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医療機関が、患者からカルテの開示を求められたら?

18.12.10 |

病院や診療所などの医療機関は、法令によって診療記録(カルテなど)の保存を義務づけられており、患者または第三者からその診療記録の開示を求められることもしばしば見受けられます。 

今回は、医療機関が診療記録の開示を求められた場合の法規制についてご説明します。

診療記録の開示について規律する法律は?
 
診療記録には、患者や、診療を行った医師を特定することが可能な情報、すなわち個人情報が含まれています。
したがって、診療記録を開示することは、個人情報の開示にほかなりません。
個人情報の開示については、『個人情報保護法』が規律しているため、診療記録の開示について規律する法律は、個人情報保護法ということになります。
また、『医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス』という、行政機関が出している規律にも目を通す必要があります。


患者本人から開示請求があった場合の対応

医療機関は、通常、個人情報保護法上の『個人情報取扱事業者』にあたります。
個人情報保護法上、患者本人は、個人情報取扱事業者に対し、個人情報の開示請求ができ、個人情報取扱事業者は、そのような請求があった場合は、原則として患者本人の個人情報を開示しなくてはなりません。
したがって、患者本人から診療記録の開示請求があった場合、医療機関は、原則として診療記録を政令の定める方法により開示するという形で対応する必要があります。
もっとも、患者本人から診療記録の開示請求があった場合でも、例外的に、患者本人または第三者の生命、身体、財産、その他の権利利益を害するおそれがある場合などは、開示を拒否することも可能です。
しかしながら、そのような例外事由に当たるか否かの判断は、ケースバイケースであり、判断がむずかしい場合もあります。
医療機関が、患者本人から診療記録の開示請求を受けたにもかかわらず、それを拒否したいと考えている場合、弁護士等の法律家に相談し、例外事由に当たるか否かにつき助言を得るべきでしょう。
例外事由にあたらないにもかかわらず開示を拒否した場合、患者本人から損害賠償請求を受けるリスクがあります。


患者以外の第三者から開示請求があった場合の対応

患者本人以外の第三者から診療記録の開示請求があった場合、患者本人から開示請求があった場合とは逆で、個人情報保護法は、あらかじめ患者本人の同意を得ていたような場合を除き、原則として開示を禁止しています。
したがって、医療機関としては、患者本人以外の第三者から診療記録の開示請求があった場合、開示を拒否するという対応をとることになります。
もっとも、法令に基づく場合など、例外的に開示が可能な場合もあります。
裁判所や弁護士会といった機関から開示請求があった場合は、法令に基づく開示請求と判断して問題ないと思われます。
しかし、開示請求が法令に基づくか否かは、法令の内容を知らないと判断できないものであり、法律の専門家ではない医療機関がそれを判断するのは、組織内弁護士(インハウスローヤー)を雇用していない限り、困難を伴います。
したがって、患者本人以外の第三者から診療記録の開示請求がなされ、診療記録を開示しようと考えている場合、専門家に相談し、例外事由に当たるか否かにつき助言を得るべきです。


診療記録の開示方法

診療記録をどのように開示するかについては、厚生労働省医政局医事課が発令した『診療情報の提供等に関する指針』が規定しています。
そこには、“開示を行う場合は適正な費用を徴収すべき”など、医療機関が診療記録を開示する際の方法についての記述があります。
医療機関は、診療情報を開示する際、この『診療情報の提供等に関する指針を一読し、これに従って診療記録を開示するのが無難でしょう。


以上のことから、医療機関は、診療記録の開示を行う場合、開示請求者が患者本人か、それ以外の第三者かを見極めたうえで、個人情報保護法などの法令の規律に従う必要があると言えます。
個人情報保護法などの法令の規律のあり方は非常に複雑です。
診療記録の開示請求があった場合は、慎重に行われることをおすすめします。

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