今回は、平成27年度の健康保険料率、介護保険料率及び雇用保険料率についてお知らせします。
平成27年度の健康保険料率の改定が正式に決定され、4月分の健康保険料(5月給与から控除分)から保険料額が変更になります。
保険料率は、全国平均で10%と変わらず据え置きですが、各都道府県の医療費等の伸び率によって、修正が加えられている地域があります。関東圏内の各地域の保険料率は、下記のとおりです。
東 京:9.97% 茨 城:9.92% 神奈川:9.98%
栃 木:9.95% 群 馬:9.92%
埼 玉:9.93% 千 葉:9.97%
他の都道府県の健康保険料率をご覧になりたい方は、下記をご参照ください。
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat330/sb3130/h27/270228
また、40歳から64歳までの方(介護保険第2号被保険者)に対する介護保険料(率)についても、1.72%から1.58%(全国同一)に引き下げられますので、ご注意ください。
また、平成27年4月1日から平成28年3月31日までの雇用保険料率は、平成26年度と変わらず次のとおりとなりました。
一般の事業:5/1000 農林水産、清酒製造の事業:6/1000建設の事業:6/1000
雇用保険料率の詳しい内容は下記URLをご参照ください。
http://www.office-sato.jp/_src/sc6142/2015.04.01_h27koyouhokenritu.pdf
さらに、今年度より労災保険料率も改定され、全54業種平均で 0.1/1000 引下げられます。
労災保険料率の各業種の料率は下記URLをご参照ください。
最近、アメリカやヨーロッパでは、日本の過労死のニュースがよく報道されています。オックスフォード英語辞典に「karoshi」として英単語登録されるほど、世界的に共通の言葉になりつつあるようです。
日本人はアメリカ人よりも年間200時間以上、フランス人よりも年間500時間以上働いていると言われています。
長時間労働による疲労の蓄積によって、脳、心臓疾患を発症、又は慢性疲労や過度のストレスによる精神疾患等で休職する社員が急増しています。このような休職者を増やさないためにも、社員の正確な労働時間を把握し、長時間労働する社員及びその上司に対しては長時間労働を減らすよう会社で管理、指導を行わなければなりません。
労働時間の適正な把握は、安全配慮義務がある会社にとって、社員の健康被害を抑止する有効な手段といえます。
労働安全衛生法では長時間労働者への医師による面接指導制度を設けています。時間外、休日労働が月100時間を超えた場合、申出をした社員に対して医師による面接指導を実施しなければなりません。医師から必要な措置について意見聴取を行い、適切な事後措置が必要となります。
残業の原因は、「仕事量が多い」ことが一番に挙げられますが、仕事量が変わらなくても、管理職の指導とルール運営を変えれば、社員の仕事に対する態度や業務の効率化が進み、残業時間を必要最小限に抑えることができます。例えば、ノー残業デーの導入、労働時間削減検討委員会の設置、人事考課査定項目に業務効率化を組み込む、労働時間短縮マニュアル作成などによって長時間労働が抑制されると考えられます。社員一人ひとりの能力を存分に発揮させるために、長時間労働奨励主義の会社風土を変えて働く環境を整えるべきです。
また、会社が社員の健康障害を防ぐ努力を怠った場合、社員から訴えられるリスクもあります。国が、「病気を発症したのは会社側の責任」と認めた場合、民事による会社側の安全配慮義務違反を追及する損害賠償訴訟が起こることが予想され、会社は何千万円、何億円という賠償を支払う必要が出てきます。
平成12年に最高裁で判決が下された電通過労自殺事件は、長時間にわたる残業を恒常的に伴う業務に従事していた当時24才の社員がうつ病で自殺した事案です。業務遂行とうつ病による自殺との間に相互因果関係があると認められ、その社員の遺族に対し、1億6800万円を支払うとの和解が成立しました。
今後は、過重労働に対して残業代を支払えばいいという考え方は捨て、大切な社員の健康や会社の社会的信用をしっかり守っていくことが会社の責務であると考えていきましょう。
