宮田総合法務事務所

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家族信託が意図せず終了した場合の財産の行方

16.09.01 | 暮らし・人生にお役に立つ情報

家族信託の受託者が急死し、次の受託者が見付からないまま1年が経過した場合や、委託者兼当初受益者の死亡により「受託者=単独受益者」となりそのまま1年が経過した場合には、信託法第163条の規定により信託が“強制終了”してしまいます。


この場合、信託財産の行方はどうなるのでしょうか?



受託者が急死し、次の受託者が見付からないまま1年が経過した場合や委託者兼当初受益者の死亡により受託者=単独受益者となりそのまま1年が経過した場合には、信託法第163条の規定により信託が“強制終了”してしまいます。


 この場合、信託財産はどうなるのでしょうか?


 信託の強制終了により、信託財産は、所有権財産に戻ることになりますが、
この財産が誰のものになるか(誰に帰属するか)が大きな問題です。

根拠は、信託法第182条にあります。
信託契約書の中に「残余財産の帰属先指定」の条項があれば、
その内容に従った形で財産が帰属します(信託法第182条第1項)。

もし、残余財産の帰属先の指定が無い場合や指定された者が
権利を放棄した場合、「委託者又はその相続人その他の一般承継人」
帰属権利者として扱われます(同条第2項)。

さらに、「委託者又はその相続人その他の一般承継人」に該当する者も
いなかったり、その者が権利を放棄した場合は、最終的には
「清算受託者」に帰属することになります(同条第3項)。

つまり、信託終了時点における受益者が当然に残余財産を
もらえることにはなりませんので注意が必要です!

 

例えば、委託者兼当初受益者がA、受託者をBとして信託契約を
締結したとしましょう。

数年後、Aが死亡して信託受益権が全てBに移ったとします。
そうなると、Bが受託者=単独受益者となりますので、
このままの状態が1年間続くと、信託は強制的に終了することになります。
そして、信託契約の中で、残余財産の帰属先の指定の条項が
無かったとすると・・・。

もしBが亡きAの単独相続人であれば、信託法第182条第2項により
「委託者又はその相続人その他の一般承継人」であるBに信託財産が
帰属します(この場合はBが受益権を取得した際に既に相続税が
課税されているので、信託終了時には課税関係は一切生じません)。

しかし、Aの相続人が、Bを含めて複数いる場合、Aの相続人間で
信託の残余財産の分割協議をしなければならなくなります。

また、BがそもそもAの相続人でなければ、Bは信託終了により
完全に財産権を失うことになるでしょう。

しかも、税務的観点からすると、信託契約が強制終了してしまうと、
受益者Bの生存中にBからB以外の残余財産の権利帰属者に
財産権が移転したことになり、「みなし贈与」として贈与税が
課税されることになります。


つまり、委託者Aとしては、最終的にB側に資産を遺してあげたい
と思っていたとしても、残余財産の帰属先指定の条項を
入れ忘れていた場合には、Bに財産が渡らない上に
贈与税課税も受け財産も大きく減らすこともあり得る
という非常に怖い事態が起こり得るのです。

結論として、残余財産の帰属先指定の条項は、
最も重要な信託条項の一つと言え、絶対に見逃しては
ならない条項であるということです。

 

通常は、家族信託の契約の中で、信託が終了した場合(強制終了も合意解除も
信託終了事由の発生による終了も含め)の残余財産の帰属先指定の条項を
設けておきますので、実務上問題になることはあまりないでしょう。

しかし、もし一般の方が専門職に相談もせずに見よう見まねで信託契約を
作成したり、家族信託の実務をよく知らない専門職が拙いアドバイスを
している場合などには、このように「残余財産の帰属先指定」の条項を
置き忘れる事態は起こり得ます。

 

やはり家族信託の契約は、実務に精通した法律専門職に必ずご相談されることを
強くお勧めいたします!


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