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株主が経営責任を追及する! 『株主代表訴訟』の基礎知識
21.12.07 | ビジネス【企業法務】
役員が違法行為をしたり、経営判断のミスによって会社に損害を与えたりしたにもかかわらず、会社がその責任を追及しなかった場合、株主が会社に代わって『株主代表訴訟』を起こし、その役員の責任を追及することができます。
この制度は会社の利益を守るために、会社法によって定められているもので、役員に非があると認められれば、損害を賠償させることが可能です。
今回は、株主代表訴訟に関わる法律や、会社側の対応法などについて解説します。
ニュースでよく耳にする株主代表訴訟とは?
企業関連のニュースを見ていて、株主代表訴訟という言葉を耳にしたことのある人は多いのではないでしょうか。
株主代表訴訟とは、株主が会社の利益のために原告となり、取締役ら(取締役のほか、監査役・執行役・会計監査人・会計参与らも対象となります。以下『取締役等』といいます。)の責任を追及するために起こす訴訟です。
なぜ、このような制度が設けられているのでしょうか。
まずは根拠となっている法律の内容を確認しましょう。
【会社法423条1項より】
取締役等一定の地位にあるものは、その地位に基づき、自分の会社に対して一定の責任(法的責任)を負っています。
たとえば取締役等が適正な業務を行わなかった結果、会社に損害を与えた場合、当該取締役等は任務懈怠責任を負い、自分が所属する会社に対して損害を賠償する義務を負います。
このように、取締役等が経営責任をきちんと果たさなかった場合、損害を賠償する義務があると会社法によって定められているのです。
たとえば、ある取締役が任務を懈怠した結果、会社に1億円の損害が生じたのであれば、当該取締役に対し、会社は1億円の損害賠償請求訴訟を提起し、回収を図ることが考えられます。
このようなケースでは、会社自身が原告となって取締役を訴える、ということがあり得るところですが、相手は取締役という内輪の人間であるがために、仲間意識や上下関係などが影響し、会社が責任追及を躊躇してしまうこともあり得ます。
しかし、会社が取締役等の責任を追及しなければ、会社に生じた損害の回復は図れず、会社の価値が毀損し、ひいては株式の価値も毀損してしまいます。
それでは株主にとって不利益なので、株主が原告となる株主代表訴訟という制度が設けられたのです。
ちなみに、株主代表訴訟とは通称であり、会社法では、『株主による責任追及等の訴え』という表題になっています。
株主が原告ではありますが、あくまで『会社のため』にする訴訟であるため、『被告は、原告に対し、○〇円支払うこと』という請求ではなく、『被告は、〇〇株式会社に対し、○〇円支払うこと』という請求をすることになります。
いきなり訴訟を起こすのはむずかしい
では、具体的にどのように訴訟を起こすのでしょうか。
まず原則として、取締役等の責任を追及すべきなのは、株主ではなく会社です。
そのため、 株主はまず会社に対して『当該取締役等の責任を追及する訴えを提起せよ』と請求することになります。
これを、『提訴請求』といい、請求日から60日以内に会社が訴えを提起しなかった場合、株主が原告として、株主代表訴訟を提起することが可能になります。
ところで、株主代表訴訟においては原告が株主、被告が取締役等という構図で、原告にも被告にも会社が出てきません。
株主代表訴訟提起後、会社はどのような立ち位置になるのでしょうか。
株主代表訴訟のとき、会社は
1.原告側で参加する
2.被告側で参加する
3.当該訴訟に参加しない
のいずれかの対応を選ぶことになります(例外的に、不当に訴訟手続を遅延させるとして参加が許されない場合もあります)。
たとえば2の『被告側で参加する』を選んでいる会社は、立場として『取締役等に任務懈怠の責任がない』、または『株主が提起した株主代表訴訟は不当訴訟に当たる』などと認識していることになります。
こうしたケースでは、被告側からの補助参加を選ぶ場合がほとんどです。
株主代表訴訟の審理が進めば、最終的に判決が下り、請求が認容されたり、棄却されたりして、決着がつくことになります。
もちろん、和解するケースもあるでしょう。
一般的な訴訟では、原告が自分自身のために訴えを提起しますが、株主代表訴訟は、原告(株主)が会社のために訴えを提起するという点が、少し特殊な訴訟であるといえます。
会社の価値は株価に反映されるため、株主の利益にも直結します。
取締役は社内のみならず、株主の視点も意識して活動をしていく必要があるでしょう。
※本記事の記載内容は、2021年12月現在の法令・情報等に基づいています。
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