借金・債務整理で任意整理を選択したものの、様々な理由から途中で返済が苦しくなることがあります。今回のニュースレターでは、任意整理の途中で返済が苦しくなった場合の対応について、ご説明させていただきます。
1 任意整理の途中で返済が苦しくなる理由
任意整理の途中で返済が苦しくなる理由としては、失業、収入の減少、支出の増加、怪我・病気などが考えられます。また、最初から継続困難な返済計画が立てられている例も散見されます。任意整理の途中で返済が苦しくなった場合、返済を滞納することには大きなリスクがあり、一方で生活を立て直すための様々な対処法がありますので、放置せずに専門家である弁護士にご相談いただくことが大切です。
2 任意整理の途中で返済を滞納した場合のリスク
任意整理の途中で返済を滞納した場合、債権者から一括請求を受けるリスクがあります。借金の契約では、一定以上の滞納があれば残額を一括請求するという「期限の利益喪失条項」が定められているのが通常です。そして、一括請求を受けたあとも放置していると、債権者から訴訟(裁判)・支払督促という法的措置をとられることがあります。訴訟(裁判)・支払督促が起こされると、裁判所から書類が送られてくるのですが、これを放置すれば、支払命令が確定してしまいます。そうなると、最終的には給料・預貯金等が差し押さえられ、生活が立ち行かなくなるおそれがあります。
3 任意整理の途中で返済が苦しくなった場合の対処法
任意整理の途中で返済が苦しくなった場合には、様々な対処法が考えられます。任意整理の枠内での対処法として、①再和解(任意整理で一度和解した債権者と、返済条件について再交渉し、もう一度和解をすること)、②追加介入(当初の任意整理では対象外とした債権者を、任意整理の対象に加えること)があります。また、③自己破産(一定の生活用品・金銭を除く財産を失う代わりに、借金を免除してもらう手続。裁判所を利用して行う)、④個人再生(住宅などの財産を保有したまま、借金の額を大幅に減額し、原則として3年・最大5年で分割返済する手続。裁判所を利用して行う)に切り替えるという選択肢もあります。どの対処法を採用するかは、借金の総額、収支の状況、財産の状況、ご本人のご希望など、様々な要素を考慮し、ご本人にとってベストの選択を検討していくこととなります。
4 弁護士にご相談ください
当事務所では、任意整理の途中で返済が苦しくなった場合の対応など、様々なパターンの借金・債務整理について、豊富な解決実績がございます。皆様の周りに借金問題でお困りの方がいらっしゃいましたら、お気軽に当事務所をご紹介ください。
交通事故の被害に遭って怪我をした場合に、頭・顔・首や上肢(腕・手)・下肢(足)に傷痕が残ることがあります。交通事故でこのような傷痕が残った場合の損害賠償には、特有の問題がありますので、以下でご説明させていただきます。
1 外貌醜状による後遺障害
交通事故の被害により頭・顔・首や上肢・下肢の露出面(日常の生活で目に見える部分)に傷痕を残すことを「外貌醜状」と言います。外貌醜状については、傷痕の程度により、以下のような後遺障害等級が認定される可能性があります。
頭・顔・首 | 7級12号 | 外貌に著しい醜状を残すもの |
9級16号 | 外貌に相当程度の醜状を残すもの | |
12級14号 | 外貌に醜状を残すもの | |
上肢・下肢 | 14級4号 | 上肢の露出面に手の平の大きさの醜いあとを残すもの |
14級5号 | 下肢の露出面に手の平の大きさの醜いあとを残すもの |
2 外貌醜状による後遺障害逸失利益
後遺障害により労働能力の喪失がある場合には、将来の収入の減少に対する賠償である「後遺障害逸失利益」を請求することができます。ところが、外貌醜状の場合には運動能力が失われていないことが多く、後遺障害逸失利益の請求の可否は保険会社との間で争いになりがちです。この点、職業、年齢、性別、将来の昇進・昇格・昇給および転職の可能性を考慮し、外貌醜状を理由に配置転換されたり、職業選択の幅が狭められたりするなど、就労・稼働に制約・影響を及ぼし得る場合には、後遺障害逸失利益が肯定される傾向にあります。
3 外貌醜状による後遺障害慰謝料
後遺障害が残存した場合には、後遺障害の内容・程度により精神的苦痛に対する賠償である「後遺障害慰謝料」を請求することができます。裁判基準による等級ごとの後遺障害慰謝料の標準額は、7級が1000万円、9級が690万円、12級が290万円、14級が110万円です。また、上記の後遺障害逸失利益と関連して、外貌醜状による労働への直接的な影響までは認められないものの、周囲の視線を気にする等により対人関係・対外的活動に消極的になるなど、間接的に労働へ影響を及ぼす場合には、後遺障害慰謝料の増額要素となり得ます。この場合に増額される後遺障害慰謝料の額は、100万円~200万円程度であることが多いように見受けられます。
4 弁護士にご相談ください
交通事故による外貌醜状の場合の損害賠償には、以上のような様々な問題があります。交通事故についてお困りの場合には、お気軽に当事務所にご相談ください。
不倫相手の配偶者から慰謝料請求をされた際に、脅迫・嫌がらせを受けるケースが散見されます。皆様の周りにも、この種のトラブルに巻き込まれる人がいるかもしれません。以下では、このようなケースでの対処法について、ご説明させていただきます。
1 脅迫・嫌がらせのパターン
脅迫のパターンとしては、怒鳴られる・殴られる、「不倫の事実を周囲に知らせる」と言われる、複数で取り囲む・胸ぐらを掴むなどして「念書にサインしろ」「慰謝料を支払え」と要求される、「念書にサインする/慰謝料を支払うまで帰さない」と言われる、などです。嫌がらせのパターンとしては、職場に告げ口される、親・家族に告げ口される、インターネットで拡散される、無言電話をかけられる、などです。
2 脅迫・嫌がらせの違法性
たとえ不倫慰謝料を請求できる立場であったとしても、違法行為が許されるわけではありません。暴力を振るえば暴行罪、「不倫の事実を周囲に知らせる」などと危害を加えることを告知すれば脅迫罪、暴行・脅迫の手段により念書にサインさせたり慰謝料を支払わせたりすれば強要罪・恐喝罪が成立する可能性があります。また、部屋に閉じ込めるなどすれば監禁罪、不倫の事実を不特定・多数の人に向けて公表したり罵倒したりすれば名誉棄損罪・侮辱罪が成立する可能性があります。このような犯罪に該当する場合に加え、不倫・浮気の事実を第三者に知らせる行為は民事上の不法行為に該当し、損害賠償責任が発生する可能性があります。
3 脅迫・嫌がらせを受けた場合の対処法
