TFSコンサルティンググループ/TFS国際税理士法人 理事長 山崎 泰

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『一流には妥協がない!』~帝国ホテル・定保英弥社長の想い~

17.01.13 | 経営全般

■ 本年も、どうぞ宜しくお願いいたします。

昨年、松下政経塾以来の恩師からもらったメール。
「定保社長と食事をしながら、帝国ホテルのサービスをテーマに学んでみないか」とのお誘い・・・

 「経営者には、是非とも一流に出会って欲しい。
 一流には妥協がない。
 まあ~この辺でと妥協しているうちは、決して一流ではない。
 経営者にとって大切なのは、
 小手先を弄して手取り早く儲ける方法論ではない。

 なによりも“経営の根本”が大事」

という趣旨で開催された経営者リーダーセミナー。

2016年12月8日、日本有数の老舗企業である帝国ホテルのサービスを支える根本を、定保社長を囲んで学んだひと時・・・

新年にあたり、是非とも皆さまと共有させていただきたいと思い、ご紹介させていただきます。

   ■ 126年前、日本の迎賓館として誕生

帝国ホテルは、127年前の1890年11月3日、今と同じ内幸町の地に開業。

当時の井上馨・外務大臣の提唱で、日本の迎賓館として誕生。
1890年といえば、かつて日本史で覚えた「大日本帝国憲法施行の年」・・・
歴史のほどが偲ばれます。


設立当時の資本金は26万円。
株主数は21名。
筆頭株主は宮内省。
初代会長は渋沢栄一翁。
かの鹿鳴館と、ちょうど隣り合わせ。
鹿鳴館での西洋的な社交を終えた後の宿泊所としても賑わったといいます。

余談ながら、渋沢栄一翁の五代目子孫の渋沢健氏も、
定保社長と同じ昭和36年生まれということもあり、
よく帝国ホテルを利用されると聞いて・・・

エッ、ということは私も同じ年!?

戦後最年少の若さで、帝国ホテル社長に就任した定保氏。
学習院卒の定保氏とは、あまりにも生まれ育ちが違う気がしますが、
互いに同じ年と知って、急に親近感が増すのも不思議です。

1923年9月に、フランク・ロイド・ライド設計で有名になった新館建設。
9月1日の開業披露パーティー準備中に発生した関東大震災をも乗り越えて、
1950年代までは、帝国ホテルのほぼ独り勝ちだった時代が続きます。


■ 「規模拡大」せず、『質の向上』を目指す

現在の帝国ホテル・グループ・・・国内は東京・大阪・上高地。
海外は、わずかにハワイに提携ホテルが1か所のみ。

東京は客室931室、宴会場30、レストラン・バー20、
従業員数約1,800人。
大阪は381室、従業員数約500人。
上高地は74室、従業員数約100人。
東京の売上は428億円、グループ全体売上553億円。
ということは、客室1に対して、なんと2名の従業員が従事している
贅沢な計算!?

2020年東京オリンピックも控えて、インバウンドに沸く国内経済のなか、
多店舗化に走るホテルも少なくありません。
しかし、そんなホテル業界にあって、
あえて「規模拡大」せず、徹底して『室の向上』を目指すのが、
帝国ホテルの大きな特徴でもあります。
定保社長は、
「規模を拡大させると、質を確保できない。
 日本の迎賓館として発祥した“帝国ホテル・ブランド”を
 希釈させてしまう」

とまで断言されます。 


■ 徹底した“サービス向上”で、競合を生き抜く!

帝国ホテルでのセミナーの10日後、
親族の傘寿祝いに訪れた、東京メトロと直結する「アマンホテル」・・・

何度となく、この地下道を行き来しながら、
通り過ぎ続けたビルの上層階がホテルとは、まったくもって気づかず、
東西線を降りてから(目の前といわれる)ホテル入口を探し、
ロビー階に行き着くまでに10分近くもかかってしまう、なんともお恥ずかしい事態。。。

日本人が通り過ぎてしまうほど、次から次へと進出ラッシュが続く外資系ホテルの攻勢に、
さすがに老舗といえども帝国ホテルも厳しいのではと思うことも。

しかし、そんな外資系ホテルとの競合のなかにあって、
「帝国ホテル東京は、外国人客5割を目指す!」と言い切る定保社長。
そのためにも、
「従業員のモチベーションを上げて、徹底したサービス向上を図り、リピーター率4割を維持し続ける」
と意気込まれます。


