相続事例003 遺言によって寄付された美術品

15.04.06 | ビジネス【相続】

本日は「遺言」の事例についてご紹介したいと思います。


田村さん(仮名)は弟と2人兄弟です。幼いころに父親が亡くなり、母親が女手一つで田村さんと弟を育て、とてもご苦労をされてこられました。

母親は、誰にでも懐深く親身に接し、みんなに頼りにされる方でした。

そんな母親が、ガンで急に亡くなってしまいました。本当に惜しい人をなくしたものでした。実は母親は、万一に備え、遺言を残していました。遺言には、子供たちだけでなく、関わった多くの方々への感謝の気持ちも書かれていて、気持ちが伝わってくる内容でした。


遺言の中で、「家にある絵画は、先代(田村さんの父親方の祖父)が残してくれたものと、自分が購入し大切にしてきたものである。自分が死んだら、地域の〇〇市立美術館に寄付し、△△室に飾ってほしい」、と書かれていました。


田村さんと弟さんは、母親の気持ちを大切に、寄付の手続きをすることにし、母親が購入した絵画は、目録作成・寄付の手続きとスムーズに進み、速やかに完了できました。


しかし、先代が残してくれた絵画が問題でした。先代も遺言を残しており、絵画は長男(田村さんの父親)と二男(田村さんの叔父)に相続させるとありました。実は叔父さんは、音信不通で、誰も居場所を知らなかったために、母親の葬儀にも呼べない状況でした。


叔父さんの同意がないと寄付ができません。叔父さんの最終住所地を突き止めましたが、そこは空き家で、近所の方に聞くと15年くらいはずっと空き家だとのことでした。

それから3か月後、その時の近所の方から連絡があり、「〇〇町で飲食店をしていることがわかった」、とのことでした。深く感謝し、早速連絡し、お会いすることができました。


お話をお聞きすると、昔事業に失敗し、誰にも連絡できない時期があり、それからそのまま誰とも交流がなくなってしまった、とのことでした。

訪ねてきた理由をお話し、田村さんの母親の遺言を見た時には、とても感動され、快く寄付に同意してくれました。ほどなく寄付の手続きも終えることができました。
その後、田村家親族と叔父さんとの交流も再開したようです。


今回寄付した絵画は全部で、40作品ほど。そのうちの10作品は、市場流通価格があり、売買すればまとまった金額になるとのことでした。

本来なら揉めてもおかしくない状況でしたが、田村さんの母親の生前の人柄もさることながら、すべての人を感動させた遺言によって、故人の遺志通りに、絵画の寄付が無事できたのだと思います。故人の深い感謝の気持ちが、みんなの気持ちを一つにしたのだと感じています。


今回は、遺言があることによって解決した事例でした。

次回は、困った・揉めた事例をお送りいたします。

 
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