テントゥーワン税理士法人

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「不相当に高額」な役員退職金とは?

14.08.13 | オリジナルメルマガ 税金編

〇「不相当に高額」な役員退職金の損金不算入


法人が役員に支給した退職金のうち、「不相当に高額」な部分は損金に算入されません。

では、「不相当に高額」とは一体いくらになるのでしょうか?

適正な退職金の額は、次のいずれかの方法によって算出されます。
これを超える部分が、「不相当に高額」とされてしまいます。


 ①功績倍率法

【退職時の役員報酬月額×勤続年数×功績倍率=適正な退職金の額】

 

②一年あたり平均額法

【比較法人の1年あたり退職金額(※)の合計÷比較法人の数×その役員の勤続年数=適正な退職金の額】
※1年あたり退職金額=退職金額÷勤続年数

 


1年あたり平均額法は、退職時の役員報酬月額がない場合など、
功績倍率法で算出した額が適切でない時に使用します。


では、功績倍率法による計算を行うにあたって、「功績倍率」は何倍とするのが適正でしょうか?

 


〇功績倍率について

功績倍率は、次の算式で算出されます。
【退職金の額÷(退職時の役員報酬月額×勤続年数)=功績倍率】

功績倍率については、法人税法等には具体的な適正値は定められていませんが、
一般的に2~3倍程度が妥当と言われています。
これは判例で具体的な数値が示されたためです。

【昭和60年9月17日最高裁判決より】
社長3.0  専務2.4 常務2.2 平取締役 1.8 監査役 1.6
(昭和47年6月20日時点における全上場会社1,603社の実態調査から算出された功績倍率の平均)


しかし下記の判例から、正しい方法は類似法人の功績倍率の平均値と比較することだといえます。
そのため、上記の判例の数値よりも低い功績倍率が採用された判例もあります。

【平成25年7月18日東京高裁判決より】
退職金6,032万円のうち、適正額は類似法人の功績倍率(全国7千社の役員退職金が収録されているデータから
3法人を抽出)のうち最高値である3.0を用いて計算すべきと主張するが、
特別な事情のない限り平均値を用いるのが妥当であるため、
類似法人の功績倍率(近隣の同業類似法人3法人を抽出)の平均値1.18で計算し、
適正額は490万8800円とされた。


【平成5年6月29日高松地裁判決より】
退職金3500万円について、類似法人の功績倍率(同業類似法人6法人を抽出)の平均値である1.4を用いて
計算し、適正額は115万5000円とされた。

また、類似業種の功績倍率の平均値が逆に2~3倍よりも高い場合は、
高い方の功績倍率が用いられた例もあります。
(平成16年6月15日国税不服審判所裁決では、類似業種の功績倍率の平均値4.7を採用)


以上より、功績倍率については次のことがいえます。

①功績倍率は基本的に類似法人の功績倍率の平均値を用いる。
ただし、類似法人のデータは税務署側が用意するため、事前に確実な平均値を算定しておくことは困難である

②以下の数値は功績倍率の目安となるが、あくまで目安であり常に適正とはいえない
【社長3.0  専務2.4 常務2.2 平取締役 1.8 監査役 1.6】


功績倍率の適正値については法人によって異なるため、具体的な数値の明言はできません。
実務上の慣習である2~3倍という功績倍率も、確実とは言えません。
役員の方に退職金を支給される際は、是非一度ご相談下さい。


功績倍率法により退職金の額を計算するには、他にも退職時の役員報酬月額、勤続年数について
考慮する必要がありますが、それは次回のメルマガでご説明致します。






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