実は、帝国ホテルが始めたホテル・サービスが三つあるということも、初めて知りました。

 ① ホテルランドリー 
    帝国ホテルには“洗濯部”まであり、館内に“洗濯場”まで設けてランドリーに注力し続けた歴史があります。
    しかも外注せずに、帝国ホテル社員が洗濯するところがスゴイのです。
    すぐにクリーニングに出せるので、ネクタイのシミまでキレイに取れる技術が秀逸とか。

 ② ホテルウエディング 
    1923年、関東大震災で多くの神社が倒壊した際、
    神前挙式~披露宴までというホテル館内での一貫した運営サービスを着想したというので、
    まさに筋金入りです。

 ③ ホテルバイキング 
    1958年、バイキングスタイルで食べ放題メニューを開始。
    今でこそ巷に溢れる「バイキング」「食べ放題」ですが・・・
    帝国ホテルが発祥の地とは驚きです!


■ “一流”を支える三要素

帝国ホテルの“一流”を支える三要素・・・定保社長は、以下を挙げられます。

 ① ハードウエア(建物、設備)
 ② ソフトウェア(サービスの仕組み、組織)
 ③ ヒューマンウェア(従業員)

とりわけ、『ヒューマンウェア』

やはり最後の決め手は、“人に尽きる”と強調されます

紹介していただいた、いくつかのエピソード・・・かなり心惹かれます。

 ★『ポケットマネーは1万円!』
 帝国ホテルのドアマンは全員、ポケットに千円札5枚+5千円札を忍ばせているとのこと。
 タクシー到着時の両替用にとどまらず、両替する間もなく空港から直行した外国人客向けに、
 外貨から円貨へと、サッとそっと両替するのだそうです。

 『紙クズはもう一泊します!』
 大事なものを部屋に忘れてしまった宿泊客のために、
 全室のゴミ箱のゴミは、即日処分せずに、一泊留め置くとのこと。
 誤ってゴミ箱に落とした、結婚指輪が見つかったこともあるというので。。。
 その時の感動が目に浮かびます。

 『二度目のモーニングコールもあります!』
 モーニングコールは、機械ではなくオペレーターの声で・・・
 なおかつ、二度寝してしまいそうな宿泊客には、
 オペレーターの判断で、数分後に再度モーニングコール。

これらのサービスは、“現場力”を大事にするなか、ツーマッチなサービスにならないように配慮しながらも、
お客様にいかに喜んで満足していただけるか・・・
それぞれドアマン、客室係、オペレーターから自発的に提案されたものばかりと聞きました。
まさに“一流”を根幹で支える“ヒューマンウェア”を感じるのです。


■ “一流”を目指すうえでの実行テーマ

“さすが帝国ホテル!”と言っていただけるように、“一流”を目指すうえでの実行テーマは、

「挨拶」「清潔」「身だしなみ」「感謝」「気配り」
「謙虚」「知識」「創意」「挑戦」
の9つ。
職種は違っても、どれも大いに参考になる項目ばかりです。

そんなテーマを実行しているかを、社内外からの評価をもとに選んだ年間大賞!
「お客さまの姿は見えなくても、感謝の心をお伝えしたい」との
メッセージとともに、ルームサービス係が、誰もいない廊下で、
客室のドアに向かって深々とお辞儀をしている姿の写真。
ルームサービスの後、たまたま宿泊客がスコープから外を覗いたら、
深々とお辞儀しているルームサービスの姿に感動して、サービス受賞大賞にいたったとのことです。

『御礼をする仕草、動作を通じて、心からの気持ちを伝える』・・・
そんなサービスも、まさにルームサービス係が自ら発案して、全員が共有して行っているサービスとのこと。


■ 100-1=0

最後に、どんなに100点のサービスを築き上げても、
心ないサービスひとつでお客さまの信頼を失えば、99にはとどまらず0に陥ってしまう。

そんな緊張感をもって“一流”であることに、全社員が努力し続けているというのです。


業種こそ違えども、会社として経営者として、
今年一年間、そんな気概と緊張感をもって、それぞれの“一流”を目指したいものです。

どうぞ今年も一年間、宜しくお願い申し上げます。


        平成29年(2017年)1月
                  山  崎   泰

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