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改正民法(相続法)成立で、配偶者の居住権保護はどう変わる?

18.10.29 |

本年7月、改正民法(相続法)が成立し、一部を除き、2020年7月22日までに施行されることになりました。
この中で重要な改正として、“配偶者の居住権”が新たに創設されています。
今回は、この制度の主な内容についてご紹介します。

相続開始時に配偶者の居住権を確保

これまでの民法では、相続開始後の被相続人の配偶者の居住権には規定がありませんでした。
そのため、何十年も一緒に居住していた場合でも、配偶者の死亡により住居を失うこともありました。
今回の改正ではこの事態を受け、残された配偶者が住み慣れた家に住み続けることができるように制度を整えた『配偶者居住権』と『配偶者短期居住権』の2種類の居住権が創設されました。


配偶者に建物の使用を認める『配偶者居住権』

1.権利を有する条件
配偶者居住権とは、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、遺産分割終了後にも配偶者にその建物の使用を認めることを内容とする法定の権利で、配偶者は、次の場合に取得します。
ただし、被相続人が相続開始時、居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合には、配偶者居住権は成立しません(1028条、1029条)。
(1)遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき
(2)配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき
(3)遺産の分割請求を受けた家庭裁判所により配偶者居住権を取得する旨の審判がされたとき

2.存続期間
原則は、配偶者の終身の間です。例外として、遺産の分割の協議もしくは遺言に別段の定めがあるとき、家庭裁判所が遺産分割の審判で別段の定めをしたとき、その定めるところによります。したがって、配偶者の存命期間にわたらない配偶者居住権の設定もできます(1030条)。

3.権利の強さ
配偶者居住権は、登記を具備すると第三者に対抗することができます。
これを受けて、居住建物の所有者は、配偶者居住権を取得した配偶者に対し、配偶者居住権の設定登記を備えさせる義務を負います(1031条)。

4.持戻し免除
配偶者が配偶者居住権を取得した場合は、その遺贈に被相続人の“持戻し(相続人の一部に遺贈などの特別受益がある場合、相続開始時の財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなす)”免除の意思表示が推定されます(903条4項、1028条3項)。

5.権利の譲渡
配偶者居住権は、譲渡することができませんが、居住建物の所有者の承諾があれば、第三者に居住建物の使用もしくは収益をさせることができます(転貸借関係)。(1032条2項、3項)。

6.権利がなくなるとき
配偶者居住権は、以下の事由で消滅、終了します。
(1)存続期間の終了、配偶者の死亡
(2)居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合
(3)配偶者の義務違反に対して、居住建物の所有者から配偶者居住権消滅の意思表示がされた場合
(4)全部滅失等、居住建物の使用収益ができなくなった場合


期間を区切って居住権を認める『配偶者短期居住権』

1.権利を有する条件と存続期間
配偶者が、相続開始時に、被相続人の財産の建物に居住していた場合に、次の期間、相続により当該建物の所有権を取得した者に対し、居住建物に無償で使用する権利を有します。
(1)居住建物について遺産の分割をすべき場合は、遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日または相続開始の時から6カ月を経過する日のいずれか遅い日までの間
(2)それ以外の場合(遺贈等で他の者が取得し、遺産分割が不要な場合)、居住建物取得者の
配偶者短期居住権消滅の申入れの日から6カ月を経過する日までの間(居住建物取得者は、前号以外に、いつでも同申入れをすることができます)

2.権利の強さ
配偶者短期居住権には第三者に対する対抗力はないが、居住建物取得者は、第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住権の使用を妨げることをしない義務を負います(1037条2項)。


まとめ

このほかに、配偶者居住権の効果として、配偶者の使用収益(用法遵守義務、善管注意義務)、居住建物の修繕(配偶者が必要な修繕をすることができる等)、居住建物の費用負担(配偶者が通常の必要費を負担する等)、配偶者居住権の終了の効果として原状回復の法律関係(居住建物の返還と返還時の費用負担)等が定められました。
改正相続法に関しては、このほかにも重要な改正事項があり、同法が施行されれば、遺産分割等の相続手続に影響が出てくることが考えられます。

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