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定年廃止や延長で高齢者を戦力に……一億総活躍社会の行く道は?

18.09.25 |

政府は2015年、年齢や性別、障碍(しょうがい)などに関わらず、すべての国民が生きがいを感じられる『一億総活躍社会』を提示。
その一環として、高齢者の雇用促進が検討されています。
実際、厚生労働省が実施した『高年齢者の雇用状況』調査によると、定年を延長したり廃止したりした企業はここ10年で倍以上に増加しており、高齢者の生活モデルが“生涯現役”に向けて大きく変化していることを示しています。
高齢労働者の雇用には多くの利点がありますが、一方で問題点も抱え込むことにもなります。
今回は、定年の延長や廃止のメリット、デメリットをご説明します。

存在そのものが会社の資産に

現在、『高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(通称、高年齢者雇用安定法)』によって、各企業は従業員を65歳まで雇用し続ける義務があります。
これにより、従来は60歳だった定年を65歳に引き上げたり、または定年を過ぎた社員を再雇用するために、継続雇用制度を導入したりする企業が増加しています。
中には、定年制度そのものを廃止し、65歳を過ぎても働ける仕組みを設けた企業もあります。

長年、自社とともに成長してきた高齢の従業員は、商品に対するノウハウ、社内のルールなどに長けています。
また、高い専門性を持つ人も多く、体力的に現場で働くことは難しくても、後進の育成に従事してもらうなど、経験を生かした活躍が可能です。
つまり、存在そのものが会社の資産と見ることができます。

さらに、『65歳超雇用推進助成金』など、定年を65歳まで引き上げた企業や、定年を廃止した企業には国から助成金が出るケースがあります。
そして高齢の従業員自身も、65歳を超えても働くことで、経済不安の解消とともに『やりがい』を得ることができます。
現役時代は活気にあふれていた人が、定年したとたん無気力に……というのはよくある話。
社会へのつながりを維持することで、高齢者自身も生きる活力を得られるというわけです。


企業の活力の低下や、解雇トラブルなどの懸念も

こうしたさまざまなメリットがある一方で、問題点もあります。
まず、高齢者が社内に増えることにより、企業が組織としての活力を失う懸念。
会社の幹部や上層部に残り続ける高齢者が、企業としてのフットワークを重くしてしまうケースはしばしばあります。

経済的な面においても、年功序列の日本では、高齢者ほど給与が高い傾向にあります。
そのため、高齢の従業員に高額の給与が支給され続けると、若い社員のモチベーション低下を招くおそれがあります。

また高齢者は、若い人よりも健康や安全面に配慮しなければいけません。
一般的に60歳を超えると、人の身体はあきらかに無理が効かなくなります。
残業はもちろん、遠方への出張や現場作業といった、過酷な労働には従事させづらくなるでしょう。

さらに、定年を廃止することによって、実務が不可能な年齢になっても高齢社員が会社に残ってしまうケースも考えられます。
その際、どのように会社を辞めてもらうかなど、従来の解雇規定には収まらない問題が頻出する可能性も高く、定年を廃止した段階で、解雇規定を見直す必要があります。
こうしたことを回避するために、現在、全体の8割の企業が取っているのが、『継続雇用制度』の導入です。


契約を結び直す『継続雇用制度』の選択も

『継続雇用制度』は、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律に対応しています。
この制度は、社員が定年になったとき、本人が希望すれば改めて雇用契約を結んで再雇用するというもので、人件費や雇用期間に関しても個々の話し合いで決めていけるため、定年の一律廃止よりも柔軟に対応することができます。

定年の引き上げか、廃止か、それとも継続雇用制度の導入か。一度、会社の状況に合った雇用規定の見直しをしてみてはいかがでしょうか。

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