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介護スタッフの怒りをコントロールするアンガーマネジメント

23.12.05 |

介護現場は、利用者やその家族と関わる機会が多く、常に人間関係のトラブルが発生するリスクを抱えています。
また、人員不足やスタッフ間のコミュニケーション不足等により、思うように仕事が進まずストレスが蓄積してしまうこともあるでしょう。
このように身体的・精神的に負担が大きい介護現場において、介護スタッフは自分の「イライラ」や「怒り」とうまく付き合うことが大切です。
そこで今回は、介護スタッフの感情をコントロールするための『アンガーマネジメント』を用いた対策法を紹介します。

アンガーマネジメントの必要性とメリット

『アンガーマネジメント』とは、「イライラ」や「怒り」という感情をコントロールして上手に付き合っていくための心理トレーニングで、1970年代にアメリカでDVや人種差別、軽犯罪者等に対する矯正プログラムとして開発されたといわれています。
現在では介護現場をはじめ学校教育、ビジネス、医療などあらゆるシーンで広く活用されています。

介護現場では、さまざまなストレス要因が存在します。
たとえば、「些細なことで利用者や家族からクレームを受けた」「何度言っても規則を守ってくれない」「ほかのスタッフと比較される」「セクハラを受けた」といった利用者とスタッフにおける人間関係や、「人材不足で仕事が予定通り回らない」「負担の割に給与が少ない」といった介護事業所との労働環境問題によるストレスなどです。
このようなストレスを放置したままにしてしまうと、利用者やほかのスタッフとの人間関係が悪化し、充分な介護サービスが提供できなくなる恐れがあります。
また、ストレスの蓄積による精神疾患のリスクや退職につながる可能性もあるでしょう。

そこで有用なのが、アンガーマネジメントです。
イライラや怒りの感情をうまくコントロールするための手法であるアンガーマネジメントは、上手に実践することで介護現場において次のようなメリットが期待できます。

<アンガーマネジメントの実践によるメリット>
・職場での人間関係が改善されやすくなる
・利用者やその家族との円滑なコミュニケーションが期待できる
・感情をコントロールすることで気持ちが楽になり、仕事に集中できるようになる
・感情が穏やかになることで、周囲からの信頼度が向上する
・ほかのスタッフの教育や指導がしやすくなる
など

アンガーマネジメントの実践方法

では、実際にアンガーマネジメントを実践するためには、どのような行動が必要なのでしょうか。
介護事業所におけるアンガーマネジメントは、次の3つのステップを身につけることが必要であるといわれています。

<アンガーマネジメントの実践ステップ>
(1)「衝動」のコントロール
・イライラや怒りを感じたら、深呼吸して6秒間、経過するのを待つ(6秒ルール)。
・その場を離れて、心を落ち着かせる
(2)「思考」のコントロール
・「~すべき」「~であるべき」という固定概念を捨てて、物事の本質を考える
・人によって「~するべき」と感じることは異なることを理解し、価値観の許容範囲を広げる
(3)「行動」のコントロール
・イライラや怒りの原因を考え、書き出して分析する
・怒りのスコア(たとえば10段階など)をつける
・「重要」か「重要ではない」かを検討し、自分ができることだけを考えて行動する

イライラや怒りは、不安や心配、焦りや悲しさといった「マイナス感情」と、眠気や疲れといった「マイナス状態」を燃料にしています。
人は、「~であるべき」という自分の価値観が裏切られたとき、苛立ちを感じます。
その苛立ちが火花となり、燃料であるマイナス感情やマイナス状況に引火した途端、怒りの炎が燃え上がってしまうのです。
「~すべき」という強いこだわりと、マイナスの感情や状態を起こさないようにすることが大切といえるでしょう。

また、「衝動」のコントロールにおける「6秒ルール」とは、怒りを感じた瞬間に、すぐ反応しないようにするトレーニングです。
人は怒りを感じてカッとなったとしても、6秒ほど経過すると、理性が働いて冷静な判断ができるようになるといわれています。
すぐに実行できる項目なので、まずは6秒待つ習慣から始めてみるとよいかもしれません。

アンガーマネジメントを実践できると、介護スタッフが介護現場で日々感じているイライラや怒りの感情をコントロールし、ストレスを軽減できるようになります。
しかし、さまざまな感情をコントロールするためには、継続的な教育・研修・実践が必要不可欠です。
介護事業者が率先してアンガーマネジメントの教育・研修に取り組むことが、重要なポイントとなります。

介護スタッフにとっての感情コントロールは、働きやすい職場づくりや人材不足の解消など、現在の介護事業所の運営に大きく関係しているといえます。
アンガーマネジメントの理解を深め、事業所全体で取り組んでみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2023年12月現在の法令・情報等に基づいています。

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