不倫相手の配偶者からの脅迫・嫌がらせに対しては、不当な要求を拒否する、嫌がらせの中止を求めるのが基本的な対応となります。録音やLINE・メールなど、脅迫・嫌がらせの証拠を確保することも大切です。そして、脅迫・嫌がらせをしてくる相手方との示談交渉は精神的負担が大きいと考えられますので、弁護士に対応を依頼することもご検討いただくとよいでしょう。脅迫・嫌がらせが繰り返されたり、大きな実害が生じたりした場合には、こちらから慰謝料を請求することも検討しましょう。あまりにひどい脅迫・嫌がらせに対しては、警察に相談することや、刑事告訴を行うことも選択肢となるでしょう。
4 弁護士を活用するメリット
専門家である弁護士に対応を一任することにより、脅迫・嫌がらせを止めさせることが期待できますし、示談交渉の精神的負担からも解放されます。また、混乱した事態を収拾し、スムーズに適正な解決を図ることも期待できますので、皆様の周りに不倫相手の配偶者との交渉に苦慮している方がいれば、当事務所をご紹介ください。
自分が遺産のほとんどを取得し、他の相続人にはわずかな金銭の支払で終わらせようとするなど、遺産を独り占めしようとする相続人がいるケースがあります。今回のニュースレターでは、このようなケースでの対処法について、ご説明させていただきます。
1 法定相続人と法定相続分
配偶者は必ず相続人となり、子(亡くなっていれば孫)が第1順位の相続人となります。子がいなければ直系尊属(父母。亡くなっていれば祖父母)が第2順位の相続人となります。直系尊属もいなければ兄弟姉妹(亡くなっていれば甥姪)が第3順位の相続人となります。そして、例えば、相続人が配偶者と子3人である場合、法定相続分は配偶者が2分の1、子が6分の1ずつとなります。法定相続人は複数いることが多く、特定の相続人に全財産を相続させる旨の遺言書がある場合などを除いては、相続人の誰かが一方的に遺産を独り占めすることは認められないのが原則です。
2 特別受益と寄与分
遺産を独り占めしようとする相続人は、他の相続人が生前贈与などの特別受益を受けていること、または自身に家業従事・介護などの寄与分が認められることを主張してくるかもしれません。しかし、ご自身だけでなく相手方も特別受益を受けているかもしれませんし、被相続人の財産の形成・維持に寄与したこと、家業従事・介護がほとんど無報酬であり相当の負担を伴うものであったことなど、寄与分の要件についても慎重な検討が必要です。特別受益・寄与分により取り分がほとんどなくなることはあまりなく、相手方の主張を争えばご自身の取り分を守れるケースが多いです。
3 遺留分侵害額請求
特定の相続人に全財産を取得させる旨の遺言書がある場合でも、兄弟姉妹・甥姪を除く法的相続人には、最低限の取り分である遺留分が保障されています。遺留分侵害額請求により、全財産を取得する相続人に対して一定割合の金銭請求が可能です。
4 預金の使い込み
遺産を独り占めしようとする相続人が被相続人の生前に預金を使い込んでいたという事例も少なくありません。相続人の誰かが被相続人の預金を不当に使い込んでいたのであれば、他の相続人は法定相続分に応じて返還・賠償を請求することができます。
5 遺産を独り占めしようとする相続人がいる場合の対処法
遺産の独り占めを許す内容の遺産分割協議書にサインしたり、言われるままに相続放棄したりしてしまうと、後々ご自身の取り分を請求することができなくなります。ご自身の取り分を主張することが大切ですし、もし相手方が聞く耳を持たない場合には、専門家である弁護士に遺産分割手続の対応をご依頼いただくのがよいでしょう。
インターネット掲示板やSNSで誹謗中傷の被害を受ける事案が多発しています。ネット誹謗中傷に対する対応としては、投稿者の住所・氏名等を特定し、損害賠償請求・刑事告訴などの法的措置を行うことが考えられます。今回のニュースレターでは、投稿者の住所・氏名等を特定する発信者情報開示請求の手続について、ご説明いたします。
1 インターネット上の投稿の仕組み
インターネット掲示板やSNSなどのウェブサイトを運営・管理するプロバイダ業者を「コンテンツプロバイダ」と言います。インターネット通信サービスを提供しているプロバイダ業者を「経由プロバイダ」と言います。投稿者は、経由プロバイダを経由し、コンテンツプロバイダが管理するウェブサーバに対し、投稿内容に関する情報を送信する、というのがインターネット上の投稿の仕組みです。
2 コンテンツプロバイダに対するIPアドレス等の開示請求
まずは問題のウェブサイトのコンテンツプロバイダを特定し、発信者情報開示請求を行います。コンテンツプロバイダは、投稿者のIPアドレスや送信日時(タイムスタンプ)等の情報しか保有していないのが通常です。そこで、コンテンツプロバイダに対しては、IPアドレス等の開示請求を行うこととなります。コンテンツプロバイダは任意の開示には応じないことが多く、経由プロバイダのアクセスログが比較的短期間で削除されてしまうこともあるため、発信者情報開示仮処分という裁判手続の申立てを行うのが通常です。裁判所でこの仮処分の申立てが認容されれば、投稿者のIPアドレス等の情報を入手することができます。
3 経由プロバイダに対する住所・氏名等の開示請求
次にIPアドレスから経由プロバイダを特定し、発信者情報開示請求を行います。経由プロバイダは、投稿者の住所・氏名等の情報を保有しています。そこで、経由プロバイダに対しては、住所・氏名等の開示請求を行います。経由プロバイダも任意の開示にはまず応じませんので、裁判所に発信者情報開示請求の民事訴訟を提起するのが通常です。この民事訴訟で勝訴判決を得れば、投稿者の住所・氏名等の情報を入手することができます。これにより、投稿者に対する法的措置が可能となります。
4 発信者情報開示命令の制度について
2022年10月1日に施行されたプロバイダ責任制限法の改正により、上記の発信者情報開示請求の手続に加え、発信者情報開示命令という新たな裁判制度が創設されました。発信者情報開示命令の制度については、別の機会にご説明いたします。
発信者情報の開示は、手続が非常に複雑であり、迅速な対応を要し、権利が侵害されたことの主張・立証など困難な問題もあるため、当事務所にまずはご相談ください。
交通事故によりご家族がお亡くなりになった場合、被害者の法定相続人等は加害者に対して損害賠償を請求することができます。死亡事故における損害賠償金のうち、大きな比重を占めるのは慰謝料と逸失利益です。以下でご説明させていただきます。
1 死亡慰謝料