今回は、10月より対応が求められる改正事項2点についてお話ししていきたいと思います。
今回は、10月より対応が求められる改正事項2点についてお話ししていきたいと思います。
1.地域別最低賃金額改定
事業主にとっては頭が痛いニュースですが、今年も最低賃金が改定されました。
全国平均でいうと16円引き上げられ、780円になったようです。
地域別に関東圏内だけを見ていきますと、東京都、埼玉県、神奈川県は800円を超えていて、さらに東京都、神奈川県は900円に迫る勢いです。
東 京:888円 茨 城:729円
栃 木:733円 群 馬:721円
埼 玉:802円 千 葉:798円
神奈川:887円
他の都道府県の最低賃金額をご覧になりたい方は、下記をご参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/
ここまで読んでいただいて、「そもそも最低賃金って何?」と疑問に思われた方もいらっしゃると思います。
毎年、最低賃金についてご説明しておりますが、当時、読者でなかった方及びよく覚えていないという方のために再度ご説明させていただきます。
最低賃金額とは、会社が労働者に支払う1時間あたりの賃金(以下、時間給という)が最低賃金法で定める最低限度額以上でなければならないとする制度です。
たとえば東京都の会社であれば、最低賃金額869円以上の時間給を労働者に支払わなければ違法となります。
たとえ、使用者と労働者の間で最低賃金額より低い賃金を支払う旨記載された雇用契約書を結んでいたとしても、それは法律によって無効となり、最低賃金額と同様の定めをしたものとしてみなされてしまいます。
従って、使用者が労働者に最低賃金未満の賃金しか支払っていない場合には、使用者は労働者に対してその差額を支払わなくてはいけません。
また、一応罰則があって、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、50万円以下の罰金が課されます。
「うちは時給のアルバイトはいないから関係ないね」と思わないでください。
月給制であっても、時間給に換算して最低賃金額を下回っていれば違法となります。
最低賃金額を下回っていても気づかないケースとして、残業代を基本給に含めている場合が挙げられます。
基本給であっても残業代の部分については、最低賃金額の賃金対象とはなりませんので、最低賃金額を下回らないように毎年見直しを行っていただくことをお勧めします。
2.厚生年金保険料率の改定
これまた、事業主にとって頭が痛いニュースですが、9月より厚生年金保険料率が改定されました。
社会保険料は前月分を徴収するというルールがありますので、実際には10月給与から改定された厚生年金保険料を控除していきます。
改定された厚生年金保険料率(坑内員・船員の被保険者の方は除く)は、下記のとおりとなります。ご確認ください。
〈改正前〉
全体:171.20/1000
被保険者負担分:85.60/1000
事業主負担分:85.60/1000
〈改正後〉
全体:174.74/1000
被保険者負担分:87.37/1000
事業主負担分:87.37/1000
詳しくは↓
http://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=27438
10月の給与計算する際には、お間違いがないようお気を付けください。
また、7月にお手続きをした算定基礎届により標準報酬月額が変更(9月分より適用)となっている被保険者もいるかと思いますので、併せてご注意ください。
Q. 私は車で通勤していますが、妻の勤務先が私の勤務先の500mほど先にあるので、毎朝妻を勤務先まで送り届けた後に、私の会社に向かっています。
先日妻を送り届けた後、会社に向かう途中に自損事故を起こし負傷してしまいました。
妻の勤務先に行くために迂回しているので通勤災害が認められるか心配です。
A. 多少の迂回であれば合理的な経路とされ、通勤災害になる
通勤災害が認められるには合理的な経路で住居と就業の場所を往復していることが要件になりますが、この合理的な経路は、必ずしも最短距離の経路のみではなく、一般に利用することが考えられる経路であれば合理的な経路として認められます。
