まずは“スカブラ”からリストラをした会社はどうなってしまったか?

「スカブラのいない炭鉱なんて、まったく面白くなかよ」
そんな声が上がり始めるのです。。。

“スカブラ”抜きで、10人だけで炭鉱に入っていくようになると、作業効率が大きく下がってしまうのです。

とくに石炭掘りという、肉体労働に頼らざるを得ない、やや単調な仕事の繰り返しだけに、
“スカブラ”がいなくなってしまうと、今まで同じ時間でやれていた仕事が全くできなくなってしまいます。

加えて、“スカブラ”という「潤滑油」がいなくなってしまったので、
炭鉱夫たちの人間関係もギスギスするようになり、さらに効率が落ちてしまったといいます。
 
危険と隣り合わせの炭鉱で、“スカブラ”は仲間を癒し、
仲間の心をつなぐ、欠かせない「潤滑油」だったのです。 
9人しか働かず、1人がブラブラとサボっているほうが、
10人があくせく働くよりも、効率的で仕事がはかどっていた・・・
こんな不思議な現象なのです。 

すなわち、「効率優先」「合理化」に欠かせなかったのが
実は“スカブラ”という職業?であり、彼らの意外な役割だったというわけです。 

■ あなたの会社に“スカブラ”は?

1月早々、そんなゆとりはないんだぞ・・・と、怒られてしまうかもしれません。
 
しかしながら、経済効率・合理化が第一義的に叫ばれる現代社会だからこそ、
会社を支えてくれるのは“ひと”であることだけは、年初にあたって再確認しておきたいものです。 

あまり効率一辺倒ではないけれど、その人がいるととても癒される・・・

エレベーターで一緒に乗り合わせると、思わず居心地が良くて、話しかけたくなる・・・

効率重視の時代だからこそ、実は心のゆとりや社員間の潤滑油になってくれる
“現代版スカブラ”が必要なのかもしれません。 


少なくとも“現代版スカブラ”の存在意義のわかる、鷹揚な経営者には、
きっと多くの社員さんが慕って付いてきてくれるように思います。

いかがでしょう。少しは、肩の力が抜けましたでしょうか?

今年一年、経営を考えるときの頭の片隅に“スカブラ”の4文字、
置いていただければ嬉しいかぎりです。

きっと、“ひと”にやさしい経営につながることかと・・・


         平成28年(2016年) 1月 
                      山  崎     泰

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