慰謝料とは、死亡事故による精神的苦痛に対する損害賠償金です。①亡くなった被害者本人の慰謝料と、②遺族の慰謝料の2種類のものがあります。①亡くなった被害者本人の慰謝料は、その法定相続人に請求権が相続されることとなります。②遺族の慰謝料は、被害者の近親者には、上記①とは別個に固有の慰謝料が認められます。法律上は被害者の父母、配偶者、子が規定されています。それ以外にも、例えば内縁の夫/妻や兄弟姉妹等も、被害者との間に特別の親密な関係にある場合には、固有の慰謝料請求権が認められることがあります。裁判基準による死亡慰謝料の金額(上記①②を合わせた合計額)は、一家の支柱(被害者が一家の生計を支える立場にあった場合)で2800万円、母親・配偶者で2500万円、それ以外(独身者・子ども等)で2000万円~2500万円が標準額とされます。危険運転、飲酒運転、ひき逃げなどの悪質な事故の場合には、さらに増額される要素となります。これに対し、保険会社は1500万円前後の提示をしてくることが多いですので、保険会社の提示を鵜呑みにするのではなく、まずは弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
2 死亡逸失利益
逸失利益とは、死亡事故により失われた将来の収入を賠償するものです。給与所得・事業所得に対する逸失利益はもちろん、家事従事者(主婦/主夫)の場合には家事労働に対する逸失利益も認められます。学生・幼児については就労年齢以降の分の逸失利益が認められ、失業者についても就労の能力・意思がある場合には逸失利益が認められます。年金受給者については、年金収入に対する逸失利益も認められます。逸失利益の金額は、「基礎収入(年額)×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対するライプニッツ係数(年3%の中間利息控除のための係数)」により算出されます。基礎収入は、事故前の現実の収入額を基準とするのが原則ですが、将来的な増収の可能性も考慮されます。学生・幼児については全年齢の平均年収を用いるのが通常であり、家事従事者の場合には女子の平均年収が採用されます。生活費控除率は一家の支柱・男子・女子の区分により30%~50%とされ、年金部分については60%程度とすることが多いです。就労可能年数は原則67歳までとし、高齢者は67歳までの年数と平均余命年数の2分の1のいずれか長い方を採用します。年金部分については平均余命年数です。逸失利益についてご不明のことは弁護士にご相談ください。
ご自身が亡くなったあとの相続問題に備える生前対策として、遺言書の作成を検討している方もいらっしゃると思います。今回のニュースレターでは、公正証書遺言の作成と遺言執行者の指定について、ご説明させていただきます。
1 公正証書遺言の作成について
口頭や録音による遺言は法律上有効とは認められず、必ず遺言書という文書の形で残す必要があります。遺言書には、主に自筆証書遺言と公正証書遺言の2つがあります。自筆証書遺言とは、本人が本文・日付・氏名をすべて自筆で書いて(遺言書に添付する財産目録については、自筆による必要はありません。ただし、自筆によらない財産目録については、各ページに署名・押印することが必要です)押印することにより作成します。公正証書遺言は、公証役場で遺言書を作成するものです。証人2名の立ち合いのもとに、ご自身が希望する遺言の内容を公証人に伝えて証書を作成してもらい、署名・押印するという手続により作成します。公正証書は、法律の専門家である公証人(多くは元裁判官・元検察官)が作成することから、遺言書の内容が不明確なために無効となるリスクがほとんどありませんし、公証役場に遺言書の原本が保管されるため、偽造・隠匿・改ざんなどのリスクを回避できるなどのメリットがあります。そのため、遺言書を作成する場合には、公正証書遺言をお勧めしております。遺言書の内容や作成手続のことは、弁護士にご相談・ご依頼いただくと安心です。
2 遺言執行者の指定について
遺言書を作成したのであれば、遺言書の内容が実現されなければ何の意味もありません。遺言書の内容を実現するためには、預金口座の解約と預金の分配、不動産の相続登記と管理状況の引き継ぎ、株式の名義変更など、様々な手続や事務処理が必要となってきます。また、遺言書を作成したとしても、相続人が遺言書の内容に従う保証はどこにもありませんし、遺言書の内容について相続人同士に確執が生じ、遺言書の内容を円滑に実現できなかったり、財産が多岐にわたり手続が複雑となる場合には、相続人自身で手続を遂行することに支障があったりすることが考えられます。そこで、公正証書遺言には、法律の専門家である弁護士を「遺言執行者」に指定する旨を記載しておくことをお勧めいたします。遺言執行者とは、遺言書の内容を実現するための手続や事務処理を行う者のことを言います。弁護士を遺言執行者に指定しておけば、必要な手続や事務処理を円滑に進めることができますし、法律上、相続人は遺言執行者の職務を妨げる行為を行ってはならないものと定められています。遺言書の内容を確実に実現するためにも、弁護士の活用をご検討ください。当事務所では、遺言書の作成業務や遺言執行者への就任も承っておりますので、お気軽にご相談ください。
当事務所では、借金・債務整理に関するご相談・ご依頼を多数お受けしております。借金問題において特に深刻なのが、債権者から給料の差押えを受けるケースです。今回のニュースレターでは、給料の差押えによる借金・債務整理の各手続への影響や対処法について、解説させていただきます。
1 給料の差押えについて
借金の返済を一定期間滞納すると、債権者から訴訟(裁判)や支払督促の申立てをされることが想定されます。そして、訴訟(裁判)や支払督促により支払命令が確定すると、給料の差押えが行われることがあります。給料の差押えが行われると、裁判所からご自宅と勤務先へ書類が届きます。税金・社会保険料を控除した手取り収入の4分の1(手取り収入が44万円を超える場合には、33万円を超える部分)が差押えの対象となり、勤務先から債権者へ支払われます。このような給料の差押えは、借金の完済まで続きますので、生活への影響が甚大です。
2 給料の差押えと借金・債務整理の手続との関係
借金・債務整理の手続には、自己破産(一定の生活用品・金銭を除く財産を失う代わりに借金を免除してもらう裁判所の手続)、個人再生(住宅などの財産を手元に残したまま借金を減額し、原則として3年間の分割返済としてもらう裁判所の手続)、任意整理(裁判所を通さずに債権者と交渉し、分割返済の合意をする手続)があります。債権者が任意に給料の差押えを解いてくれることはまずありませんので、任意整理ではなく自己破産または個人再生が現実的な選択肢となるでしょう。自己破産は同時廃止事件と管財事件とがあり、同時廃止事件では破産手続開始決定から免責許可決定の確定までの間の差押え分の給料は勤務先にプールされ、免責許可決定の確定により全額受け取れるようになります。管財事件の場合には、破産手続開始決定により給料の全額を受け取れるようになります。また、個人再生では、再生手続開始決定から再生計画認可決定の確定までの間の差押え分の給料は勤務先にプールされ、再生計画認可決定の確定により全額受け取れるようになります。生活を早期に立て直すためには、できる限り早く自己破産または個人再生の申立てを行う必要があります。
