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人手不足倒産は他人事でない!

16.10.14 |

このところ、「人手不足による倒産」が周囲で起こるようになりました。

中小企業の場合、企業のキーパーソンが欠けると倒産につながります。実際、どのような経緯で人手が足りなくなるのでしょうか。

<人手不足の類型> 

人手不足のパターンは大きくわけて3つに分類されます。

第一は「後継者難型」です。

これは古くからある問題ですが、最近注目が集まっています。世を騒がせる企業のお家騒動は、事業承継がうまくいかないことによるものが多いです。事業承継を考えずに経営を続けていると、代表者が入院や急死をしたときに倒産してしまう可能性があります。 

第二は「求人難型」です。

せっかく得意先から仕事を受注しても、その仕事を手掛ける人手が集まらなければ、受注をあきらめるしかありません。こうなると、事業が先細って倒産の憂き目に遭うことでしょう。 


第三は「従業員退職型」です。

特定部署の要員や、専門性の高いスペシャリストが辞めると、すぐ補充することが困難で、事業が回らなくなり、倒産につながりかねません。業務が属人的な小規模企業ほど、致命的です。 


<事業者の不慮の事故死は多くの人々に影響を与える> 

「後継者難型」の事例として、離婚をして子どもがいない40代男性の話を挙げます。

飲食業を東京都心で立ち上げ、事業に情熱を燃やしていました。やっとの思いで経営が軌道に乗り出したころ、バイクで帰宅している途中で事故に遭い、帰らぬ人となりました。

従業員はバイトばかり。当然、事業は立ち行かなくなり、廃業を余儀なくされました。 

事故処理も含めて、金銭上の手続きは会計事務所が請け負うことになりました。

後継者を考える時間を与えられず、このような悲劇が起こることもあるのです。 

事例の男性には家族がいませんでしたが、事業者が急病や不慮の事故で亡くなって廃業を強いられると、経営者の家族は路頭に迷ってしまいます。

そして、従業員も職を失います。取引先も販路または原材料供給を絶たれ、経営に影を落とす可能性があります。

事業者の不慮の死は、多くの人々に影響を与えるのです。 

人手不足倒産は、中小企業にとって他人事ではありません。「後継者難型」倒産を防ぐために事業承継対策を、「求人難型」倒産を防ぐために採用戦略の見直しを、「従業員退職型」倒産を防ぐために人材の万能化を、進めることが重要となっています。 



企業成長のための人的資源熟考


●プロフィール● 
佐野陽子 さの・ようこ 
慶應義塾大学名誉教授。1972年慶應義塾大学商学部教授。87年から2年間、日本労務学会代表理事。89年から2年間、慶應義塾大学商学部長・大学院商学研究科委員長。96年東京国際大学商学部教授。2001年から4年間、嘉悦大学学長・経営経済学部教授。主な著書:『はじめての人的資源マネジメント』『企業内労働市場』(ともに有斐閣)。


[記事提供] 

(運営:株式会社アックスコンサルティング)

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