奥様の勤務先が同一方向で、質問者様の通勤経路からさほど離れていなければ、奥様の勤務先を経由することは通常行われることであり、合理的な経路であるといえます。
多少の迂回というのが問題になりますが、同じようなケースで1.5km(迂回距離3km)離れた妻の勤務先に妻を迎えにいく(妻の勤務先は自宅とは反対方向)経路上の災害は、合理的な経路とされず、通勤災害と認められなかった事例があります。
また、迂回距離が2.5kmであっても、夫婦共稼ぎのうえ山間部で公共交通機関の利用では始業時刻に間に合わないようなケースでは合理的な経路とした事例があります。
このケースと同様ではありませんが、子供を保育園に送る場合の通勤災害について、行政解釈で「他に子供を監護する者がいない共稼労働者が、託児所、親戚宅等に子供をあずけるためにとる経路などは、そのような立場にある労働者であれば就業のためにとらざるを得ない経路であるので、合理的な経路となる」としています。
ただし、通勤に支障をきたす程度に著しく遠回りであるとか、通勤のタイミングと合わない時間に保育園に向かった場合には、合理的な経路と認められない可能性があります。
同じようなケースで、介護が必要な家族を介護施設に送る場合の通勤災害については、他に介護をする者がいないなど、出勤前に介護施設に送らざるを得ない事情があり、また、経路が著しく遠回りでない場合には、子供を保育園に送る場合と同様に、自宅と介護施設との間の経路についても合理的な経路に該当し通勤災害として認められる傾向にあります。
なお、介護に関しての通勤災害について、仕事を終えて介護のため義父宅に立ち寄り、義父宅から帰宅途中の災害を通勤災害と認めた判例があります。
最近、アメリカやヨーロッパでは、日本の過労死のニュースがよく報道されています。オックスフォード英語辞典に「karoshi」として英単語登録されるほど、世界的に共通の言葉になりつつあるようです。
日本人はアメリカ人よりも年間200時間以上、フランス人よりも年間500時間以上働いていると言われています。
長時間労働による疲労の蓄積によって、脳、心臓疾患を発症、又は慢性疲労や過度のストレスによる精神疾患等で休職する社員が急増しています。このような休職者を増やさないためにも、社員の正確な労働時間を把握し、長時間労働する社員及びその上司に対しては長時間労働を減らすよう会社で管理、指導を行っていく必要があります。労働時間の適正な把握は、安全配慮義務がある会社にとって、社員の健康被害を抑止する有効な手段といえます。
労働安全衛生法では長時間労働者への医師による面接指導制度を設けています。時間外、休日労働が月100時間を超えた場合、申出をした社員に対して医師による面接指導を実施しなければなりません。医師から必要な措置について意見聴取を行い、適切な事後措置が必要となります。
残業の原因は、「仕事量が多い」ことが一番に挙げられますが、仕事量が変わらなくても、管理職の指導とルール運営を変えれば、社員の仕事に対する態度や業務の効率化が進み、残業時間を必要最小限に抑えることができます。例えば、ノー残業デーの導入、労働時間削減検討委員会の設置、人事考課査定項目に業務効率化を組み込む、労働時間短縮マニュアル作成などによって長時間労働が抑制されると考えられます。社員一人ひとりの能力を存分に発揮させるために、長時間労働奨励主義の会社風土を変えて働く環境を整えるべきです。
また、会社が社員の健康障害を防ぐ努力を怠った場合、社員や家族から訴えられるリスクがあります。国が、「病気を発症したのは会社側の責任」と認めた場合、民事による会社側の安全配慮義務違反を追及する損害賠償訴訟が起こることが予想され、会社は何千万円、何億円という賠償を支払う必要が出てきます。
平成12年に最高裁で判決が下された電通過労自殺事件では、長時間にわたる残業を恒常的に伴う業務に従事していた当時24才の社員がうつ病で自殺したことにより、業務遂行とうつ病による自殺との間に相互因果関係があると認められ、その社員の遺族に対し、1億6800万円を支払うとの和解が成立しました。
過労死は社員にとっても、会社にとっても不幸な結果を招いてしまいますので、過重労働に対して残業代を支払えばいいという考え方は捨て、大切な社員の健康や会社の社会的信用をしっかり守っていくことが会社の責務であると考えていきましょう。