3 すぐに弁護士にご相談ください
債権者から給料の差押えを受けた場合には、特に緊急性が高い事案として、一刻も早く借金・債務整理の手続を進める必要があります。当事務所では、給料の差押えを受けた方の自己破産・個人再生のご相談・ご依頼を多数お受けし、解決してきた実績が豊富にございます。皆様の周りに債権者から給料の差押えを受けてお困りの方がいらっしゃいましたら、当事務所をご紹介いただければと存じます。
近年、モラハラ(モラルハラスメント)の被害による離婚のご相談・ご依頼を数多くお受けしております。今回のニュースレターでは、モラハラ被害による離婚のポイントとして、別居と証拠を中心に解説させていただきます。
1 モラハラとは
モラハラとは、身体的暴力を伴わない、言葉や行動・態度による精神的いじめのことを言います。精神的暴力・精神的虐待とも言われます。モラハラの具体例としては、些細なことで不機嫌になったり、怒鳴ったり、無視をしたりするなどの言動が挙げられます。また、体調不良なのに家事をするように要求したり、懇親会・同窓会への参加を阻止しようとしたりする、家計簿を付けさせて支出項目を細かくチェックし、常識的な支出についても文句を付けたりするなども、モラハラに該当します。
2 モラハラ被害と別居
夫婦双方が離婚に合意するのであれば、問題なく離婚をすることができます。しかし、モラハラの加害者に離婚を拒否されると、民法に定められた法律上の離婚原因に該当する必要があります。民法770条1項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する必要があり、相当ひどいモラハラを証拠によって裏付ける必要があります。モラハラの証拠については後述しますが、証拠が乏しいケースも少なくありません。そこで有効となるのが別居に踏み切ることです。家を出ることでモラハラの被害から逃れることができますし、長期間別居が続けばその事実をもって「婚姻を継続し難い重大な事由」があると判断されるようになります。どの程度の別居期間が必要かは夫婦の状況によりますが、いつかは必ず離婚できるという状況を作れますし、相手方が夫婦関係の継続を諦めて離婚に向けてスムーズに進むようになることも多いです。
3 モラハラの事実を裏付ける証拠
モラハラの加害者が非を認めることはまずありません。そこでポイントとなるのが証拠です。モラハラの証拠としては、モラハラの言動を録音した音声データ、LINEなどの記録、モラハラの物的証拠(例えば、壁やドア、物に当たって壊した時の写真など)は有力な証拠となり得ます。うつ病などの精神疾患にかかったことの診断書、モラハラに関する記載のある日記帳やメモなども考えられますが、証拠価値は高くありません。モラハラの事実を証拠により裏付けられるのであれば、慰謝料を請求できる可能性が高まりますが、有力な証拠が手元にない場合も少なくありません。実際には、慰謝料請求よりも早期の離婚成立に注力すべき事案も多いです。モラハラの加害者と直接やり取りすることは、精神的な負担が大きいのが通常です。皆様の周囲にモラハラ被害でお困りの方がいらっしゃいましたら、ぜひ当事務所をご紹介ください。
不当解雇や未払い残業代などの労使トラブルを解決するための制度として、労働審判という手続があります。今回のニュースレターでは、労働審判を起こされた場合の会社側の対応について、ご説明させていただきます。
1 労働審判とは
労働審判とは、不当解雇や未払い残業代など、事業者と労働者との間で発生した労使トラブルについて、裁判官1名と労働審判員2名が審理し、解決を図ることを目的とする裁判所での手続です。労働審判員とは、労使トラブルに精通した民間人から裁判所により任命され、1名は労働組合等が推薦する労働者側の労働審判員、1名は企業団体等が推薦する企業側の労働審判員です(いずれの労働審判員も、労使どちらかの立場に立つのではなく、中立の立場で審理を担当します)。労働審判は、原則として3回以内の期日で審理され、第1回期日でおおむね解決の方向性が決まるという特徴があり、裁判と比べると迅速な解決が期待できます。
2 労働審判の手続の流れ
労働審判の手続は、通常、(元)従業員が裁判所に労働審判手続申立書を提出することにより開始します。そして、裁判所から会社宛てに労働審判手続申立書が郵送されてきます。この段階で、裁判所により第1回期日の日時を指定されます。第1回期日は、会社宛てに労働審判手続申立書が届いてから、約1か月後であるのが通常です。同時に、答弁書の提出期限も指定されますので(通常は第1回期日の1週間前)、提出期限までに答弁書および反論の証拠を提出します。第1回期日では、裁判官や労働審判員が(元)従業員本人や会社側の出席者(社長や管理者など)に直接質問するなどして、審理を進めていきます。この第1回期日で、おおむね解決の方向性が決まるため、第1回期日までに十分な準備をして臨むことが大切です。第1回期日~第3回期日のいずれかで、裁判所から調停案が示され、労使双方が調停案を受け入れれば合意成立となり、合意ができなければ裁判所が審判という形で解決案を下します。審判に対して労使いずれからも2週間以内に異議申立てがなければ確定し、異議申立てが出されると訴訟(裁判)の手続に移行します。
3 労働審判を弁護士に依頼すべき理由
労働審判の手続は、第1回期日までのタイトなスケジュールで入念な準備をしなければ、解決の方向性が会社にとって不利なものとなってしまいます。弁護士に依頼して自社の主張を法的に整理するとともに、これを裏付ける証拠の収集・提出、裁判所における話し合いへの対応など、専門家である弁護士のサポートが不可欠です。(元)従業員から労働審判を起こされてお困りの企業様は、当事務所にご相談ください。
青森県のような北国で特有の交通事故として、雪道・凍結路面での交通事故があります。そして、雪道・凍結路面での交通事故では、過失割合・過失相殺が問題となることが非常に多いです。今回のニュースレターでは、雪道・凍結路面での交通事故と過失割合・過失相殺の問題について、ご説明させていただきます。
1 雪道・凍結路面におけるスリップ事故
