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今求められる『インクルーシブ・マーケティング』とその効果
23.10.09 | ビジネス【マーケティング】
多様性を意味する『ダイバーシティ(Diversity)』という言葉が、日本でも定着しつつあります。
人種・性別・宗教・価値観などにかかわらず、さまざまな属性を認め合うことは、今や企業の社会活動に欠かせないものといえるでしょう。
多様性を尊重しながら、これまでのマス市場では放念されてきた少数意見や少数の需要などを汲み取り、企業のマーケティング活動に反映していくことを『インクルーシブ・マーケティング(Inclusive Marketing)』と呼びます。
新たなビジネス展開も期待できるインクルーシブ・マーケティングについて説明します。
多様性を受け入れるマーケティング手法
これまで企業がターゲットにしてきたのは、多くの消費者が集まるマス市場でした。
企業は、マス市場に向けて、不特定多数の消費者が手に取りやすい数々の画一的な商品を開発してきました。
いわゆる『大衆向け』や『万人向け』といわれるような商品は、多数派(マジョリティ)を対象にしているため、少数派(マイノリティ)の需要は切り捨てていることになります。
しかし、多様性が重要視されている現代では、少数派となるターゲット層は決して無視できるものではありません。
グローバル化が進むなかで、マイノリティを尊重できない企業は、社会的な信頼や評判を失うことになり、結果として競合他社に遅れを取ってしまうおそれもあります。
そこで注目したいのが、インクルーシブ・マーケティングです。
インクルーシブ・マーケティングは、多様性を認めながら、少数派にも目を向けるマーケティング活動のことです。
語源である『インクルージョン(Inclusion)』が日本語で『包含』や『包括』と訳される通り、インクルーシブ・マーケティングのなかにダイバーシティが含まれます。
そもそも日本は単一民族国家で、総人口に占める外国人の割合も低いことから、多様性への理解が高くありませんでした。
ジェンダーギャップ指数も先進国のなかでも最低ランクであり、現代でも昔ながらの年功序列を採用している企業は少なくありません。
このように多様性への認識が希薄な日本では、常にダイバーシティを意識しておかないと、無意識的にマイノリティを排除するマーケティング活動を行ってしまう危険があります。
一方で、世の中のグローバル化によって、多様性を尊重する社会が当たり前になりつつあります。
企業活動において、ダイバーシティへの理解を深め、個人の多様性を受け入れることが何よりも重要といえるでしょう。
インクルーシブ・マーケティングの成功例
世界には、インクルーシブ・マーケティングを行っている企業が多くあります。
インクルーシブ・マーケティングの代表例としてよく挙げられるのが、世界的なR&Bシンガーであるリアーナが2017年に立ち上げたコスメブランドのFenty Beautyです。
従来のコスメブランドで取り扱われているファンデーションなどのカラーバリエーションは、白人の肌に合わせたものが多く、有色人種を含む女性層の需要を満たすものではありませんでした。
リアーナが自分の肌に合うファンデーションを求めて立ち上げたFenty Beautyでは、多くの女性の肌に合わせ、約50色ものカラーバリエーションを揃えました。
リアーナ自身の知名度もあり、立ち上げから1カ月で7,200万ドル(約72億円)の売上を達成するなど、Fenty Beautyは大成功を収めています。
日本では、ANAグループが企業全体でインクルーシブ・マーケティングに取り組んでいます。
たとえばANAでは、座ったままスムーズに保安検査を受けられる樹脂製車いすの開発や、搭乗時に必要なサポート情報を登録しておけるシステムの採用、遠隔手話通訳サービスの導入など、誰もが快適に飛行機を利用できるような取り組みを行っています。
こうしたインクルーシブ・マーケティングの推進は、企業の社会的な評価だけではなく、新たなマーケットを開拓できるというメリットもあります。
従来のターゲットではなかったマイノリティの需要をすくい上げることになるため、これまでは考えられなかったアイテムの開発や商品展開なども行えるようになります。
また、新たなイノベーションの創出も期待できるでしょう。
さまざまなメリットのあるインクルーシブ・マーケティングですが、企業が導入するには、的確なニーズの把握が欠かせません。
多種多様性が重要視され、承認される現代社会だからこそ「マイノリティの需要がどこにあるのか」「市場では何が求められているのか」を理解し、自社ができる取り組みを行っていきましょう。
※本記事の記載内容は、2023年10月現在の法令・情報等に基づいています。
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