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ルール違反を正し、暮らしを守る『公正取引委員会』とは?

24.04.09 |

ある大手婚活サービス企業が、競合他社のサービスを利用しないよう圧力をかけていた件に対し、『公正取引委員会』が「不公正な取引方法」として『独占禁止法』違反の疑いで立ち入り検査を行いました。
同社が公正取引委員会に提出した改善計画が認められたことで、違反認定とならず、排除措置命令などは見送られることとなりました。
今回は、公正取引委員会がどのような役割を担っていて、企業の経済活動とどのように関わってくるのか解説します。

『独占禁止法』で企業の違反行為を規制

多くの売り手と買い手が自由に物やサービスの売買を行える場を『市場』と呼び、物やサービスの需要と供給のバランスがとれ、商品と金銭が効率よく流通している経済の仕組みを『市場経済』と呼びます。

市場では、物やサービスを提供する多くの企業が、より多くの利用者を獲得できるよう、低価格化や品質向上、付加価値の提供などで競い合っています。こうした企業の競争により、利用者側は多種多様な強みや特徴を持つ物やサービスのなかから、自分に必要な商品を自由に選択できます。
また、企業同士もお互いに競い合うことで、技術革新や品質向上が進み、日本経済の成長や活性化にもつながります。

市場経済における企業同士の競争が正しく行われていれば、利用者にも日本経済にもメリットがありますが、なかには自社の利益を守ることに執着するあまり、行き過ぎた行動をとってしまう企業も少なくありません。
そこで、市場の自由競争を妨げる不公正な取引方法を禁止する『独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)』が、1947年7月に施行されました。

この法律を運用し、不正や不当な取引がないように監視しているのが『公正取引委員会』です。
公正取引委員会は独占禁止法とその補完法である『下請法(下請代金支払遅延等防止法)』の二つを執行し、市場の競争秩序の維持に努めています。
違反行為の疑いがある企業を調査したり、違反した企業に違反行為をやめるよう命令したり、厳格な取り締まりを行なっています。

こんな行為は要注意! 独占禁止法の規制

独占禁止法では、企業が事業活動を行うにあたり守るべき基本的なルールが定められており、公正かつ自由な競争を妨げる行為として、以下のことを規制しています。

・私的独占の禁止
『私的独占』とは企業が単独またはほかの企業と共謀し、競争相手を市場から締め出したり、新規参入を妨害したりして市場を独占しようとする行為のことです。
市場独占により競争相手がいなくなった企業は、消費者に向けてより安価でよい商品やサービスを提供しようという企業努力をしなくなり、利用者のメリットがなくなってしまうため、この行為を禁止としています。

・不当な取引制限の禁止
不当な取引制限に該当する行為として、『カルテル』と『入札談合』の二つが該当します。
カルテルは本来、各企業が独自で決める商品、サービスの価格や生産数などを、複数の企業が共同で決めて競争を制限する行為をいい、価格の不当なつり上げをはじめ、経済活動の停滞につながる行為のため、厳しく規制しています。
一方の入札談合は、国や公共団体の工事などの入札において、関係者が事前に共謀し受注企業や金額を決めることで、公共の利益を著しく損なう行為のため、同様に禁止しています。

・不公正な取引方法(共同の取引拒絶)の禁止
『共同の取引拒絶』とは、複数の企業が共同で、競争関係にある特定の企業との取引を拒んだり、第三者に特定の企業との取引をしないようにしたりする行為のことです。
特定の企業を市場から締め出すことで、消費者は選択の幅が狭まりメリットがなくなるため、不当な行為として禁止しています。

・『優越的地位の濫用』の禁止
取引上優位な立場にある企業が、取引先に対して不当に不利益を与える行為を禁止しています。
代表的なものに、いわゆる『下請けいじめ』があり、下請代金の支払遅延や減額、不当な受領拒否や返品などが該当します。
下請取引で問題が起きるケースが多いため、下請法できめ細かに規制し、公正取引委員会が違反行為を取り締まることで、下請企業の保護に努めています。

ほかにも、取引先や販売地域によって商品やサービスの価格に著しく差をつける『差別対価・差別取扱い』や、販売原価を大幅に下回る不当な低価格で販売を継続し、他社の事業活動を困難にする『不当廉売』、人気商品と不人気商品をセットで販売する『抱き合わせ販売』なども不当な行為として禁止しています。

企業の活動において独占禁止法の違反の疑いがある場合、公正取引委員会による調査が行われます。
その結果、違反行為が認められると、『排除措置命令』や『課徴金納付命令』などの行政処分が下されます。
措置命令に従わなかったり、カルテルなどさらに悪質な行為を行なったりした場合は、刑事罰を受けたり課徴金の納付を命じられたりすることがあります。

ただし、公正取引委員会から、比較的軽微な独占禁止法の違反疑いの通知を受けた企業が、その違反の疑いの理由となった行為を排除するために、自主的に必要な措置などを記載した確約計画を作成し、公正取引委員会がこの計画を認定した場合は、排除措置命令や課徴金納付命令は免除されます。

不正行為が行われることで、日本経済の活性化や消費者の生活が脅かされることのないよう、公正取引委員会が企業の経済活動をしっかり監視しています。
何が不当な取引にあたるのか認識したうえで、知らないうちに違法行為を行なっていた、ということがないように気をつけましょう。


※本記事の記載内容は、2024年4月現在の法令・情報等に基づいています。

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