雪道・凍結路面で頻発する交通事故がスリップ事故です。雪道・凍結路面では、道路が滑りやすくなるために、スリップした後続車が先行車に追突する事故、スリップした先行車に後続車が衝突する事故、スリップした先行車を避けようとした車に後続車が衝突する事故などがあり、玉突き事故など複数台の車が絡む事故も発生しています。このようなスリップ事故における過失割合ですが、スリップした後続車が先行車に追突したのであれば、基本的に後続車100:先行車0となります。ただし、先行車が急ブレーキをかけたために、後続車も急ブレーキをかけざるを得ずスリップしたような場合には、先行車にも一定の過失割合が認められるでしょう。その他の類型のスリップ事故では、①急ブレーキの有無、②スリップ対策(タイヤチェーン・スタッドレスタイヤの装着など)の有無、③走行速度と車間距離、④その他自動車運転上の注意義務(進行方向の注視・周囲の交通状況の安全確認・適切な自動車操作など)の違反の有無などを考慮し、事故状況に応じて過失割合が判断されます。
2 雪道・凍結路面におけるその他の交通事故
北国の冬の道路では、吹雪や雪堤(道路脇に積み上げられた雪)のために、見通しが悪くなったり、道路の幅が狭くなったりするなど、道路状況が悪化することがあります。このような道路状況の悪化を原因として、上記のスリップ事故以外にも様々な類型の交通事故が多発しています。雪道・凍結路面でのその他の交通事故における過失割合を検討する際には、まずは別冊判例タイムズ№38「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」という書籍を参照することが考えられます。しかし、同書籍では様々な事故類型が掲載されているものの、掲載事例と合致しないような事故も珍しくありません。その場合には、過去の裁判例も参照しながら、各車における自動車運転上の不注意の有無・程度から、過失割合を検討していくこととなるでしょう。
3 弁護士にご相談ください
以上のように、雪道・凍結路面での交通事故における過失相殺・過失割合は、専門的な判断が必要となりますので、交通事故を得意とする弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。当事務所では、雪道・凍結路面での交通事故の事案をこれまでに多数取り扱って参りました。お気軽に当事務所にご相談いただければと存じます。
相続に関連する紛争の一類型として、相続人の一人(あるいは第三者)が被相続人の預金を使い込む(あるいは使い込みが疑われる)事案があります。今回のニュースレターでは、被相続人の預金の使い込みの問題について、ご説明させていただきます。
1 預金の使い込みの調査
被相続人の預金が使い込まれていることが疑われる場合には、事前に預金の使い込みの事実を裏付けるための調査を行います。まずは、金融機関に対して残高証明書・取引履歴の交付・開示を請求します。そして、高額な払戻が不自然に行われている箇所があれば、金融機関に対して払戻請求書・定期預金解約申込書の写しの交付を請求し、その筆跡が誰のものか(被相続人の筆跡か、預金の使い込みを行ったと疑われる者の筆跡か)を確認します。また、被相続人の認知能力を裏付ける資料として、病院・施設に対して医療記録・介護記録などの取り寄せを行います。これらの調査は、基本的に法定相続人であれば誰でも単独で行うことができますが、金融機関や病院・施設によっては、弁護士からの照会でなければ、払戻請求書・定期預金解約申込書の写しの交付や医療記録・介護記録などの開示に応じないケースもあります。
2 紛争解決までの流れ
上記の調査の結果、被相続人の預金の使い込みに関する証拠が一通り集まったのであれば、返還を求めるための手続を行います。法律上、法定相続人は、被相続人の預金を使い込んだ者に対し、返還を求めることができます。その手続としては、まずは、内容証明郵便を送付する形で、払い戻した預金の使い道について、説明を求めていくのが一般的です。そして、払い戻した預金の使い道について合理的な説明がなく、被相続人の意思に反して使い込まれたと認められる場合には、返還を請求して示談交渉による解決を試みます。示談交渉がまとまらなければ、裁判所に訴訟を提起します。訴訟では、各当事者が主張・立証を尽くし、当事者・証人の尋問を経て判決が下される流れとなります。あるいは、判決に至るまでのいずれかの段階で、裁判官から和解の勧告が出されることも少なくありません。
3 よくある争点
被相続人の預金の使い込みの紛争では、請求を受けた側から様々な反論が出されることが想定されます。典型的なものとしては、「被相続人に渡した」、「被相続人から贈与を受けた」、「被相続人の生活費や医療費にあてた」、「被相続人の葬儀費用にあてた」などというものです。これらの反論が通るかどうかは、金額の多寡、被相続人の認知能力如何、証拠の有無などを踏まえて判断されます。被相続人の預金の使い込みの問題でお困りの方がいらっしゃいましたら、当事務所にご相談いただければと存じます。
新型コロナウイルス感染症の影響などにより、自己破産を余儀なくされることもあります。自己破産には、同時廃止事件と管財事件の2種類があり、どちらに振り分けられるかは、破産者にとって重大な関心事です。今回のニュースレターでは、自己破産における同時廃止事件と管財事件について、ご説明させていただきます。
1 同時廃止事件と管財事件とは
同時廃止事件とは、裁判所の破産手続開始決定と同時に破産手続が廃止(終了)となるものです。管財事件とは、裁判所が破産手続開始決定の際に破産管財人を選任し、破産管財人が様々な調査、財産の処分、債権者への配当などの手続を行うものです。管財事件は、高価な財産を保有している場合、会社・法人・個人事業主である場合、免責不許可事由(ギャンブル・浪費など借金の免除が認められなくなる可能性のある一定の事情)がある場合などに選択されます。管財事件とならなかった事案は、同時廃止事件となります。管財事件は、一般的に手続が複雑であり、手続の終了までに時間がかかり、破産管財人の報酬にあてるための予納金を納める必要があります。
2 同時廃止事件の手続
同時廃止事件では、裁判所に自己破産の申立てをし、破産審尋、破産手続開始決定、免責審尋、免責許可決定の流れで手続が進行していきます。破産審尋は、裁判官との面接手続であり、自己破産に至る経緯・理由などを質問されます。破産審尋のあと、裁判所が破産手続開始決定を出し、およそ3か月後に免責審尋の期日が指定されます。免責審尋とは、裁判官との面接手続であり、免責不許可事由の有無などを質問されます。免責審尋が終わると、免責許可決定(借金の免除を許可する決定)が出され、手続が終了となります。なお、破産審尋は、過去に自己破産歴がなく、免責不許可事由も見当たらないという場合には、省略されることが多いです。また、破産審尋は、裁判所の会議室などに複数の破産者が出席し、裁判官の話(今後の生活に関する注意点など)を聞く集団面接の形で行われることが多かったのですが、近時はコロナ禍のために省略されることが多くなっています。
3 管財事件の手続
