「40年ぶりの民法大改正!!」 第3回

19.06.24 | ビジネス【相続】

相続の様相を大きく変える改正民法、今回は第3回目をお送りします。

 

「40年ぶりの民法大改正!!」 第1回はこちら

「40年ぶりの民法大改正!!」 第2回はこちら

〇「婚姻20年以上で贈与・遺贈された自宅は、遺産分割の対象外に」

 

 現行の民法では、相続人に生前贈与等を行った場合、原則としてその贈与を受けた財産も遺産に戻して相続分を計算し、生前贈与を受けた分を差し引いて遺産分割を行うこととなっています。

例えば「自分の死後に、一緒に暮らしている妻の生活基盤を安定させたい」「妻に多くの財産を残したい」と願い、自宅を生前贈与したとします。現行の制度で生前贈与は「特別受益」として相続財産に持ち戻しが必要となるため、他の財産と合わせて相続財産の総額を計算し、それぞれの相続人の相続分が決まります。つまり、生前贈与した自宅は遺産の先渡しをしただけとなり、妻が取得できる財産は生前贈与してもしなくても結果的に同じになってしまうのです。これでは、「自分の死後に妻の生活を安定させたい」という願いが反映されないこととなります。

そこで今回の民法改正では、婚姻期間が20年以上の夫婦間で遺贈(死亡時に贈与)または生前贈与された自宅は、遺産分割の対象から除外されることとなりました。民法上では、相続財産への「持ち戻し免除の意思表示」があったと推定することとしました。これによって相続後に、自宅の贈与について相続財産に持ち戻す必要がなくなりました。

 

例えば、自宅が3,000万円、現金が3,000万円の財産があり、婚姻期間が20年以上の妻と子供2人が相続する場合で考えてみましょう。法改正前で、自宅を妻が相続するとすれば、計6,000万円の遺産のうち、妻が自宅:3,000万円、子供はそれぞれ現金1,500万円ずつを相続することになります。

 一方、法改正後は、夫が妻に自宅を生前贈与・遺贈しておけば、遺産分割の対象から外せるようになります。今回の事例だと遺産分割するのは現金のみとなり、妻が1,500万円、子供がそれぞれ750万円を相続することとなります。妻にとっては、3,000万円の自宅を贈与された上に、現金1,500万円が相続できるため、法改正前より、現金を多く相続でき、安定した生活を送れる可能性が大きくなります。

もちろん、この法改正がベストマッチする家庭とそうではない家庭とあると思います。我が家の対策として必要かどうか十分に考慮する必要があります。

 

 この制度の施行日は2019年7月1日です。施行日前にされた遺贈・贈与について本制度は適用されませんのでご注意ください。

 

〇「不公平な遺言に対し、遺留分を金銭で支払わせることが可能に」

 

 遺留分とは、一定の範囲の法定相続人に認められる、最低限の遺産取得分のことです(兄弟姉妹にはありません)。例えば、父親が「長男にすべての財産を相続させる」という遺言を残したとしても、他の相続人は遺留分を主張して最低限の相続分を長男に請求することができます。これを遺留分減殺請求といいます。

 

遺留分減殺請求がされると、遺贈等された対象財産に遺留分割合に応じた権利が生じ(共有状態になる)、これによってさまざまな問題が発生していました。例えば、自社株式が共有状態になることによって、事業承継を円滑に行うことができないケースや、不動産が共有状態になることによって、本来は売却して現金化する予定だった不動産が、反対する相続人がいて売却できなかったケースなどです。

 

改正後は、遺留分減殺請求権ではなく「遺留分侵害額請求権」とすることとし、遺留分を金銭請求権に変更となります。「金銭債権化」することで不動産や有価証券などの相続財産が共有状態にならないようになります。

 

ただし、遺留分侵害額は金銭で弁済することが必要です。すぐに弁済が出来ない場合などは、一定の期限を与えることができるようにするとされています。

また、改正後は、遺留分の算定において価格を算入できる生前贈与財産の範囲を相続開始前10年間以内のものに制限されます。

 

この改正により、会社経営などの基盤となる財産の承継や相続財産の売却などがやりやすくなり、遺産相続がよりスムーズに行えるようになると期待されます。

 

この改正は、2019年7月1日以降開始する相続から適用になります。

 

もうすぐですね(^o^)

 

次回は、「配偶者居住権を新設」「18歳から大人に!!」をお送りします。

お楽しみに!!

 

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