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物価や光熱費の高騰による介護事業所への影響と対応策とは

23.10.31 |

コロナ禍を経て、我が国の社会経済活動が緩やかに正常化しつつあります。
しかし、ロシアのウクライナ侵攻や円安などの影響を受け、今もなおエネルギー価格や物価が高騰しています。
これらは個人消費者の生活だけではなく、企業の経営状況にも大きな影響を与えています。
特に介護業界は、利用者の衣食住などの生活に関わる事業であるため物価・光熱費高騰による影響は計り知れず、急速な対策が求められています。
物価・光熱費高騰により介護事業所が受ける影響と、対応策について説明します。

物価・光熱費高騰による介護事業所への影響

総務省が2023年9月に発表した『2020年基準消費者物価指数全国2023年(令和5年)8月分』によると、総合指数は2020年を100とした場合に105.9となっており、前年同月比で3.2%上昇したことがわかりました。
この結果からは、日本全体の物価高騰が見て取れます。

帝国データバンクの調査で、2022年には通年で2万5,768品目というバブル崩壊以降、記録的な食品・飲料の値上げが行われていたことがわかりました。
また、2023年の値上げについては、6月末時点で既に前年累計値上げ品目数を超えており、2023年の1年間で3万5,000品目の値上げが予想されています。
食品以外では、送迎に係るガソリン代はハイオクで1リットル当たり約197円(2023年9月6日時点)と、高価格で変動しています。
そのほかにも、介護衛生用品やティッシュペーパー、トイレットぺーパーなどの消耗品代も軒並み上昇しており、多くの介護事業所の運営や事業継続に影響が出ています。

2023年4月に一般社団法人全国介護事業者協議会等が集計した『物価・光熱水費等の高騰による介護施設・事業所への影響調査について』によると、調査対象の90%以上の介護施設・事業所等が「物価・光熱水費等の高騰による影響があった」と回答しました。
特に特別養護老人ホームやサービス付き高齢者住宅などの施設系の事業所では、電気料金の上昇率が前年比で51%以上増加したと回答した事業所が40%を超えており、光熱費の高騰が大きな負担となっていることがわかります。

介護事業所が講じるコスト増加への対策

昨今の物価や光熱費高騰の影響を受け、約30%の介護事業所が「事業の廃止や倒産の危機に直面している又はその可能性がある」と事業の継続に危機感を抱いています。
各コスト増加による事業継続への懸念から、実際に介護事業所が行った対策としては、「預貯金等の取り崩し」、「昇給や賞与等の減額または見送り」、「人員削減や新規採用の停止等」などが挙げられ、介護人材に悪影響を及ぼしていることがわかります。

しかし、上記の対策は廃業や倒産危機回避のための一時的なものに過ぎず、継続的な対策とはなり得ません。
見通しが立たない物価高騰の影響による悪循環から回避するためには、本質的な改善や対応策を講じる必要があるといえるでしょう。

そこで、継続的な対策の一つとして挙げられるのが、「業務の効率化」です。
まずは現状の把握と業務の見える化を行い、課題を洗い出します。
そして、無駄な業務や非効率な業務については見直し・改善を進めましょう。
まだ、ICTを活用できていない事業所であれば、導入を検討するのもおすすめです。
介護業務の一環である書類や介護記録の作成、人員配置基準をふまえた施設全体の複雑なシフト作成など事務負担となる業務が、ICTの導入により大幅に軽減できます。
施設全体の業務の効率が上がれば、サービスの品質を下げずに時間外労働等にかかる経費を削減できる可能性があります。

また、介護報酬加算を取りこぼしていないか確認しましょう。
基本報酬だけでなく、少しでも高い加算を受けることができるよう事業所の体制を確認してみることも必要です。

事業を行ううえでは「必要なコスト」と「不要なコスト」があります。
現状をしっかりと見極め、どれだけ「不要なコスト」を削減できるかがポイントです。
経営者だけでなく、事業所の職員一体となってコストに対する意識改革が重要です。

物価高騰に直面する介護事業所や施設等への緊急対策事業として、支援金を交付している自治体などもあります。
これら公的支援の情報を収集し活用することも視野に入れたうえで、各事業所で今できる対策を考えていきましょう。


※本記事の記載内容は、2023年11月現在の法令・情報等に基づいています。

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