管財事件では、裁判所が破産手続開始決定の際に、破産管財人を選任します。そして、自己破産に至る経緯の調査、免責不許可事由の調査、財産の調査と処分、債権者への配当などの手続を行います。そのうえで、免責審尋、免責許可決定という流れで手続が進行していきます。管財事件では、免責審尋は省略されません。当事務所では、自己破産に関するご相談・ご依頼を多数お受けしております。もし皆様の周りに借金問題でお困りの方がいらっしゃいましたら、ぜひ当事務所をご紹介ください。
配偶者の不倫の事実を掴むために、GPSを使用した不倫調査を検討・実行される方が散見されます。しかし、GPSを使用した不倫調査には、以下のようなリスクがありますので、慎重にご判断いただきたいと思います。
1 GPS機器を車に設置
同居中の夫婦いずれかの名義の車であれば、プライバシー権を不当に侵害するものではなく、違法とまでは言えないでしょう。しかし、別居中の配偶者が使用している車であれば、プライバシー権を不当に侵害するものとして、違法とされるでしょう。また、令和3年のストーカー規制法改正により、GPS機器を設置する行為、GPSを用いて位置情報を取得する行為が処罰の対象となったため、処罰されるリスクもあります。不倫・浮気相手が所有する車の場合にも、プライバシー権の不当な侵害およびストーカー規制法により違法であると考えられます。そして、別居中の配偶者の車または不倫・浮気相手の車にGPS機器を設置する際に、他人の私有地に違法な目的をもって立ち入る行為があれば、住居侵入罪が成立する可能性があります。なお、車を損傷させれば、器物損壊罪が成立する可能性があります。
2 GPS追跡アプリを配偶者のスマートフォンにインストール
配偶者に無断でGPS追跡アプリを配偶者のスマートフォンにインストールすれば、不正指令電磁的記録供用罪等に該当し、違法と判断されます。また、スマートフォンは、夫婦で共用することはないというのが通常ですから、同居中の夫婦の場合であっても、ストーカー規制法により違法となる可能性が高いと言えます。
3 GPS機器を配偶者の衣類・所持品に忍び込ませる
衣類や鞄・財布などの所持品は、夫婦で共有することはないというのが通常です。そのため、同居中の夫婦の場合であっても、GPS機器を配偶者の衣類・所持品に忍び込ませる行為は、ストーカー規制法により違法となる可能性が高いと言えます。また、プライバシー権を不当に侵害する行為であるとして、違法と判断されるものと考えられます。
4 GPSの位置情報の証拠価値
GPSの位置情報だけでは、本当に対象者の位置情報であるかが証明できず、誰と一緒にいたかも分からないため、単体としての証拠価値は低いと言わざるを得ないでしょう。LINE・メールのやり取り、日記・スケジュール帳の記載、ラブホテル・マンション等から出てくる場面の写真など、核となる証拠が必要となるのが通常です。上記のように、GPSを使用した不倫調査にはリスクもありますので、必ず事前に弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
近年、企業間の取引開始にあたって秘密保持契約書(NDA)を取り交わす例が増えています。秘密保持契約書は、営業秘密・顧客情報等の流出によるトラブルを回避するために重要なツールです。今回のニュースレターでは、秘密保持契約書の重要性について、ご説明させていただきます。
1 秘密保持契約書とは?
秘密保持契約書とは、取引において相手方から開示を受けた業務上の秘密情報について、第三者への開示や目的外の使用を禁止するなどの秘密保持を取り決める契約書のことを言います。秘密保持契約書は、業務委託、業務提携・資本提携、共同研究・共同開発、M&Aなどを行う場面で取り交わされることが多いです。
2 秘密保持契約書の重要性
秘密保持契約書を締結しておくことで、秘密情報について相手方に守秘義務(秘密保持義務)を負わせることができますので、秘密情報が第三者に漏えいするリスクを減らすことができます。また、秘密情報の漏えい等した場合の損害賠償義務を定めておくことにより、相手方の不正行為をけん制することができますし、万が一秘密情報の漏えい等が発生した場合の法的紛争の解決基準となり、適正なトラブル解決に繋がります。企業間で秘密情報の授受のある取引関係に入る場合には、できるだけ早い段階(秘密情報のやり取りが発生する前の段階)で秘密保持契約書を取り交わしておくことが大切です。なお、営業秘密の不正取得等を取り締まる法律として不正競争防止法がありますが、不正競争防止法における「営業秘密」に該当するための要件は厳しく、秘密保持契約書ではそれよりも広い範囲の情報を保護の対象とすることを取り決めることができます。
3 秘密保持契約書の盛り込むべき条項
秘密保持契約書では、対象となる秘密情報の範囲に関する条項、秘密情報の管理保持の方法等に関する条項、目的外使用の禁止に関する条項、秘密情報の複製等の制限に関する条項、契約終了時における秘密情報の返還・廃棄等に関する条項、秘密情報の漏えい時における対処方法・損害賠償等に関する条項、反社会的勢力の排除に関する条項、裁判管轄に関する条項など、様々な条項を盛り込む必要があります。条項に不備があると、秘密保持契約書を締結する目的が達せられなくなる可能性があります。
4 弁護士による秘密保持契約書のチェック・作成
秘密保持契約書は、弁護士にチェック・作成をご依頼いただくことをお勧めいたします。条項に不備を残すことを防止することができますし、自社にとって不利な内容になっていないかどうかの確認なども可能です。
交通事故の被害者が、まだ治療の継続が必要であるのに、保険会社から「そろそろ症状固定」と言われ、一方的に治療費・休業損害を打ち切られることがあります。今回のニュースレターでは、保険会社から治療費・休業損害を打ち切られたときの対処法について、ご説明させていただきます。
1 保険会社との交渉
保険会社との間で、治療費・休業損害の継続を求める交渉を行うことが考えられます。交渉に当たって、治療の継続が必要であるとする診断書の作成を医師に依頼し、保険会社に提出することなども考えられます。保険会社が「症状固定」との立場を譲らない場合には、現時点までの入通院期間に応じた慰謝料の一部内払を求める交渉をし、当面の治療費・休業損害にあてる方法も考えられますが、保険会社がこのような交渉に必ずしも応じてくるとは限りません。
2 自賠責保険に対する請求
加害者の自賠責保険に対し、治療費・休業損害の支払を請求していくことが考えられます。ただし、自賠責保険の傷害部分の上限額は120万円です。打ち切りまでに120万円を使い切っている場合には、自賠責保険に対する請求はできません。
3 健康保険による治療の継続
