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生活に困窮した場合に支援してくれる『生活保護制度』とは

24.04.09 |

さまざまな事情により生活に困っている人を対象に、必要最低限の生活保障と自立を支援する目的で利用できるのが『生活保護制度』です。
厚生労働省の調査によると2022年の時点で受給者は約204万人で、全体としては年々減少傾向にある一方、高齢者世帯の割合が増加しています。
会社勤めの人であれば、あまりなじみがないかもしれませんが、突然のトラブルで生活に困窮することがないとは言い切れません。
今回は、生活保護制度の概要と、生活保護受給中の突然の収入について解説します。

『生活保護制度』で支援される内容

日本国憲法第25条の定めにより、すべての国民は『健康で文化的な最低限度の生活』を営む権利が保障されており、国はそのために社会福祉や公衆衛生の向上に務める必要があります。
『生活保護制度』は、生活に困窮している人を保護し、困窮に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、自立を支援する制度です。

この制度では、世帯収入が厚生労働大臣の定める『最低生活費』の金額に満たない場合に、その差額が保護費として支給されます。
最低生活費は住んでいる地域や世帯人数、世帯人員の年齢などにより異なり、世帯人員に障害者がいるか、母子世帯かによっても条件が変わってきます。
生活を営むうえで必要な各種費用について、以下のような扶助が支給されます。

・生活扶助
食費や被服費、光熱費など日常生活に必要な費用を支給します。
・住宅扶助
アパートの家賃など、定められた範囲内で実費を支給します。
・教育扶助
義務教育を受けるために必要な学用品などにかかる費用を支給します。
学級費、生徒会費、PTA会費、教材費、給食費なども含まれます。
・医療扶助
病気や怪我の治療、療養のための医療機関の利用について、本人負担なしでサービスを受けられます。
・介護扶助
介護サービス利用料や利用者負担額、施設の食事負担額などの費用を、本人負担なしでサービスを受けられます。
・生業扶助
就労に必要な技能の修得などにかかる費用を、定められた範囲内で支給します。

そのほか、出産扶助や葬祭扶助などの扶助もあります。
これらの扶助は原則として、決められた目的以外で使用することはできません。

生活保護の保護費を返金するケースとは?

生活保護における保護費は、最低生活費から収入を差し引いた差額部分となります。
そのため、生活保護の受給中に収入があった場合には、自治体へ報告する必要があります。

収入があったにもかかわらず無申告のまま、後日の調査などで収入が発覚した場合は、不正受給となって不正に受給した保護費の返還を求められる場合があります。
仮に、不正受給と判断された場合には、返還義務よりも強い、徴収がなされる可能性があります。
生活保護法78条1項によると、不正な手段で生活保護を受給した場合、自治体は不正受給者から生活保護費相当額を徴収できることとなっています。
なお、生活保護受給中に借金は認められませんが、仮に借金をした場合は、収入として認定されるため申告が必要となり、収入として計算され、保護費が減額されることになります。

では、たとえば交通事故による慰謝料は『収入』にあたるのでしょうか。
厚生労働省の『生活保護法による保護の実施要領について』(昭和36年4月1日厚生事務次官通知)では、災害等によって損害を受けたことで臨時的に受ける補償金などのうち、自立更生のためにあてられる額は「収入として認定しない」と定めています。
逆に「自立更生のためにあてられる額」以外については「収入」として認定され、交通事故の慰謝料は自立更生のためにあてられる額には該当しないとみなされることが多いため、慰謝料を受け取った場合、自治体への保護費相当額の返還義務が発生します。
しかし、状況によっては必ずしも全額を返還する必要があるとは限りません。
たとえば、交通事故による怪我の後遺症のため自宅の改修が必要になった場合など、賠償金の一部が自立更生に必要な額と認められる可能性もあります。

それでは、宝くじの高額当選の場合はどうでしょうか。
宝くじの当選金は「収入」となります。
そのため、もしも高額当選した場合、生活保護が廃止となる可能性があります。
目安として生活保護費の3カ月分を超える収入があると、廃止が検討されます。
宝くじで当選した金額は、当選がわかった時点で手続きを行えば、全額受け取れます。
ただし、当選が判明した後も手続きしないままでいたり、当選金額受領後に収入を申告しなかったりした場合は、当選金額の支払いが可能になった時点から発覚するまでの期間に支払われた生活保護費は返還する必要があります。
なお、保護費の範囲内であれば、娯楽に関することにお金を使っても問題ないとされているので、宝くじを購入することは可能です。

いずれのケースにしても、予定外の高額な収入が発生した際は、自己判断をせずに担当のケースワーカーに相談するようにしましょう。

生活保護制度の目的は、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を送れるよう、本人の自立も含め支援することです。
なかなかなじみのないものかもしれませんが、国が設けている制度ですので知っておいたほうがよいでしょう。


※本記事の記載内容は、2024年4月現在の法令・情報等に基づいています。

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