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同じようで全然違う、販売店契約と代理店契約の違いとは?

23.05.09 | 企業法務

メーカーが製造した商品をみずから販売することもありますが、より広い範囲に流通させたい場合に、販売に関するノウハウを持つ者に販売を依頼することがあります。
この『販売してもらう者』は一般的に『販売代理店』と呼ばれています。
一言で販売代理店といいますが、メーカーと取引をするのが販売店であるか代理店であるかで、適用する法律は大きく異なるのです。
今回は、販売店契約と代理店契約の違いについて解説します。


メーカーから購入して販売する販売店契約

販売代理店契約には、『販売店契約』と『代理店契約』の2種類があります。

まず、販売店契約とは、販売店がメーカーから商品を仕入れて、顧客に対して商品を再販売(転売)する契約をいいます。

販売店は、顧客への商品販売価格をみずから設定できるため、メーカーから商品を安く仕入れて、みずからの販売ノウハウを駆使して顧客に高く売ることができれば、その分高い転売利益を得ることができます。
一方で、販売店は原則としてメーカーから商品をあらかじめ購入することになるので、売れ残ってしまえば、多くの在庫を抱えて損失をこうむるリスクを負うことになります。

販売店契約の場合には、独占禁止法の規定に注意しなければなりません。
メーカーは販売店に商品を販売した時点で、原則、それをどのように転売するかは販売店の自由となります。
そのため、たとえばメーカーが販売店に対して転売価格を拘束するようなことは、独占禁止法が定める『不公正な取引方法』(独占禁止法2条9項4号)に該当し、違法となります。

また、販売店契約には、独占販売権を付与する場合と付与しない(非独占)場合があります。
独占販売権を付与した場合は、販売店の最低購入数量を定めるのが基本となり、メーカーにとっては確実に一定数量を販売店に購入してもらえる一方で、多くの販売店を通じて売却することはできなくなります。
販売店にとっては、商品を独占的に扱えることで売上を伸ばすことが期待できる一方で、一定数量の購入義務を負うこととなります。

このように、販売店契約でも取引形態としてはさまざまなバリエーションがあります。


メーカーの代理で営業・販売を行う代理店契約

次に、代理店契約とは、代理店がメーカーの代理人として、商品やサービスを広く紹介し、販売拡大活動を行う契約のことです。
顧客との売買契約の当事者はあくまでメーカーであり、代理店はメーカーの代理人として商品を販売することになるので、販売数量に応じて、メーカーから手数料をもらうことになります。
また、代理店は、メーカーから商品をみずから仕入れるわけではないため、売れ残った場合の在庫リスクは、メーカーが負うことになります。
その分、販売価格については、販売店契約と異なり、メーカーが自由に定めることができます。
代理店契約の場合は、メーカーはその商品やサービスを販売するうえで何を代理店に委託するのか、委託の範囲について双方ですり合わせることが重要になります。

また、顧客からの代金はいったん代理店が受領し、代理店に支払われる手数料を差し引き、後から精算されるのが一般的です。
メーカーとしては万が一、代理店が倒産するなど不測の事態が生じた場合のことも想定して、契約内容を考える必要があるでしょう。

販売店契約と代理店契約は、メーカーの商品を第三者に販売してもらうという点では同じです。
しかし、全く異なる契約内容になります。
販売店契約と代理店契約には、それぞれにメリットとデメリットがあり、一概にどちらがよいといい切れるものでもありません。

自社で製造したものをどのような取引形態で販売していくかを検討する際は、こうした契約の違いをきちんと理解したうえで、契約交渉を進めていくことが大切です。


※本記事の記載内容は、2023年5月現在の法令・情報等に基づいています。

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