保険会社との交渉・自賠責保険に対する請求で解決できない場合には、ご自身の健康保険を使用して治療を継続し、後々、示談交渉・訴訟(裁判)により打ち切り後の治療費・休業損害を請求するという対応が考えられます。ただし、保険会社が一旦打ち切りを確定させた以上、打ち切り後の治療費・休業損害の回収を目指すのであれば、示談交渉ではなく訴訟を提起しなければならないのが通常です。
4 「仮払い仮処分」の申立て
休業損害が打ち切られることで生活が困窮する場合には、裁判所に「仮払い仮処分」を申し立て、慰謝料などの賠償金の一部内払を受けることにより、当面の生活費を確保することを考えます。「仮払い仮処分」を申し立てる場合には、治療継続の必要性、就労が困難であること、資産状況・収支状況などを丁寧に主張する必要があります。
5 後遺障害等級認定・示談交渉等に進む
治療費・休業損害の打ち切りの当否を精査した結果、現時点での症状固定が適正と考えられる場合には、後遺障害等級認定・示談交渉等に進むべきでしょう
6 弁護士に相談する
治療費・休業損害の打ち切りへの対応は、専門的な判断が必要です。まずは交通事故問題に詳しい弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
当事務所では、相続に関するご相談・ご依頼を多数お受けしております。その中には、相続手続が未了のまま、何年も放置されている事案も散見されます。今回のニュースレターでは、長らく放置された相続手続の問題について、ご説明させていただきます。
1 相続手続が放置される理由
相続放棄をするか否かの判断の期限が3か月、相続税の申告納付・特例適用の期限が10か月であることから、基本的に相続手続は早期に解決することが望まれます。しかし、相続放棄や相続税の申告納付が不要な事案では、相続手続をすぐに行わなくても一見実害がないように見え、①相続人同士の仲が良くない、②遺産分割の話し合いがまとまらない、③誰も相続手続の話を切り出さない、④仕事や家事が忙しくて相続手続に着手できない、⑤相続登記手続に費用がかかるので躊躇している、などの理由から、相続手続が何年も放置されていることが珍しくありません。
2 相続手続を放置することによるリスク
実は、相続放棄や相続税の申告納付が不要な事案であっても、相続手続を長らく放置することには、様々なリスクがあります。まず、相続手続を何年も放置していると、相続人の中で亡くなる人が出てくることが考えられます。そうすると、亡くなった相続人の配偶者・子が代襲相続するなど、相続人の人数が増え、手続が複雑になります。また、相続人の中で認知症になる人が出てくれば、相続手続を進めるためには成年後見制度の利用を家庭裁判所に申し立てる必要があり、手続がさらに複雑化します。そして、不動産の名義が被相続人のままになっていれば、売却処分などの手続が進められなくなるという問題点もあります。
3 不動産の相続登記手続の義務化
不動産の相続登記手続については、法改正により、2024年4月1日から義務化されます。相続登記手続が義務化されると、不動産を相続したことを知ってから3年以内に、相続登記手続をしなければならなくなります。そして、相続登記手続を正当な理由なく怠れば、罰則(10万円以下の過料)の適用を受ける可能性があります。不動産の相続登記が義務化された理由は、相続登記が未了のまま放置されることがこれまでは多く、長年を経て所有者が分からなくなる事態が生じていたために、不動産の取引や公共事業・再開発などの支障となっていたことがあります。
4 長らく放置された相続手続の解決は弁護士に相談を
以上のように、相続手続を長らく放置していれば手続がより複雑化しますし、不動産の相続登記手続の義務化も控えていますので、専門家である弁護士にお早めにご相談いただくことをお勧めいたします。
社有地・私有地に放置された自動車の撤去について、ご相談をいただくことがございます。今回のニュースレターでは、このような放置車両の撤去の問題について、ご説明させていただきます。
1 自力救済の禁止
社有地・私有地に放置された自動車への対応として、まずは警察にご相談される方も多いと思います。しかし、警察は、盗難車などの犯罪に関わる車両でなければ、基本的に引き上げ・撤去を行ってくれません。そこで、ご自身で放置車両を撤去してしまおうとお考えになる方もいらっしゃいます。しかし、このように車両所有者に無断で自動車を処分してしまうことを「自力救済」と言うのですが、自力救済は法律上原則として禁止されています。後々、車両所有者から損害賠償請求を受けたり、器物損壊などの刑事責任を問われたりするおそれがありますので、注意が必要です。
2 車両所有者の特定
放置車両への対処としては、車両所有者に対して撤去請求を行うこと、それが難しければ、訴訟(裁判)の提起と強制執行をもって撤去を実現することが本筋となるのですが、まずは車両所有者を特定する必要があります。放置車両にナンバープレートが付いていれば、社有地・私有地への放置状況を記録し、運輸支局(普通自動車の場合)または軽自動車検査協会(軽自動車の場合)に照会することで、車両所有者の住所・氏名等を確認することができます。ナンバープレートが外されている自動車については、別途、個別に対応を検討する必要があります。
3 車両所有者に対する撤去請求
車両所有者の住所・氏名等が確認できれば、まずは車両所有者へ撤去を求める通知書を送付するなどして、撤去に向けた交渉を行うのが通常です。この点、運輸支局・軽自動車検査協会への照会で確認できた住所から転居している場合もあり、そのような場合には住民票をたどるなど、住所を調査する必要があります。
4 訴訟(裁判)の提起と強制執行
車両所有者との連絡が取れない場合や車両所有者からの協力が得られない場合には、裁判所に車両撤去を求める訴訟(裁判)を提起することとなります。訴訟(裁判)が提起された段階で車両所有者が撤去に応じてくることもありますが、そうでなければ、撤去を命じる判決を得たうえで、裁判所に強制執行を申し立て、公権力によって放置車両の撤去を実現する方法を取ることとなります。このように、放置自動車の撤去を適法に行うためには、複雑な手続を踏む必要があります。社有地・私有地に放置された自動車の撤去についてお困りの方は、当事務所にご相談ください。
今回のニュースレターでは、ローンが残る住宅を保有する人が借金・債務整理を行う手続として、住宅資金特別条項付個人再生という手続をご紹介させていただきます。
1 住宅資金特別条項付個人再生
