木村典嗣税理士事務所

正社員と契約社員の格差はどこまで有効?

18.09.11 | ビジネス【人的資源】

昨今、正社員(無期契約労働者)と契約社員(有期契約労働者)の賃金等の格差が取り上げられるようになっており、2018年6月1日、最高裁が一つの方向性を示しました(ハマキョウレックス事件)。
正社員と契約社員で賃金・手当に差を設ける場合、どこまでが許されるのでしょうか? 
今回は、『ハマキョウレックス最高裁判決』を元に考察します。

【最判小二平成30.6.1/「ハマキョウレックス事件」】

事案の概要
Xは、Y社との間で契約社員として有期労働契約を結ぶトラック運転手である。
Xは、Y社に対し、正社員との労働条件の相違が不合理であり、労働契約法20条に違反すると主張して、正社員と同一の権利を有する地位にあることの確認、各手当の支給(主位的)、差額相当額の損害賠償(予備的)を求めた。
争点になったのは、
①無事故手当
②作業手当
③給食手当
④住宅手当
⑤皆勤手当
⑥通勤手当
⑦家族手当
⑧賞与
⑨定期昇給
⑩退職金
についての格差である。
なお、⑦~⑩についての請求は、附帯上告受理の際に排除されており棄却されている。
Y社においては、正社員と契約社員で業務内容及び業務に伴う責任の範囲に相違はなかった。
他方で、正社員は配置転換や出向が予定され、等級役職制度の適用があったが、契約社員はいずれも予定されず、適用されないこととなっていた。

判旨の概要
労働契約法20条は、有期契約労働者の労働条件につき、期間の定めがあることにより不合理なものとすることを禁止したものであり、労働条件の相違があることは前提として、その相違が職務内容や配置の変更の範囲、その他の事情を考慮して不合理でないことを求めた規定である。
したがって、有期の者と無期の者の労働条件の相違が、期間の定めがあることに関連して生じた際に、それが不合理と評価される場合には、その相違については無効となる。

①無事故手当 → 不合理
優良ドライバーの育成や安全な輸送への顧客の信頼獲得のための手当なので、有期・無期とは関わりなく支給されるべきものであること等から、相違が不合理と評価された。

②作業手当 → 不合理
特殊作業を行った対価であり、有期・無期とは関わりなく支給されるべきものであること等から、相違が不合理と評価された。

③給食手当 → 不合理
勤務時間中に食事をとらねばならない従業員に対する補助であり、有期・無期とは関わりなく支給されるべきものであること等から、相違が不合理と評価された。

④住宅手当 →不合理ではない
従業員の住宅費用補助を目的とし、正社員には転居を伴う配置転換が予定されているため、契約社員よりも費用が多額にわたる可能性があるため、相違は不合理ではないと評価された。

⑤皆勤手当 → 不合理
運送業務を円滑に行い従業員の出勤を確保するための手当であり、有期・無期とは関わりなく支給されるべきものであること等から、相違が不合理と評価された。

⑥通勤手当 → 不合理
通勤交通費を補助する趣旨のものであり、有期・無期とは関わりなく支給されるべきものであること等から、相違が不合理と評価された。

結論
労働契約法20条違反だからといって契約社員の契約内容が正社員と同じものになるわけではなく、正社員と契約社員の就業規則が別に作られているので、地位確認請求及び差額賃金請求は認められない。
予備的な損害賠償請求は不合理とされた範囲において認められる。


まとめ

上記裁判では、裁判所がかなり具体的かつ詳細に踏み込んだ判断をしたといえます。
正社員と契約社員の職務内容や配置転換の予定等を詳細に検討し、手当ごとにその目的や趣旨を考えた上で判断されており、企業にとってはとても参考になる内容です。
今回の事案は、正社員と契約社員の職務内容が同一であったため、多くの手当の相違が不合理と評価されることとなりました。
今後、差異を設けるほど職務内容や配置転換の可能性が異なるかを考えながら賃金・手当の制度設計をする必要があります。
また、就業規則は、正社員、契約社員、パート社員等、社員の種類ごとに作成することが望ましいことも読み取れます。
この判例を受けて、就業規則を含む職場ルールを変更する場合には、「具体的にみて不合理でない」といえなければなりません。
そのため、事前に判例分析等に長けた専門家の意見をもとに、慎重に制度設計をしてください。

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