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マーケティング論の基本中の基本「4P理論」を、ここで改めて勉強しましょう。④ 

17.09.29 |

これまでに引き続き、マーケティング論の中で最も有名な理論のひとつである「4P理論(Product・Place・Promotion・Priceの4つを指す)」について、沼上幹氏の『わかりやすいマーケティング戦略』(有斐閣アルマ、2008)に沿ってご紹介をしています。 

今回は“Price(価格)”について解説していきます。

むやみに価格を安くしてはいけない 

Priceは「安ければ安いほど良い」わけではありません。
高級品には相応の高い価格を設定しなければ、お客様に“高級感”を感じてもらえないのです。 

価格も本質サービスを表現するひとつです。
この視点を忘れずに価格設定する必要があります。 

同じカテゴリーの商品でも本質サービスが変われば、価格も変化します。 

たとえば、同じメーカーのオーディオでも2万8,000円のミニコンポがあれば、アンプだけで128万円することもあります。
この2種類の製品は本質サービスが異なるので、価格設定の差が生じるのです。 

価格設定を考えるうえで大元になるのは、サービス・商品をつくるためにかかる“コスト”です。 

ただ、マーケティング論では、「むやみに価格を安く設定してはいけない」といわれています。 
理由なき値引き競争は、自社と競合の双方の利益が減少してしまう可能性があるからです。
業界全体の売上低下につながります。 

もちろん、「自社の低価格に競合が追随できない」という条件があれば、低価格を売りにすることに意味はあります。 

たとえば飲食店であれば、野菜や肉といった材料を原産地から安く仕入れるルートを持っているなどです。 
以前、紹介した「俺のフレンチ」のように、「立ったまま食べるというシステムで客の回転数を上げる」といった独自のアイデアがある場合もいいでしょう。 


「4つのPのフィット」で中長期的に成功する

4P理論のまとめとして、「4つのPのフィット」をご紹介します。 

4つのPが互いにフィット(適合)していないと、短期的に成功したとしても、中長期的に成功を維持することはできません。 

たとえば、実際は低品質の“Product”に対し、あたかも高品質の製品であるかのような“Promotion”を行って、高い“Price”を設定したとしましょう。
この場合、短期的に消費者をだますことはできても、中長期的には成功しないことがわかると思います。 

4つのPをうまくフィットさせた事例としては、「ヨード卵・光」が挙げられます。 
この卵は、家畜用配合飼料などを製造している「日本農産工業」の製品で、今では卵のトップブランドとなっています。 

ヨード卵・光は、ワカメなどに含まれるヨードをニワトリに食べさせて産んだ卵です。 
ヨードが含まれていて健康に良く、食品とサプリメントの中間のような“Product”になっています。 

発売当初の“Price”は1個50円に設定し、固定価格としました。
「毎日食べ続けることで健康を増進する」商品の強みを表現するのに相応しい価格です。 

“Place”は商店街の青果店を選びました。
発売当初は、青果店を1軒ずつまわって、商品を置いてもらえるように交渉したようです。 

“Promotion”は大々的なテレビCMは行いませんでした。
青果店の店主が商品の強みを説明しながら、消費者に推奨してもらうようにしました。 

このように、4つのPがうまくフィットしたからこそ、卵のトップブランドになったといえるでしょう。



佐藤達郎のマーケティング論 

●プロフィール● 
佐藤達郎(さとう・たつろう) 
多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論)、コミュニケーション・ラボ代表。2004年カンヌ国際広告祭日本代表審査員。浦和高校、一橋大学、アサツーDK、(青学MBA)、博報堂DYを経て、2011年4月より現職。著書に、『NOをYESにする力!』『アイデアの選び方』『自分を広告する技術』『教えて!カンヌ国際広告祭』がある。

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