個人再生(民事再生)とは、借金・債務整理の方法のうち、借金の額を大幅に減額し、原則として3年で分割返済していく手続です。この点、自己破産(一定の金銭・生活用品等を除く財産を失う代わりに、借金を免除してもらう手続)をすれば、住宅ローンの免除を受けられますが、住宅を手放さなければならないのが原則です。これに対し、個人再生では、住宅ローンに限って残高の減額をせずに返済を続け、住宅を手元に残すことができる、住宅資金特別条項付個人再生という制度があります。
2 住宅に関する要件
住宅資金特別条項付個人再生を利用するためには、住宅に関する要件として、個人再生をする人が所有(配偶者等との共有を含む)する建物(マンションの区分所有権を含む)であること、個人再生をする人自身がその建物に居住していることが必要です。自宅兼店舗・自宅兼事務所の場合には、床面積の2分の1以上に相当する部分を、個人再生をする人自身の住居として使用していることが必要です。
3 住宅ローンに関する要件
住宅資金特別条項付個人再生を利用するためには、住宅ローンに関する要件として、住宅資金貸付債権であること(事業資金などは対象外)、その借入について住宅に抵当権が設定されていること、住宅ローン以外の担保権(抵当権など)が住宅に設定されていないことが必要です。税金を滞納している場合、マンション管理費を滞納している場合には、税金の滞納処分、管理費滞納による先取特権の実行によって住宅を失う可能性があるため、住宅資金特別条項付個人再生の利用が困難となることがあります。なお、住宅ローンの返済を一定期間滞納した場合には、保証会社が住宅ローンの債権者へ代位弁済し、住宅ローンの債権が保証会社へ移ります。この場合には、保証会社による代位弁済から6か月以内に、裁判所に申立てをする必要があります。
4 住宅ローンの返済の軽減
住宅資金特別条項付個人再生では、住宅ローン以外の借金は減額されますが、住宅ローンは減額されないのが原則です。ただし、住宅ローンを滞納している場合、減額した他の借金と並行して住宅ローンを返済していくことが困難な場合には、期限の利益回復型、最終弁済期間延長型、原本一部据置型などの「リスケジュール」の制度を利用して返済を軽減できることがあります。皆様の周りに住宅ローンなどの借金の返済でお困りの方がいらっしゃいましたら、ぜひ当事務所をご紹介ください。
今回のニュースレターでは、遺産分割における収益不動産の取り扱いについて、ご説明いたします。遺産の中にアパート・マンションなどの収益不動産がある場合には、居住用不動産とは異なる注意点がありますので、慎重にご対応いただければと存じます。
1 不動産の評価
遺産分割の前提として、不動産価値を算出する必要があります。この点、不動産価値の算出には、固定資産評価額や不動産業者の査定額など、様々な評価方法があります。収益不動産については、収益価格(収益利回り)を考慮して算出する方法もありますが、青森県などの地方都市の物件であれば、経験上、固定資産評価額を参照することが多いです。
2 不動産に関する借り入れ状況の把握
収益不動産にローンが組まれていれば、その物件を取得する相続人がローンも引き継ぐこととなるのが通常です。そのため、借入残高や月々の返済額を把握しておくことが大切です。収入額と返済額が見合っているかどうかを見極めたうえで、その物件を取得するかどうかを判断するとよいでしょう。また、ローンを引き継ぐのであれば、借入残高を踏まえて、他の遺産の分配や代償金の額を検討することとなります。
3 賃貸条件の把握
収益不動産を取得した場合、賃借人との契約関係を引き継ぐこととなります。そのため、賃貸条件を把握しておくことが必要です。具体的には、賃借人が誰であるのか、賃料がいくらであるのか、賃貸期間はいつまでなのか、賃料の滞納はあるのか、敷金の返還義務があるのか、必要費・有益費の支払義務はあるのかなどの情報です。これらの情報を十分に把握しないままに収益不動産を取得すると、賃借人との間で想定外のトラブルが発生するおそれがあります。また、収益不動産にローンが組まれている場合に、収入額と返済額が見合っているかどうかを見極める際にも、賃貸条件を把握することが必要となります。
4 賃料の分配
被相続人が亡くなる前の賃料については、被相続人の遺産に組み込まれるため、遺産分割の対象となります。一方で、被相続人が亡くなったあと、遺産分割が成立するまでの賃料は、原則として、遺産分割の対象とはならず、各相続人が法定相続分に応じて取得するものとされます。なお、当然ながら、遺産分割の成立後の賃料は、その物件を取得した相続人が単独で取得します。収益不動産から得られる賃料の分配についても、相続人間で解決する必要があります。
遺産分割と収益不動産についてお困りの方は、当事務所にご相談ください。
1 調停申立書が届くまで
離婚調停の手続は、配偶者が管轄の家庭裁判所へ調停申立書などの必要書類を提出することからスタートします。そして、家庭裁判所で離婚調停の申立てが受理されると、家庭裁判所が調停の日程(期日)を決定し、離婚調停の相手方のもとへ調停申立書等が郵送されます。
2 調停申立書が届いた場合の対応
家庭裁判所から調停申立書等が届いたら、まずは書類の内容をきちんと確認しましょう。離婚調停の期日が記載された書面が同封されていると思いますので、その日時を確認し、家庭裁判所へ出頭できるように日程を確保しましょう。どうしても都合がつかないという場合には、できるだけ早めに家庭裁判所へ連絡しましょう。離婚調停の日程の変更などの対処をしてもらえるのが通常です。無断で離婚調停の期日に欠席してはいけません。なお、離婚調停の手続への対応を弁護士に依頼した場合には、家庭裁判所への連絡や離婚調停の日程変更などについても、弁護士を通じて行います。
3 調停申立書を無視した場合のリスク
家庭裁判所から届いた調停申立書を放置し、離婚調停の期日を無断で欠席した場合には、離婚調停は不成立で終了します。当事者が家庭裁判所に出頭しないことには、話し合いが進められないためです。そうなると、その次の段階として、配偶者から離婚訴訟(離婚の裁判)が提起される可能性が高いです。そして、離婚訴訟では、裁判官から「離婚調停を無断で欠席した不誠実な人物」という心証で見られるなど、ご自身にとって不利な結果を導く要因となり得るため、注意が必要です。離婚調停では、家庭裁判所の調停委員が仲介し、話し合いを基本としてある程度柔軟に解決を図ることが期待できます。一方、離婚訴訟となれば、手続が非常に専門的で複雑なものとなり、より困難な対応を迫られるリスクがあります。調停申立書の無視はいけません。
4 弁護士にご相談・ご依頼ください
配偶者から離婚調停を申し立てられた場合には、絶対に放置はしないということが重要です。そして、離婚調停の期日に出席してきちんと対応を取っていく必要があります。離婚調停の手続への対応について不安を感じるという方も多いと思いますので、専門家である弁護士に対応をご相談・ご依頼いただくのがよいでしょう。