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「不相当に高額」な役員退職金とは?その2
14.12.05 | オリジナルメルマガ 税金編
以前配信させていただいたメルマガ税金編
「不相当に高額な役員退職金とは?」にて
支払っても法人の費用として認められない
退職金の額について、ご紹介いたしました。
今回はその続きのお話です。
退職金の原則的な算出方法である『功績倍率法』
今回は、その『功績倍率法』から展開して
★「退職時の役員報酬月額」が低or高過ぎる時
★「勤続年数」とはいつからいつのことか?
この2点についてをご紹介いたします。
まずは、前回の簡単なおさらいから。
適正な退職金の額は、次のいずれかの方法によって算出され
これを超える金額は、法人の費用とはなりません。
① 功績倍率法 (原則的にこちらを使用する)
【退職時の役員報酬月額×勤続年数×功績倍率=適正な退職金の額】
② 一年あたり平均額法 (①が使えない時に使用する方法)
【比較法人の1年あたり退職金額(※)の合計÷比較法人の数×その役員の勤続年数=適正な退職金の額】
※1年あたり退職金額=退職金額÷勤続年数
前回は①の中でも特に「功績倍率」に焦点を当ててお話をいたしました。
今回はさらに①に踏み込んで「退職時の役員報酬月額」と「勤続年数」についてです。
〇退職時の役員報酬月額について
①の『功績倍率法』の計算で「退職時の役員報酬月額」を用いる理由は
それが〝役員の功績を表している”と考えられるためです。
しかし、退職時の役員報酬が著しく低額となっている場合は
功績倍率法で計算すると適正な退職金の額が著しく少額となってしまい
役員の功績を正しく反映することができません。
このような時は、②の『一年あたり平均額法』により計算することとなります。
逆に、退職時の役員報酬が不相当に高額だと認められた場合には
その役員報酬が役員の功績を正しく表しているとはいえないため
適正な役員報酬の額を計算し、改めて功績倍率法により適正な退職金の額を再計算することになります。
合理的な理由のない役員報酬の増額などには、注意が必要です。
※②の『一年あたり平均額法』は、税務署が独自に用意した比較法人のデータにより
計算が行われるため、自社で適正額を計算することは困難だという課題はあります。
※②の【昭和61年9月1日裁決】です。ご参考に程度に。
「最終報酬月額が役員の在職期間を通じての会社に対する貢献を適正に反映したものでないなどの
特段の事情があり低額であるときは、最終報酬月額を基礎とする功績倍率法により
適正退職給与の額を算定する方法は妥当でなく
最終報酬月額を基礎としない1年当たり平均額法により算定する方法がより合理的である。」
※①の『功績倍率法』で〝合理的な理由が認められた判例”には次のものがあります。
【平成21年2月26日大分地裁】
死亡退職した役員の役員報酬を、死亡退職の3事業年度前に月額120万円に減額
2事業年度前に月額88万円に減額、直前事業年度中に従前の150万円に増額していたが
以下のような理由から150万円が最終報酬月額として適正と認められた。
・減額の理由は大口取引先との取引終了とそれに伴う従業員の削減の責任を明確にするためであり
増額の理由は従業員の削減が終了したこと及び不動産収入・事業収入の増加が見込まれていたことであった。
・従前より役員報酬の決定は来期の利益の推移も予測して行われており
実際に役員の死亡退職事業年度の申告所得は3事業年度前より増加している。
・役員報酬の増額の後に当該役員の病状が深刻であることが判明しており
職務復帰が不可能にもかかわらず増額した訳ではない。
・当該役員のみ報酬が増額されているが、業績悪化時においても他の役員等の報酬に大した変動はなかった。
〇勤続年数
入社時から退社時までずっと役員であれば勤続年数のカウントは簡単ですが以下のような場合には勤続年数はどのようになるでしょうか。
ちなみに、1年未満の端数は切り上げます。
①個人事業主が法人成りした事業の役員になった場合
個人事業主が法人成りした場合の勤続年数は、法人成りしたあとの勤続年数のみをカウントし
個人事業主であった時の勤続年数を通算することはできません。
(例)個人事業:10年 法人役員:15年 =勤続年数は15年
※以下のような判例があります。【平成5年6月29日高松地裁】
法人税法施行令72条(平成26年現在は法人税法施行令70条)は、
「当該役員のその内国法人の業務に従事した期間」と規定し、
判定法人の業務に従事した期間に照らして相当性を判断するとしている。
役員退職給与は報酬の後払いという要素と功績評価という要素が含まれるが、
判定法人がこれを評価して支出するのであり、
右金額のうち判定法人の損金に算入することが相当な金額を計算するために
在職期間をその基準とするものである以上、右規定を文言どおり適用するべきである。
②青色専従者が法人成りした事業の役員になった場合
青色専従者は法人設立の日から退職するまでの期間が勤続年数となります。
そのため、法人成りした後の勤続年数のみをカウントし
青色専従者であった時の勤続年数を通算することはできません。
(例)個人事業:10年 法人役員:20年 =勤続年数は20年
③従業員が役員になった場合
従業員であった時の勤続年数を通算できます。
ただし、その従業員が役員になった時点で退職金を支給していた場合は、通算できません。
(例)従業員:10年 役員:10年 =勤続年数は20年
役員退職金の適正額の算出は、勤続年数の他は不確実な要素を含んでいるため
役員の方が退職される際の報酬で迷われた時は、ぜひ一度テントゥーワンまで
お気軽にご相談ください。
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