大阪プライム法律事務所

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テレビCMで流れる「B型肝炎給付金支給制度」とは

16.01.12 | 企業の法制度

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最近、テレビCMで、過去の集団予防接種等により多くの方がB型肝炎に感染した可能性があり、それら救済対象の方に国から給付金が支払われるとして、その支給手続きを委任しませんかという、特定の法律事務所のコマーシャルが大量に流されています。そのCMに多少の違和感を持つ方もおられるかもしれません。

こういった感染被害者への救済については、それ求めて活動した全国の被害者弁護団の長い戦いがありました。その苦難の末の活動の成果として、国との間で、全国の感染被害者に対して国から給付金を支給するという基本合意が成立し、それに沿った特別法ができたのです。そこでは、個別の給付の可否認定は、各地の裁判所での審理と和解において実施することとしたため、請求のためには個別に国家賠償請求訴訟の提起が必要となったのです。 

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■訴訟提起と提訴期限という壁
このようにして、多くの未救済の被害者へ支給金が支払われるようになったことは、被害者救済という意味ではまことに素晴らしいことです。しかし、それには訴訟提起という壁と、提訴期限という壁があるのでした。

これが、上記のように、これまで血のにじむ思いで日夜活動してきた弁護団とは異なる法律事務所が、TVのCMで大々的に依頼を勧誘し始めたわけです。救済される方が一人でも多くなるという意味ではよいとしても、救済に道をつけた弁護団の事務所を横目に、そのおこぼれに預かり大量処理を図ろうとする事務所の出現には、同業としては複雑な気持ちがします。特に、これら弁護団は、肝炎患者の方々が安心して治療を受けられる恒久対策の確立に向けて活動を行っていることや、二度と同じような被害が繰り返されないために事件の真相究明や再発防止のための活動も行っていることを考えると、その思いはさらに強くなります。

■もう少し詳しい経緯
国内のB型肝炎の持続感染者は、110~140万人存在すると推計され、そのうち、昭和23年から昭和63年までの間に受けた集団予防接種等の際に、注射器が連続使用されたことが原因でB型肝炎ウイルスに持続感染した方が45万人程度と推定されています 。

こういった感染被害者に対する国の責任について、これを認める最高裁判所の判決が、平成18年6月に出されました。しかし、そのときの原告が、「同じ被害者全体の救済対策」を取るように国に求めたものの、国はこれを拒否したため、全国の被害者・弁護団が、平成20年より、全国10地裁で集団提訴して戦ってきました。

■基本合意の成立
全国で提訴して2年後、札幌地裁において、全国の原告および将来提訴原告を対象とした和解協議が、全国原告団と国との間で始められ、提訴後3年を経過した平成23年5月13日、札幌地裁の和解所見を原告・国双方が受諾することを正式に確認しました。

その後に、裁判所が全国原告団と国とを仲介した結果、同年6月28日、国(総理大臣)の正式な謝罪を受け、国との間で基本合意書が調印されたのです。

■特別法の制定
さらに、他の被害者への対応も含めた全体の解決を図るため、基本合意書の内容に沿った「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」(特措法)が制定され、平成24年1月13日から施行されました。これによって、裁判上の和解等が成立した方に対し給付金等を支給することになったのです。

なお、民法において20年という請求期限の壁(除斥期間)が経過してしまった、死亡・肝がん・肝硬変(重度)、肝硬変(軽度)の方との和解については、平成27年3月に、国との間で「基本合意書(その2)」が締結されました。 

■給付金の仕組みの概要
(1)対象者
給付金の支給の対象となる方は、7歳になるまでに、集団予防接種等(昭和23年7月1日から昭和63年1月27日までの間に限る)の際の注射器の連続使用により、B型肝炎ウイルスに感染した方と、その方から母子感染した方(これらの方々の相続人を含む)です。

(2)対象者の認定
給付の対象者の認定は、裁判所による和解手続き等によって行います。このため、給付金の支給を受けるためには、国に対して損害賠償を求める訴訟の提起または調停の申立等を行い、支給対象者として認定される必要があります。

(3)支給金額
●死亡・肝がん・肝硬変(重度)=3,600万円
●肝硬変(軽度)=2,500万円
●慢性B型肝炎 =1,250万円
●20年の除斥期間が経過した慢性B型肝炎の方
  
現在も慢性肝炎の状態にある方等=300万円
  
現在は治癒している方=150万円
●無症候性キャリア=600万円
●20年の除斥期間が経過した無症候性キャリア(特定無症候性持続感染者)=50万円

(4)訴訟手当金
上記給付金に加え、訴訟手当金として、
•訴訟等に係る弁護士費用(上記給付金額の4%に相当する額)、
•特定B型肝炎ウイルス感染者であることを確認するための検査費用
が支給されます。 

(5)特定無症候性持続感染者に対しては、
•慢性肝炎等の発症を確認するための定期検査費、母子感染防止のための医療費、世帯内感染防止のための医療費、定期検査手当も支給されます。

(6)追加給付金
給付金の支給を受けた方の病態が進展した場合には、既に支給された給付金との差額分を追加給付金として支給することにしています。 

■B型肝炎訴訟の手引きと訴訟に必要な書類
B型肝炎ウイルスの感染経路は、集団予防接種等における注射器の連続使用以外にもさまざまなものが考えられるため、集団予防接種等における注射器の連続使用が原因でB型肝炎に感染したことの確認が必要です。この確認は、裁判所における司法手続(裁判所の仲介の下での和解協議)の中で、「基本合意書」に定めた救済要件に合致するかどうか、証拠に基づき判断されることになります。

この認定を受け、給付金を受け取るためには、国を相手とする国家賠償請求訴訟を提起して、裁判所の仲介の下で和解協議を経て、国と和解した場合に、社会保険診療報酬支払基金に申請書を提出するという手順になります。 

■期限
特措法に基づく給付金の請求は、平成29年1月12日までに訴訟提起などをしておく必要があり、請求期限が決められています。

■詳細について
厚生労働省「B型肝炎訴訟について(救済対象の方に給付金をお支払いします)」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/b-kanen/

 

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